【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

42 合流!

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「地上のはほとんどが虫系統で硬い甲羅に守られています…!酸の攻撃には注意してください!!」

 ……あー…、俺、こういうゲームしたわ。
 やたら虫ばっかり敵としてでてきて、わらわらしてるやつ。
 最初の攻撃はでかいミミズの酸だった。
 べっちゃりと障壁にかかり、何重にも張った障壁を何枚も破壊した。
 その攻撃から数分しないうちに、虫タイプの魔物が接敵を開始した。
 暁亭の冒険者の人たちと、他の宿の冒険者の人たちも合流して、剣やらハンマーやら斧やら魔法やらで、とにかく魔物に挑んでいく。

 三人で張った障壁はまだ残っていて、王都の中へは侵入させてない。なんとか食い止めてる。
 阿鼻叫喚。
 冒険者の人たちの中にも魔法師が何人かいて、ギルマスやエルフィードさんがいる場所以外からも、時々蟻の頭が宙を舞ってる。

「ジャイアント……ってもうめんどくさい!!でっかいカマキリマンティスの鎌にも酸が付着してます!!」

 魔力感知は便利なんだか何なんだか。
 蟻と蟷螂カマキリの背後から、ぴょんぴょん跳ねながら、超でかい蜘蛛スパイダーが接近してきてる。

「ひ……ギルマス、ギルマス……!!」
「なんだ!?」
「蜘蛛……蜘蛛がぁっ!!俺、蜘蛛だけは嫌なんですよ……!!」
「ああ!?」

 うっわ。
 鳥肌やばい。

「ぃ……もぅやだ……っ!!そいつの糸、酸まみれだから……!!魔法師の方々焼き払って……!!」
「お前も魔法師だろ!お前が焼け!」
「あ、そうだった」

 左手で新しい障壁を作りながら、蜘蛛に意識を集中させて火球を飛ばす。でも乱戦になってるから、味方の冒険者の人たちに誤射しないかドキドキした。
 エアハルトさんに一方的に魔法を打ち込んだとき、軌道を変えることが少しできた。あのときよりも正確に軌道を変えて、糸を焼き切る。
 誘導弾のように。指先で軌道修正をかけていく。
 コツが掴めれば、指先の動きも必要ない。念じるだけ。
 魔力で相手の動きを捉えて、正確に。
 集中すればするほど、相手の動きが遅く感じる。魔物ばかりじゃない。冒険者の人たちも。
 善戦してると思うけど、数が多いから、疲弊してきてる。
 装備も、気をつけていてもどうしても酸で腐食が進んでしまう。
 クリスの魔力はすごい速さで近づいてきてて、その魔力を感じるだけで落ち着いてくる。

「アキラさま、魔力が…」
「まだ大丈夫!」

 一番つらいのは俺じゃないんだから。
 門を守りながら、時折、冒険者の人に迫る魔物の牙の前に障壁を作って防御を固める。
 今までで一番神経が研ぎ澄まされていたと思う。
 だから、地中を泳ぐように移動してくる魔物にも、いち早く気づけたんだと思う。

「ギルマス……足元から魔物……!!」
「ああ!?」

 でも、声をかけるのが遅かったのか、声に驚いたのか(地中で聞こえているのかは謎)、ギルマスの足元の地面がぼこりと動いた。

「……ちっ」

 ギルマスは対峙していた魔物から素早く距離を取り、周囲にいた冒険者の人たちも慌ててその場から離れる。
 盛り上がった地面からでてきたのは、どんだけ育ったんだよ!って突っ込んだサンドワームミミズ(まだ生きてる)より大きいかもしれない奴。沢山の足がガチャガチャ嫌な音を立てながら、地面に大穴を開けて出てきたのは、節まで綺麗に見える所謂百足さんだった。口と思わしきところから、紫色の涎がだらだら流れ落ちて、地面から煙のようなものがあがる。

 あ、これ、やばい。

「ギルマス……やばい……こいつ、やばい……!!」

 冷静でいないと魔法は正しく発動しない。
 だけど、見た目も何もかもヤバそうなのを比較的間近で見た俺は、次の行動に出るのが遅くなった。
 多数ある目と視線があった……気がしたときには、ヤバい涎を撒き散らしながら、鎌のように鋭い尻尾が俺に向かってきていた。

「まず……っ」
「アキラ!」
「アキラさま!!」

 障壁は慌てて張ったせいで強度はなく、あっさりと光に変わり、後ろに下がりながら張ったはずの障壁は間に合わず、混乱した頭では最善の方法は何も浮かばず、ただ目をぎゅっと閉じることくらいしかできなかった。
 でも、来るはずの衝撃と痛みはなくて、お腹に回ってくる力強い腕と、耳元で響く金属音と、「怪我は?」って言う俺の大好きな声がして、目を開いて見上げてた。

「クリス」
「遅くなった」

 ヴェルに乗ったままのクリスは軽く百足の尻尾をいなし、すぐにヴェルを後退させた。
 それと入れ違うように濃紺色の制服の隊員さんたちが、虫魔物の中に突っ込んでいく。
 その後を追うように、濃緑色の見慣れない制服の兵士さん(騎士、って分類かもしれない)たちが向かっていく。

「アキ、なんで俺のところに跳ばないんだ」
「あ」

 忘れてた。
 何かあったら、どんなときでも跳べって言われてたのに。

「で、も、俺が離れたらラルフィン君が」
「アキ」

 こつんと額が当たって。
 心配した、って目で訴えてきて。

「……ごめん。慌てて。危ないときは跳べって言われてたのに……出来なかった」
「ん」

 目を細めて頷いたクリスは、ヴェルに横座りになってる俺に覆いかぶさるようにキスをくれた。
 流れてくる甘いもの。
 とろりとしたそれは、飲み込むと魔力として俺の中に溶け込んでいく。

「もう少しだ。やれるか?」
「うん、もちろん」
「……アキ」
「クリス?」
「……いや。後でいい」

 言いよどむクリスは珍しいけど、嫌なことじゃない。笑顔だし。

「じゃあ、後で聞く。――――地上は虫系統の魔物で溢れてる。でもみんなが頑張ってくれてるから、大体半分は倒せたと思う」
「追加は?」
「――――空から、来る」

 虫魔物たちが来た方向……西側の空に、四つの影が見えた。



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