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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
78 クリス色に包まれてる
しおりを挟む「……そういえば、クリスってどんな服……?」
俺、見てないし、聞いてない。
「もうすぐ見れますよ」
うん。
教えてはくれないみたいだ。
まあ、確かにもうすぐみれる……もう、すぐ。
「もうすぐ………」
もうそんな時間なの?
「礼拝堂に陛下方がお集まりなってきた頃でしょうか」
「うわぁぁ……」
お兄さんとティーナさんの、結婚式の時を思い出して、陛下が礼拝堂に来るって、本当にもう間もなく始まるってことだよな…と、再認識した。
「はい、アキラさん、目を閉じてくださいな。少しお化粧をいたしましょう」
「あ、はい……」
メリダさんの手付きは慣れたものだ。
マッサージのように顔全体を揉まれながら、何かクリームが塗られる。それから、目元や頬に何かあてられて、最後に唇に。
「さ、終わりましたよ」
「はい」
「アキラ様、そのままで。ヴェールをつけてしまいますね」
「あ、はい」
ソリアさんが手にしたのは、銀糸が編み込まれたヴェール。これは衣装合わせで見たときとあまり変わらない。
ふわりと頭に被せられ、髪飾りの所で留めた。
二人から溜息が聞こえる。
……似合わない、よね?
まあそうだよね。似合わないよ。こんな、キラキラした服とか。
ちょっと気分が落ちていたら、メリダさんが気づいたのか、にこりと笑った。
「アキラさん、とてもよく似合っていらっしゃいますよ?」
「……そんなことないと思うんだけど」
「自信をお持ちになってください。私は嘘は言いません」
メリダさんが自信満々に言ってくれたから……、ちょっと後ろ向きな気持ちは鳴りを潜めた。
「靴はこちらを」
「はい」
衣装に合わせた白銀の革靴。
足を入れて……違和感なし。
「お綺麗ですよ…アキラさん」
少し震えたメリダさんの声。
「ヴェールは一旦上げておきますね」
「はい」
そっとヴェールがあげられた。目の前ではソリアさんが、大きな鏡を準備していた。
「どうぞ、アキラさん」
手を伸ばしてくれたメリダさんの目尻が、ほんの少し涙で滲んでた。
「ありがとうございます」
自然と気持ちが引き締まる。
メリダさんの手に自分の手を添えて立ち上がると、すかさずソリアさんが裾やなんやらを直していく。
そして鏡の前に移動して、まじまじと自分を見て………言葉をなくした。
全身クリス色に包まれた綺麗な人がいた。
……や、俺なんだけど。あまりにも、現実離れしていて。
一体目元に何を塗ったの…って言いたくなるくらい、目尻にかけてきらっと光るように見えるし、唇なんて艶々のプルプルに見えるんだけど。……自分のことだった。この表現は恥ずかしすぎる。
つけ毛で長くしたらしい髪は、それほど長くなってるわけでもなかった。本当に若干。
女のコぽいんだろうな……と思っていたけど、上着は案外スッキリしているし、細身のズボンだから女のコらしい柔らかさとか丸みはどこにもない。
「どうですか?」
「………凄いです」
それしかでてこないよ。
ここにいるのは本当に俺なんだろうか。
クリス色を全身に纏って、幸せそうに口角が上がっていて。
右耳には、いつもの耳飾。俺とクリスの繋がりの一つ。
「ヴェールをおろしますね」
「はい」
銀糸が編み込まれたヴェールがおろされると、視界に僅かな霞がかかったようになった。でも、歩けないほどじゃない。
「少し歩いてみましょうか」
「はい」
右手にメリダさん。
左手にソリアさん。
ふたりの女性の手を借りて、歩き始める。
上着の後ろのところがドレスの裾のように長いから、ヴェールと共に、歩くたびにさらさらと揺れていた。
「足元を見ないように。視線は前に向けてください」
「はい」
「裾を踏む心配はありませんからね」
「はい」
「靴はどこか当たるところなどございませんか」
「ないです。歩きやすいです」
室内を軽く二周して、二人の手を離してからもう一周歩いた。
バランスを崩すこともないし、前に向かって歩くぶんには、裾を踏む心配もない。
大股にならないように。
急ぎすぎないように。
確実に一歩一歩。
背筋を伸ばして、胸を張って。
堂々と、クリスの下へ。
歩くことも問題なさそうでほっとしたとき、ドアがノックされた。
メリダさんが応え、ドアを開けると、
「アキラ様、お時間です」
白いローブを着た神官の人が、そう声をかけてくれた。
「はい」
神官の人は案内の人。
ああ……はじまるんだ……って、手を軽く握りしめた。
「アキラさん」
「アキラ様」
二人に呼ばれてそちらを見れば、微笑んだ二人が綺麗に腰を折り、礼の形を取った。
「「おめでとうございます」」
再び顔を上げたとき、ソリアさんは微笑んでいたけれど、メリダさんは薄っすらと目元に涙をためていた。
「ありがとう、メリダさん、ソリアさん」
こんなに綺麗な衣装を作ってくれて。
自分でも見惚れるくらい整えてくれて。
何より、メリダさん。俺をいつも気遣って優しくて、本当のおばあちゃんみたいで。
感謝しても、しきれない。
「メリダさん、ほんとに……いつもありがとうございました。それから、これからもよろしくお願いします」
俺とクリスには、まだまだメリダさんの助けが必要だから。
「ええ。もちろんでございますよ。アキラさん」
目元の涙をハンカチで拭って笑顔になったメリダさん。
「それじゃ行ってきます」
「「はい。いってらっしゃいませ」」
そして俺は、控室を出た。
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