魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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蜜月は続くよどこまでも!?

10 幸せで涙が出る

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 少し丸まった紙はかなりの厚紙だった。
 リアさんにすごく大変なことをお願いしたかもしれないと思っていたけど、紙の上にほんとに幸せそうに笑ってる俺とクリスがいて、涙が溢れてきてしまった。

「アキ」
「ごめ……っ」

 折角の絵の上に涙が落ちそうになって、クリスに肩を抱かれた。

「メリダ」
「何かあればお声掛けください」

 クリスの一言でメリダさんが部屋を出た。
 マシロが俺の肩に乗ってきて、頬を舐める。

 リアさんに絵をお願いしてた。
 俺とクリスの結婚式の絵。
 どうしても、送りたくて。

「想像以上……。ありがとう……リアさん…っ」
「喜んでもらえて何よりです。……御両親にも喜んでいただければいいんですけど」
「きっと喜んでくれると思う」

 絵の中の俺たちは、ちゃんと婚礼衣装を着てた。あれを絵で再現するリアさんがすごい。

「クリス」
「これだろ?」

 クリスポーチから取り出してくれたのは、書いておいた手紙。封筒にはクリスの印を押したもの。当然、中身は日本語で、両親にあてた手紙。

 ――――紙くらいなら送れる。

 って言ってくれた女神様。
 だから、絵を送りたい…って思ってた。こちらに写真はないから。俺とクリスの、結婚式の絵を。
 広げていた絵を改めて丸めて、丁寧にリボンをかけた。
 ……リボンくらいは大目に見てもらえるかな。

 テーブルの上に、封筒と丸めた紙を重ねて置いた。
 ……どこからでもいい、って、言われたから。
 クリスが右手を胸に当てた。リアさんも胸の前で手を組んでくれる。
 俺はソファから降りて、テーブルの前で膝立ちになって胸の前で手を組んだ。
 目を閉じる直前、真っ白でふさふさな尻尾が二本見えた気がしたけど、まあ…いいか。

 女神様。
 お願いします。
 俺の両親に届けてください。
 俺のありったけの思いと一緒に。
 父さんと母さんが喜んでくれるように。
 俺がいた証が残るように。
 お願いします、女神様。

 心の中で願いを終えたとき、ふわりと温かいものに包まれた。
 ばぁちゃんのような優しい手に頭を撫でられたとき、耳元に『任せろ』って声が届いた気がして目を開くと、テーブルの上に置いてあった手紙と丸めた紙が消えていた。

「――――」

 驚いて、声が出ない。
 いや、女神様を信じていないわけじゃないんだけど。
 俺の直後にクリスもリアさんも目を開いたけれど、俺と同じようにテーブルの上を見て驚いている。

「………女神様がいた」

 クリスは懐から鎖をつけた聖印を取り出して、祈るように願うようにそれを額に当てた。

「手紙に祝福しろと言われたよ。……アキの両親が悲しまないよう祈ったから」
「…ん。ありがと、クリス。リアさんも。……リアさんだって、手紙とか……送りたい、よね」
「前にも言った気がするけれど、私のことは気にしなくていいの。ブラックな職場で死ぬまで仕事してたのは私自身の問題だし、死人から手紙が届いても不気味なだけでしょう?」
「………悪戯って思われそう」
「ね。それに、今はセシリア・エーデルよ。私はこの生を気に入っているし、私の親は亡くなった母様と、少しお人好しだけど愛情豊かな父様だから」

 にこっと笑ったリアさんの言葉に、俺は「そうだよな」ってすごく納得した。
 納得したら、なぜかまた涙が出てきて、どうにも自分の感情のコントロールができてないらしい。
 床に膝をついて座ってた俺をクリスが引き上げて、膝の上に座らされた。

「ほら泣き止め」
「う゛ー………」

 なんかもうぐるぐるして。
 絵があまりにも綺麗で、父さんと母さんに喜んでもらえると思ったら嬉しくて、女神様が凄く力強く任せろって言ってくれたし、リアさんの覚悟とか。
 やっぱりクリスに出会えてよかった。結婚式、幸せなことが一杯だった。
 幸せで、幸せで、幸せで。

「クリス」
「うん」
「俺、幸せすぎる」
「アキが幸せなら俺もだな」
「うん」

 向き合って抱きついて、クリスの肩口に額を押し付けてた。
 抱きしめてくれる腕が気持ちよくて、しばらくそうしてた。
 ………しばらく。

「……大体にして、目の前にこんなすばらしい生Bえ………もとい、推し、いえ、ご夫婦、そう、仲睦まじいご夫婦がいて眼ぷ………微笑ましいというのに、あんな殺伐とした生活に戻りたいとか、そんなこと考えられませんから」
「……………………リア、さん」
「ああ、私のことはお構いなく。思う存分旦那様に甘えていてください?ええ。そりゃあもう。私は壁か空気かと思ってくだされば」
「壁も空気も喋らないな?」
「あら。殿下はともかく、アキラさんがこのまま私がいることを忘れてことに及んだら、多分恥ずかしさで爆発してしまうんじゃないかと思ってのことですけど」
「…………も、十分恥ずかしいデス………」

 顔が上げられないくらいに。
 余計クリスにしがみついてあうあうしてたら、紅茶のカップを置いたらしいリアさんが、「それはそうと」って、話し始めた。

「……私の見間違いでなければ、マシロちゃんに尻尾が二本あるように思うのですが。これは何ですか。私へのご褒美ですか?もふを二倍で楽しめということですか?」

 はっとしてテーブルの上を見たら、ちょこんと座ったマシロが、二本の尻尾を揺らしてた。












*****

よくある予測変換
アキとクリス→アキ得リス
クリス→グリス、クリスマス

フリック入力ミス→『い』が『お』に。
 いる→おる になるので、文面が面白いことに。

私の見間違い
クリスとメリダさん→メリークリスマスに見えて困る(笑)

そんな本編となんの関係もない話し(笑)
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