魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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俺が魔法師である意味

61 腕試し……いや、いらないから

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「……後ろで守られてるだけで役立たずの魔法師って誰のことだ?」
「え」

 すぐ近くでクリスの声がして驚いた。
 横を向くと、呆れたような表情のクリスがそこにいる。

「俺」
「……お前は俺がどんなに言っても、後ろにいてくれない気がするんだがな」
「そう?」
「そう」
「でも、さ、俺、まだまだどの魔法を使うのが効果的か、とか、そういう判断甘いし……」
「お前がそんなことを言ったら、レヴィの顔が引きつるな」

 …クリスに苦笑された。
 だって、本当にさ。まだまだ覚えなきゃならないことが多いんだよ。戦うだけじゃない魔法の使い方とか、いろんなことを考えなきゃならないんだよ。
 戦いなんて知識でしか知らなかった俺がなんとか魔物と対峙できるのは、クリスが守ってくれるって安心感があるからだし。みんなが頑張ってるから俺も頑張らなきゃって思うからだし。

「うーん…?」
「とにかくだ。俺たちが魔物と心置きなく戦えるのは、後ろからお前の魔法が確実に援護に入ることがわかっているからっていうこともあるんだ。自分のことを役立たずなんて思うのはやめろ」
「ん……そか。…そっか。ありがと。なんか嬉しい」

 へへ……って笑う。半分照れ隠しみたいな感じだったけど。
 クリスの腕の中にマシロがいない。後ろを見たらザイルさんが抱っこしてた。お世話ありがとうございます。……んで、クリス隊のみんなが、凄く変な顔で俺を見てる。……なんでだ。

「えーと」

 何の話をしてたんだっけ?
 マイナーさんがふざけたこと言うから、ちょっとキレたんだよな。

「んー、つまりさ」

 俺が言ったことを、この人がどれくらい理解してるのかは知らないし、知る気もない。あとは自分で考えてほしい。どう見たって俺より歳上なんだから。

「守られて当然って考え方する魔法師なんて、俺は認めない。トビア君はクリス隊のみんなから、体の使い方とか、近接戦の仕方とかも習ってる途中。一生懸命だから教えがいもあるし、本人の力も伸びてる。本人の資質とかそういうのもあるんだろうけど。…だからさ、マイナーさんはマイナーさんのやり方で『強く』なればいいと思うよ。きっと、子供にも大人にも喜ばれる大道芸になるから」
「僕は…っ」

 ぎりぎりと拳を握りしめる。
 それから、挑むような目で俺を見た。

「大道芸などに、興味ありません!魔法師として生まれたからには、この魔法で国に貢献したいのです。伯爵家に生まれたものとしても、それは責務かと……!」
「うーん…」
「妃殿下の下で学び、訓練したためにあの平民の子供が僕よりも腕が上がったと言うならば、僕は魔法師団に入り、妃殿下の下で鍛え直します。そうなれば貴族である僕のほうが全てにおいて優位になることは、明らかなこと…!そうだ。そうです!魔水晶を持つ僕が魔法師団に所属することは当然のことで――――」
「ん、いらないけど?」
「……は?」

 クリスの腕が腰に回ってきた。力が入って、俺の体が少しクリスの方に傾く。

「いらない…?いらないとは、どういう……」
「そのまんま。入団しなくていいよ。むしろ、入団を認めない」
「え、いや、ですが、これは規則で――――」
「そんな規則無くなったんだよ。今は俺が魔法師団を任されているんだから、俺がいらないって言ったらいらない。入団させない。入団しないほうがいいんじゃない?家で好きな薔薇を見ながら、好きなように訓練できるんだから」
「妃殿下、それはあまりにも横暴ではありませんか!?陛下がお認めになるはずありません!」

 そんなに魔法師団に入りたいのか?
 でも、認めないけど。

「平民だから貴族だからって差別する人はいらない。仲間として一緒に切磋琢磨する気がないなら、邪魔なだけだし」
「ですが…っ」
「マイナルディ」
「……は、殿下……」
「各貴族に対して魔法師団に関する詳細は書面にて通達済みのはずだ。確認していないのか」
「……は、……いえ、確認、しましたが……」
「その書面には魔法師は軍属にならないと書かれていたはずだが?」
「……」
「魔法師団を再編するにあたり、人事権は全てアキに委ねられているとも書かれていたはずだが?」

 そうなんだ?
 ごめん、俺、それ知らなかった。知らなかったけど、ややこしくなりそうだから何も言わない。うん。

「……」

 マイナーさん黙り込んだ。
 これ、どう見ても、書類なんて読んでませんってやつ。

「入団の可否はアキに一任されている。陛下も王太子もお認めになられていることだ。宰相、各大臣の承認もある。これが覆ることはない」
「……そんな」

 青褪めた顔でまたその場に座り込んだマイナーさん。
 うん、これでほんとに終わったぽい。長かった。

「ブランドン、ユージーン。マイナルディ伯爵家まで連れて行け」
「は」

 呼ばれた二人が、マイナーさんの両側から体を支えて立たせた。
 訓練場から城内を通らずに城下の方に出るらしい。

「……終わり?」
「終わり。疲れただろ」

 リップ音を立てながら、頬にキスをされた。

「……喋りすぎて顎がだるい」
「怒りで容赦ないアキも可愛らしかった」

 可愛い…?
 どこにそんな要素が……。
 はぁ…って溜息をついたら、息が妙に熱い。
 少しくらりと目眩もしてクリスの胸元を握りしめたら、すぐに片腕に抱き上げられた。

「クリス」
「疲れたんだな」
「ん」

 疲れた。
 心身ともにどっと疲れた。
 クリスの首にしがみついて、肩口に額をこすりつける。
 疲れたから、甘えさせて。











*****
マイナーさん騒動一段落(^_^;)
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