44 / 247
幼馴染み二人と豊穣の国の王都に着きました
17 幸せなんです
しおりを挟む振り向いたエルが、いきなり僕の右耳に触れて、なんか、「バチン」って音がした。
「っ」
激痛…ってほどじゃなかったけど、じわじわ痛い。
「こっちもね」
って、今度は左耳に、また、「バチン」って。
「なに、なんなの、エル」
「ちょっとまって。ほら、ディーは左耳でしょ」
「……」
ディーもおとなしくエルに左耳を向けた。
「バチン」って音がしたとき、すごく表情を歪めてたけど…やっぱり痛いよね?
でも、エルがディーの耳に当ててた道具を離した時、ディーの耳にピンク色の宝石がキラキラしてた。
また「バチン」って音がして、エルの方を見たら、エルは鏡を見ながら自分の右耳にそれをあててた。
「………え」
「ん、こんなもんかな」
二人の耳に、同じ色の宝石がキラキラしてる。
「ほら、フィー、見てみて?もう痛くないでしょ?」
痛くはないけど、エルが僕に鏡を向けてくれてて、覗き込んだら、僕の右耳に青い宝石、左耳には緑の宝石がつけられていた。
あ、この色。
思わず、ディーとエルの目元に触れていた。
「……ディーとエルの瞳の色だ……」
「私達は、フィーの髪色だよ。フィーの目立つ特徴は髪色だからね。よかった。フィーによく似た色があって」
もう一度鏡で自分の姿を見てから、二人を見る。
「……贈り物、って」
「俺たちから、フィーに。……まあ、自分たちへの贈り物でもあるな。よかったよ。すぐ見つけられて」
「ディー」
「フィーは私達のものって言う証。私達もフィーの物っていう証。……明日には少しの間お別れだから、色だけでも、フィーの傍にいたいと思って」
「エル」
「まあ、いきなりピアスつけて痛かったと思うけど、そこは許して?」
笑いながら言うエルを見て、また、鏡を見る。
痛みなんて、一瞬だったから。
今は、もう、嬉しくて嬉しくて。
「ディー」
「ん」
「エル」
「うん」
「大好き……!ありがとう!!」
嬉しくて仕方なくて。
人通りの多い通りで。
まだお店の前で。
昼間のように明るい場所で。
僕は二人にキスしてた。
だって、言葉だけじゃ足りない気がして。
………いっぱい、色んな人に見られてたけどね。
僕の目には二人しか映ってなかったよ。
それからは、また、二人とぎゅっと手を繋いで、露店を見て回った。
歩きながら二人を見上げるたびに、耳元にキラっとする僕の色に、ついつい笑みがこぼれてしまう。
僕、とっても幸せです!!
3
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】僕は、妹の身代わり
325号室の住人
BL
☆全3話
僕の双子の妹は、病弱な第3王子サーシュ殿下の婚約者。
でも、病でいつ儚くなってしまうかわからないサーシュ殿下よりも、未だ婚約者の居ない、健康体のサーシュ殿下の双子の兄である第2王子殿下の方が好きだと言って、今回もお見舞いに行かず、第2王子殿下のファンクラブに入っている。
妹の身代わりとして城内の殿下の部屋へ向かうのも、あと数ヶ月。
けれど、向かった先で殿下は言った。
「…………今日は、君の全てを暴きたい。
まずは…そうだな。君の本当の名前を教えて。
〜中略〜
ねぇ、君は誰?」
僕が本当は男の子だということを、殿下はとっくに気付いていたのだった。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる