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アナザーストーリー
AS5 剛剣と師匠 ダンゼンの夢
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想いは砕かれる。
「せいやあああああっ」
「なっ」
ギオンヌの一撃はギレットの何も魂も想いもこもっていない剣を砕いた。
「喝っ!!!」
剣を砕いたギオンヌはいつものおチャラけたではなく、鬼の形相だった。
気合を入れて、右腕に力を入れて出血を抑える。
心が揺れることがほとんどないギレットは恐怖を覚えつつ、剣に込めた力を速やかに逃げる力に利用する。
ダンゼンはそんな鬼の形相のギオンヌに感動を覚え、拳に力が入っていた。
「終わりだ、審判」
ギオンヌはまた、滴り出した右腕を力を入れると、滴る血が徐々に収まっていく。
「まっ、待て」
心を乱すことがほとんどないギレットだったが、その背中を向けてきたギオンヌに声をかける。
「そうだ、そうだっ!!」
「まだ、死んでないぞっ、殺し合え!!!」
「殺すまで、勝負は決まらねぇ!!!」
貴族たちが怒号を浴びせる。
「さっき、あいつらの戦いのときに言ったよな武器の無くなったやつに攻撃するのは剣闘としてあってはならねぇって言ってただろ。剣闘は殺し合いじゃねぇ、そいつの負けだ」
「はっ、ふざけんなっ!!!」
「そうだ、そうだ」
「落ちた刃でいいから、ギレット後ろから刺せっ」
貴族たちは納得せず、審判も困った顔をする。
審判はボトム公爵の顔を見るが、宣言するなと目で訴える。
「はっはっはっはっ」
突然ギレットが笑いだして、ギオンヌが振り返り、貴族たちもびっくりして静かになる。
「ギオンヌ・・・まさか貴殿がそんなに強いとは知りませんでしたよ・・・ただ、一つ教えてください。なぜ、私を殺しに来なかったのですか?」
ギオンヌはため息をつく。
「おいらは、強くない・・・。だって、おいらにゃ、人は殺せない。偽善だとしても剣士としては失格の才能だ。剣は人を殺す物・・・だから、おいらの剣はナマクラさ」
「ふっ、そんな甘いことを言う人間が一人じゃなかったとはね・・・」
ギレットは娘を思い浮かべながら静かに目を閉じる。
「審判っ」
「はっ、はいっ!!」
「私の負けだ」
そう言って、ギレットはボトム公爵に深々と頭を下げた。
「うそだああああああっ」
ギレットに賭けていた貴族たちが阿鼻叫喚のように騒ぎ出す。
「やりましたな、ラッセル様」
「あぁ」
ラッセルやツェペリ、そしてわずかにいたギオンヌに賭けた人たち同士で握手し合う。
「無効だあああああっ」
ボトム公爵が叫ぶ。
この場を取り仕切っていたボトム公爵がそう叫ぶと、賭けに負けた貴族たちがさらに騒ぎ出す。
「許せねぇ・・・っ」
頭に来たダンゼンが剣を抜こうとする。
「バカタレッ」
「いってぇ・・・っ」
ギオンヌはゲンコツをダンゼンにする。
「俺の腕を無駄にする気か、このバーカっ」
「でも・・・」
頭を抑えながら、ダンゼンが貴族たちを見る。
「俺はこいつらのために剣を振るいたくない・・・っ」
「ふっ、おいらも同感だ。じゃあ、聖騎士の話もやめとくか?」
「いや、最強の剣士になるために・・・行ってみたい・・・だけど」
ダンゼンは目を瞑る。
かっこいい甲冑。かっこいい剣。誇りに満ち溢れた顔。
戦のあとに返ってきた騎士団の凱旋、その中に父は誰よりもかっこよくて、ダンゼンは自分も父のような騎士になりたいと思ったことを思い出す。
それだけじゃない、近年の道場ではほぼ無双のダンゼンは次のステージに進みたいと思っていた。そんなダンゼンにとって、聖騎士になることは願ってもないことだった。
「自分のために振るえばいいさ」
ダンゼンが目を開けると、良い笑顔をしたギオンヌがいた。
「今しか言わねーぞ。その、なんだ。お前は兄いとおいらの大切な存在なんだ。お前がその兄いと・・・いや、兄いの背中に憧れたなら兄いもおいらも満足だ」
「ギオンヌ」
「なんだっ」
照れて空を見るギオンヌ。
「さっきのお前はかっこよかった。その・・・なんだ、ついでにお前の背中も追ってやるよ」
頬を掻きながらダンゼンも照れながら明後日の方向を見ながら、呟く。
「・・・まったく、生意気な。それに呼び捨てしてんじゃねーよ」
ギオンヌがダンゼンの足を軽く蹴る。
ダンゼンもそれに応えるように足を蹴り返した。
「こいつめ~~~」
ギオンヌがダンゼンの頭をくしゃくしゃにして、そしてゆっくり撫でる。
「大きくなったな、ダンゼン・・・っ」
ギオンヌはダンゼンの頭の感触を味わうように何度も撫でた。
「これもあれも、ギオンヌ~貴様のせいだぁ」
ボトム公爵がギオンヌのところへ歩き出す。
「待ってください。ボトム公爵」
ラッセルが立ちはだかる。
「貴方は何を便乗して騒いでいるのですか?胴元のあなたは掛け金の分だけ儲かったでしょうに。矛先を彼らに向けて自分に向かないようにする算段ですか」
「うっさい、黙れこいつめっ」
ボトム公爵がラッセルに殴りかかろうとする。
「いってぇっ」
「おやめくださいませ、ボトム公爵。我主に手を上げるような手は・・・」
「いてててててっ」
ツェペリが殴りかかろうとした腕を掴み捻ると、ボトム公爵が騒ぎ出す。
「うるさい豚ですね・・・」
「あの馬鹿っ」
ギレットは懐から隠し刀を取り出し、ボトム公爵のところへ向かう。それに気づいたギオンヌは声を出して止めようとする。
グサッ
「ひゃっ」
女性が悲鳴を上げる。
「なぜ、貴方が」
「ばーか、聞いてなかったのかよ。おいらは人殺しは嫌いなんだよ」
ギオンヌがギレット一撃を左手の手のひらで防いだ。
ダンゼンにはその瞬間がスローモーションのように見えたが、身体は動くことができなかった。
「ひいいいいいいっ」
ボトム公爵が尻餅をついて、お漏らしをする。
ギレットは剣を抜いて、ギオンヌに手のひらを差し出す。
「ギオンヌ・・・申し訳ありません。剣をお貸してください。私の隠し刀には毒があります。その腕はもうだめです」
「そっそんな・・・っ」
ダンゼンがギオンヌを見る。
「ほらっ、しゃーねーな、まったく」
「本当に申し訳ありません。今日は私らしくないことばかりだ」
「止めろ!!!」
「そこをどいてください。ダンゼン殿」
ギレットが剣を構える。ツェペリがダンゼンの左腕を、先ほどの右腕と同じくらいの位置でまたきつく縛り上げる。
「もう、師匠には腕がこれしかないんだぞっ!!?負けたお前が師匠の腕を奪うんじゃねえ!!!」
「しかし・・・」
気迫にギレットが少したじろぐ。
「ダンゼン。お前がやれ」
ギオンヌの言葉にダンゼンが振り返る。
「何言ってんだよ・・・っ、ギオンヌ」
「ちなみにな、おいらを傷つけられたのはおいら自身と、兄いと・・・そしてお前だけって知ってたか?」
「そんなの今聞いても全然うれしくねえよ!!」
「頼むわ、おいらは死にたくねぇ」
ギレットが刀を渡そうとしてくる。
「くっ」
ダンゼンはギレットを見ながら剣を奪う。
「ためらうと、致命傷になるかもしれません。ギレット様の方がよろしいのでは?」
ツェペリがギオンヌに尋ねるが、ギオンヌは大きく横に首を振る。
「できるよなっ!!一番弟子」
「わかったよっ、師匠!!!」
(修羅になろう・・・)
ダンゼンは振りかぶる。剣闘ではない今は、予備動作が大きければ大きいほど鋭い一撃が放てるのだから。
きれいな一撃の方が痛みは少ない、と言い聞かせる。
「御免っ」
この時からダンゼンが心に「悪鬼」が宿った。
◇◇
「大丈夫ですか、ギオンヌ様」
「こっここは・・・」
「ここはフリードリヒ家です」
ギオンヌが目を覚ますと、豪華絢爛な証明と模様が描かれた見知らぬ天上だった。
「良かったっ!!!ギオンヌっ!!」
ダンゼンが寝起きのギオンヌに抱き着く。
「こいつめ・・・」
抱きしめようとしたギオンヌだったが、両手が無かった。
「うううううっ、ごめん、ごめん」
「私もすいませんでした」
ギレットが深々と頭を下げた。
「おい、ギレット」
「なんですか、ギオンヌ」
「こいつが騎士になったら、助けてやれ。決して見捨てるな、そして敵対行為を取るな、約束しろ」
「御意」
「あと、ラッセル様・・・少し、おいらとこいつだけにしてくれないかい?」
「えぇ、いいでしょう。ただ、何かあればすぐに呼んでくださいね」
「あぁ、ありがとう」
そう言って、ダンゼンとギオンヌを残してみんな出ていく。
バタンッ
「さて・・・ダンゼン」
「なんだ、ギオンヌ」
ギオンヌはダンゼンの顔を見ると、ダンゼンらしくない弱々しい目していた。
「お前は、おいらの手になれ」
ダンゼンはその言葉を重く受け止めた顔をして、笑顔でギオンヌに話しかける。
「あぁ、もちろんだ。俺があんたの手の代わりになってなんでもやってやる。飯だって食わせてやるし、風呂だって身体を拭いてやる・・・それから」
「馬鹿かてめーは。お前の武骨な介抱なんて誰も望んじゃいねーよ。介抱されるんなら、おいらは若いねーちゃんがいい」
「じゃあ・・・どうしろってことだよ・・・っ」
下を向くダンゼンをじーっと見るギオンヌ。
「お前の叶えたい夢をその両手で必ず掴め。妥協すんなっ」
その言葉に顔を上げるダンゼン。
「そんなのって、あるかよ・・・っ。俺の過ちで師匠であるあんたの夢も手も奪っておいて・・・自分だけのうのうと夢を目指すなんて・・・できるわけ・・・」
「にげんな、ばーかっ。いつも言ってんだろうが、お前の物は俺の物。だから、お前の夢は・・・俺の夢なんだよ」
ギオンヌは照れ臭そうに窓の方を見る。
「だから・・・いいんだよ、これで。おいらは手を無くしちまったが、頑張らなくてもお前が頑張れば夢を見れるようになったんだ。だからよ・・・、兄いとおいらが喜ぶような夢を見してくれよな」
ダンゼンは唇を震わせた。そして、目からは涙が流れそうになっていたが、必死にこらえた。
「俺、頑張るわっ。必ず夢を掴む」
「あっ、ただ本当に手は痛ぇーし、生活は不便なんだから、ちゃーんと、たんまり仕送りは忘れるなよ、弟子。あと、そうだな、女、女も人生には必要なもんだ。だから、ちゃんと捕まえろよ?」
「考えておくよ」
二人は笑い合った。
そして、キラービーの名を背負ったギレットはギオンヌとの約束を守るが、僅かな日々だけであり、その後、暗殺されてしまう。
軍の戦力が一気に下がると思われた中、ギレットの穴を埋めるようにダンゼンが台頭し、ソルドレイド王国は徐々に他国の侵略を成功していくのであった。
「せいやあああああっ」
「なっ」
ギオンヌの一撃はギレットの何も魂も想いもこもっていない剣を砕いた。
「喝っ!!!」
剣を砕いたギオンヌはいつものおチャラけたではなく、鬼の形相だった。
気合を入れて、右腕に力を入れて出血を抑える。
心が揺れることがほとんどないギレットは恐怖を覚えつつ、剣に込めた力を速やかに逃げる力に利用する。
ダンゼンはそんな鬼の形相のギオンヌに感動を覚え、拳に力が入っていた。
「終わりだ、審判」
ギオンヌはまた、滴り出した右腕を力を入れると、滴る血が徐々に収まっていく。
「まっ、待て」
心を乱すことがほとんどないギレットだったが、その背中を向けてきたギオンヌに声をかける。
「そうだ、そうだっ!!」
「まだ、死んでないぞっ、殺し合え!!!」
「殺すまで、勝負は決まらねぇ!!!」
貴族たちが怒号を浴びせる。
「さっき、あいつらの戦いのときに言ったよな武器の無くなったやつに攻撃するのは剣闘としてあってはならねぇって言ってただろ。剣闘は殺し合いじゃねぇ、そいつの負けだ」
「はっ、ふざけんなっ!!!」
「そうだ、そうだ」
「落ちた刃でいいから、ギレット後ろから刺せっ」
貴族たちは納得せず、審判も困った顔をする。
審判はボトム公爵の顔を見るが、宣言するなと目で訴える。
「はっはっはっはっ」
突然ギレットが笑いだして、ギオンヌが振り返り、貴族たちもびっくりして静かになる。
「ギオンヌ・・・まさか貴殿がそんなに強いとは知りませんでしたよ・・・ただ、一つ教えてください。なぜ、私を殺しに来なかったのですか?」
ギオンヌはため息をつく。
「おいらは、強くない・・・。だって、おいらにゃ、人は殺せない。偽善だとしても剣士としては失格の才能だ。剣は人を殺す物・・・だから、おいらの剣はナマクラさ」
「ふっ、そんな甘いことを言う人間が一人じゃなかったとはね・・・」
ギレットは娘を思い浮かべながら静かに目を閉じる。
「審判っ」
「はっ、はいっ!!」
「私の負けだ」
そう言って、ギレットはボトム公爵に深々と頭を下げた。
「うそだああああああっ」
ギレットに賭けていた貴族たちが阿鼻叫喚のように騒ぎ出す。
「やりましたな、ラッセル様」
「あぁ」
ラッセルやツェペリ、そしてわずかにいたギオンヌに賭けた人たち同士で握手し合う。
「無効だあああああっ」
ボトム公爵が叫ぶ。
この場を取り仕切っていたボトム公爵がそう叫ぶと、賭けに負けた貴族たちがさらに騒ぎ出す。
「許せねぇ・・・っ」
頭に来たダンゼンが剣を抜こうとする。
「バカタレッ」
「いってぇ・・・っ」
ギオンヌはゲンコツをダンゼンにする。
「俺の腕を無駄にする気か、このバーカっ」
「でも・・・」
頭を抑えながら、ダンゼンが貴族たちを見る。
「俺はこいつらのために剣を振るいたくない・・・っ」
「ふっ、おいらも同感だ。じゃあ、聖騎士の話もやめとくか?」
「いや、最強の剣士になるために・・・行ってみたい・・・だけど」
ダンゼンは目を瞑る。
かっこいい甲冑。かっこいい剣。誇りに満ち溢れた顔。
戦のあとに返ってきた騎士団の凱旋、その中に父は誰よりもかっこよくて、ダンゼンは自分も父のような騎士になりたいと思ったことを思い出す。
それだけじゃない、近年の道場ではほぼ無双のダンゼンは次のステージに進みたいと思っていた。そんなダンゼンにとって、聖騎士になることは願ってもないことだった。
「自分のために振るえばいいさ」
ダンゼンが目を開けると、良い笑顔をしたギオンヌがいた。
「今しか言わねーぞ。その、なんだ。お前は兄いとおいらの大切な存在なんだ。お前がその兄いと・・・いや、兄いの背中に憧れたなら兄いもおいらも満足だ」
「ギオンヌ」
「なんだっ」
照れて空を見るギオンヌ。
「さっきのお前はかっこよかった。その・・・なんだ、ついでにお前の背中も追ってやるよ」
頬を掻きながらダンゼンも照れながら明後日の方向を見ながら、呟く。
「・・・まったく、生意気な。それに呼び捨てしてんじゃねーよ」
ギオンヌがダンゼンの足を軽く蹴る。
ダンゼンもそれに応えるように足を蹴り返した。
「こいつめ~~~」
ギオンヌがダンゼンの頭をくしゃくしゃにして、そしてゆっくり撫でる。
「大きくなったな、ダンゼン・・・っ」
ギオンヌはダンゼンの頭の感触を味わうように何度も撫でた。
「これもあれも、ギオンヌ~貴様のせいだぁ」
ボトム公爵がギオンヌのところへ歩き出す。
「待ってください。ボトム公爵」
ラッセルが立ちはだかる。
「貴方は何を便乗して騒いでいるのですか?胴元のあなたは掛け金の分だけ儲かったでしょうに。矛先を彼らに向けて自分に向かないようにする算段ですか」
「うっさい、黙れこいつめっ」
ボトム公爵がラッセルに殴りかかろうとする。
「いってぇっ」
「おやめくださいませ、ボトム公爵。我主に手を上げるような手は・・・」
「いてててててっ」
ツェペリが殴りかかろうとした腕を掴み捻ると、ボトム公爵が騒ぎ出す。
「うるさい豚ですね・・・」
「あの馬鹿っ」
ギレットは懐から隠し刀を取り出し、ボトム公爵のところへ向かう。それに気づいたギオンヌは声を出して止めようとする。
グサッ
「ひゃっ」
女性が悲鳴を上げる。
「なぜ、貴方が」
「ばーか、聞いてなかったのかよ。おいらは人殺しは嫌いなんだよ」
ギオンヌがギレット一撃を左手の手のひらで防いだ。
ダンゼンにはその瞬間がスローモーションのように見えたが、身体は動くことができなかった。
「ひいいいいいいっ」
ボトム公爵が尻餅をついて、お漏らしをする。
ギレットは剣を抜いて、ギオンヌに手のひらを差し出す。
「ギオンヌ・・・申し訳ありません。剣をお貸してください。私の隠し刀には毒があります。その腕はもうだめです」
「そっそんな・・・っ」
ダンゼンがギオンヌを見る。
「ほらっ、しゃーねーな、まったく」
「本当に申し訳ありません。今日は私らしくないことばかりだ」
「止めろ!!!」
「そこをどいてください。ダンゼン殿」
ギレットが剣を構える。ツェペリがダンゼンの左腕を、先ほどの右腕と同じくらいの位置でまたきつく縛り上げる。
「もう、師匠には腕がこれしかないんだぞっ!!?負けたお前が師匠の腕を奪うんじゃねえ!!!」
「しかし・・・」
気迫にギレットが少したじろぐ。
「ダンゼン。お前がやれ」
ギオンヌの言葉にダンゼンが振り返る。
「何言ってんだよ・・・っ、ギオンヌ」
「ちなみにな、おいらを傷つけられたのはおいら自身と、兄いと・・・そしてお前だけって知ってたか?」
「そんなの今聞いても全然うれしくねえよ!!」
「頼むわ、おいらは死にたくねぇ」
ギレットが刀を渡そうとしてくる。
「くっ」
ダンゼンはギレットを見ながら剣を奪う。
「ためらうと、致命傷になるかもしれません。ギレット様の方がよろしいのでは?」
ツェペリがギオンヌに尋ねるが、ギオンヌは大きく横に首を振る。
「できるよなっ!!一番弟子」
「わかったよっ、師匠!!!」
(修羅になろう・・・)
ダンゼンは振りかぶる。剣闘ではない今は、予備動作が大きければ大きいほど鋭い一撃が放てるのだから。
きれいな一撃の方が痛みは少ない、と言い聞かせる。
「御免っ」
この時からダンゼンが心に「悪鬼」が宿った。
◇◇
「大丈夫ですか、ギオンヌ様」
「こっここは・・・」
「ここはフリードリヒ家です」
ギオンヌが目を覚ますと、豪華絢爛な証明と模様が描かれた見知らぬ天上だった。
「良かったっ!!!ギオンヌっ!!」
ダンゼンが寝起きのギオンヌに抱き着く。
「こいつめ・・・」
抱きしめようとしたギオンヌだったが、両手が無かった。
「うううううっ、ごめん、ごめん」
「私もすいませんでした」
ギレットが深々と頭を下げた。
「おい、ギレット」
「なんですか、ギオンヌ」
「こいつが騎士になったら、助けてやれ。決して見捨てるな、そして敵対行為を取るな、約束しろ」
「御意」
「あと、ラッセル様・・・少し、おいらとこいつだけにしてくれないかい?」
「えぇ、いいでしょう。ただ、何かあればすぐに呼んでくださいね」
「あぁ、ありがとう」
そう言って、ダンゼンとギオンヌを残してみんな出ていく。
バタンッ
「さて・・・ダンゼン」
「なんだ、ギオンヌ」
ギオンヌはダンゼンの顔を見ると、ダンゼンらしくない弱々しい目していた。
「お前は、おいらの手になれ」
ダンゼンはその言葉を重く受け止めた顔をして、笑顔でギオンヌに話しかける。
「あぁ、もちろんだ。俺があんたの手の代わりになってなんでもやってやる。飯だって食わせてやるし、風呂だって身体を拭いてやる・・・それから」
「馬鹿かてめーは。お前の武骨な介抱なんて誰も望んじゃいねーよ。介抱されるんなら、おいらは若いねーちゃんがいい」
「じゃあ・・・どうしろってことだよ・・・っ」
下を向くダンゼンをじーっと見るギオンヌ。
「お前の叶えたい夢をその両手で必ず掴め。妥協すんなっ」
その言葉に顔を上げるダンゼン。
「そんなのって、あるかよ・・・っ。俺の過ちで師匠であるあんたの夢も手も奪っておいて・・・自分だけのうのうと夢を目指すなんて・・・できるわけ・・・」
「にげんな、ばーかっ。いつも言ってんだろうが、お前の物は俺の物。だから、お前の夢は・・・俺の夢なんだよ」
ギオンヌは照れ臭そうに窓の方を見る。
「だから・・・いいんだよ、これで。おいらは手を無くしちまったが、頑張らなくてもお前が頑張れば夢を見れるようになったんだ。だからよ・・・、兄いとおいらが喜ぶような夢を見してくれよな」
ダンゼンは唇を震わせた。そして、目からは涙が流れそうになっていたが、必死にこらえた。
「俺、頑張るわっ。必ず夢を掴む」
「あっ、ただ本当に手は痛ぇーし、生活は不便なんだから、ちゃーんと、たんまり仕送りは忘れるなよ、弟子。あと、そうだな、女、女も人生には必要なもんだ。だから、ちゃんと捕まえろよ?」
「考えておくよ」
二人は笑い合った。
そして、キラービーの名を背負ったギレットはギオンヌとの約束を守るが、僅かな日々だけであり、その後、暗殺されてしまう。
軍の戦力が一気に下がると思われた中、ギレットの穴を埋めるようにダンゼンが台頭し、ソルドレイド王国は徐々に他国の侵略を成功していくのであった。
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