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君に出逢えた奇跡
14 雨の日
しおりを挟む昼過ぎから空には暗雲が広がり始めた。
「あちゃあ…。こりゃ降るかな」
東側のやや大きな露店の並ぶ区画を、ナシムと二人歩いていた。
今日は比較的街が落ち着いているように思う。
「雨でもやることに変わりないだろ」
「まぁ、アルフレッドならそう言うよな…。でも大概の奴らは憂鬱になるんだよ」
「何故?」
「濡れるし寒いし」
よくわからないな。
雨が降る日でも、街の警備体制がゆるくなるわけではない。見回りは同じように行われるものだし、むしろ、視界が悪くなる分、犯罪を犯す者の動きを捉えにくくなるから、晴れや曇のときよりも集中しなければならない。
それが負担になるということだろうか。
「防水の外套があるだろ」
「それでも全く濡れないことはないだろ?」
「それはそうだが」
あまり気にするようなことでもない。
「雨降ったら早めに店仕舞いする所もあるからな」
「………」
それは……困る。
思わず空を仰ぎ見ていた。
シエルは恐らく、なんの躊躇いもなく店を閉じるだろう。
「………夕方まで降らないでほしいものだな」
「お?なんだ。アルフレッドもようやく俺たちの気持ちをわかったのか」
「?……まあ、困るからな」
「だよなぁ。じゃあ、まぁ、心ん中で女神様にお願いしながら見回ろうかね」
こんなことで祈られても、女神様も迷惑だろうに。
「………」
灰色から黒っぽく色を濃くする厚い雲。
嘆息した。
ナシムの軽さに合わせるわけではないが、やはり俺も願ってしまう。せめて、今日の任務が終わるまでは降らないで欲しい、と。
今日も、シエルに会いたいから。
お願いだから、シエル。
俺を、待っていて。
女神様が願いを聞き入れてくれたからなのか、もともとそういう天気だったからなのか、任務終了まではなんとか雨が降り出すことはなかった。
だが、詰所を出た途端、ポツポツと降り始めた雨は、すぐに本降りへと変わっていく。
外套を取りに行く時間すら惜しく、水溜りを避けながら『シエル』に急いだ。
いつも置かれている店先の鉢植えも看板も、既にない。
引かれたカーテンの隙間から、店内の明かりが僅かに漏れ出ているだけだった。
後少し、雨が降り始めるのが遅ければ、もしかしたらこの扉は閉ざされてはいなかったのかもしれない。
……そんな後悔に似た念を抱きながら、諦め半分でノッカーを叩き、扉に手をかけた。
鍵がかけられ、開かない扉を想定していたというのに、扉はあっさりと開いた。
中から、穏やかな温かい空気が流れ出てくる。
その直後、奥から出てくるシエルを見つけ、口元に思わず笑みが浮かぶ。
「…シエル」
会いたかったその少年は、しばし驚きの表情で俺を見つめ、すぐに表情をこわばらせた。
「なにやってんだよ…っ」
シエルはそう言い捨て、また店の奥に戻っていく。
駄目かと落胆仕掛けたとき、タオルを手に持ったシエルが、俺のもとに駆け寄ってきた。
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