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愛しい人を手に入れたい二人の話

一つの仮定にたどり着く十八歳の秋

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◆side:レイナルド

「レイ……レイ……、イく、イくぅ…んっ」
「…っ、セレス、イけ……っ」
「きゃあぁぁんんっ!!」

 ぐちゅりと音をさせながら、セレスを下から突き上げた。
 俺の体の上に乗ったセレスは、可愛いペニスからプシュっと潮を噴き出し後ろに倒れこみそうになった。
 起き上がり腕をとって体を引き寄せ、抱き込んだまま後ろにゆっくりと倒すと、アナルの中で俺のペニスがあたる場所が変わるのか、短い嬌声を上げながら体を震わせていた。

「あ、あっ、れい、れい、だめ、も、や、ぁ」
「まだだ」
「やぁぁんっ」

 収縮する内腔を感じながら、ぬめりを増したその場所に、滾ったままの己のペニスを打ち付けた。




 潮も尿も噴き出して意識を失くすように眠りについたセレスの頬をなでながら、濡れた体を見下ろした。

「……何故だ」

 初めて抱いたときに僅かに色づいた花籠は、またもとの色のない状態に戻っていた。
 どれだけ優しく抱いても、どれだけ激しく抱いても、どれだけ愛していると言葉にしても。
 花籠が色を取り戻すことはなかった。
 セレスの瞳には、明らかに俺を好きだという想いが滲んでいる。
 俺の熱に浮かされながら、好き、と何度も繰り返す。

 何故だ。
 愛液は溢れるほど流れてくる。
 けれど揺籠の口は開かない。どれほど快楽を与えても、だ。
 色付き咲くはずの花籠は、真っ白のまま。

「最近のセレス、あまり楽しそうな顔しないんだよね。…僕たちに言わないけど、何か思ってることがあると思うんだ」

 気を失って眠るセレスの頬をなでながら、アベルがそんなことを言った。

「時々泣きそうな顔するし」
「……花籠がセレスの感情と繋がっているということか」
「もちろん、レイのことを好きだと思うのはそうなのかもしれないけど、僕たちの焦りとかを感じてるのかもしれないし、色々準備であまり傍にいられないこととかがセレスの中で不安につながってるのかもしれないし」

 セレスの目元の涙の跡を辿った。
 セレスはもう自分に現れかかっている花籠には気づいているだろう。そしてこの花籠が不完全なことも。
 俺が、孕めと言葉にすることが負担になっているのだろうか。自分には俺の子を宿すことはできないと悲観しているのだろうか。

「……もうすぐ冬の季節になる。そしたら、僕たちは今よりもっとセレスを傷つける。……僕とレイは、僕たちがこの先ずっといっしょにいるためだとわかっているけど、何も知らないセレスはきっと酷く傷つく。自分に愛を囁いてる男は、他の男……僕と婚約するわけだし。なんなら、僕からも裏切られたって思うかもしれない」
「だが後戻りはできない」
「わかってるよ。戻るつもりもない。……だから、傍にいられる間はとにかく滅茶苦茶甘やかさないと。……万が一にでも自死するようなことにならないように」

 あーあ、と盛大なため息を付きながら
アベルがセレスの隣に寝転んだ。

「僕もちゃんと愛してるよ、って、セレスに言いたい!レイはほんと楽でいいよね!挿れるだけなんだからさっ。僕なんか尻の調教第二段階だよ?花籠持ちは前立腺だけで簡単に絶頂するから、って言われてさっ」
「……ああ、確かにセレスは中が感じやすいな」
「不審に思われないようにそこを調教しなきゃならない、って。レイに抱かれるための僕の悲しい努力、誰にも認められない虚しい努力だけどさ」

 文句を垂れ流しながら、アベルの手がセレスの下腹部をなでた。

「……僕も挿れたいね。はやくセレスの中を堪能したい。……もし、レイに抱かれてる僕を見たら、セレス、なんて思うだろうな……」
「傷つく、か?」
「レイが僕を抱いていることに傷つくか、抱かれている僕に傷つくか……どちらだろうね。僕としては後者がいいなぁ。セレスが僕のことも好きだってわかるし」
「……アベルのことも好きだと自覚したら、花籠は色づくんだろうか」
「それと、僕たちから愛されてるっていう自覚じゃないのかな。不安とか、そんなのなしでさ。僕たちの気持ちが絶対に自分から離れないんだっていう安心感、とか」

 何故かそれが正しい気がする。
 どの文献にも当てはまらない事柄だけど。

「……あくまでも仮定の話だけどね。でも、僕たちはセレスが花籠持ちだから愛してるわけじゃないし」
「そうだな」
「仮定が間違っていて、セレスが子供を孕めなかったとしても、……僕たちがセレスを手放すこともないし」
「……ああ」
「……ああ、そっか。もしそうなったら、レイは別の花籠持ちを側妃に迎えないとならないねぇ?いやぁ、だったら子作り期間は僕がセレスの相手するからね?楽しみだなぁ。もうなんなら離縁してどっか田舎にセレスと一緒に引きこもってもいいかも!いやぁ、大変だねぇ。王族も。ぷぷ」
「…………アベル、やっぱりお前、いい性格してんな……?」
「いやぁ、それほどでも?」

 アベルに無性に腹が立つ。
 腹が立つが、言っていることは間違いじゃない。
 糞ったれとは思うが王族の血は残さなければ駄目だ。せめて俺に弟がいれば、まだ選択肢は残されていたのに。母上の心は戻らない。枯れ落ちた花籠も元には戻らない。

「セレス……セレスは絶対に守るから」

 薄く開いた唇に、口付けを落とした。



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