【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一

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「嘘でしょ・・・」

 私は本当にそのままの格好で国の領地外へ運び出された。
 さすがに今日中で、いったんは家に寄ってくれるとも思ったけれど、二人の兵士はハンス王子の近くにいるに相応しいくらい、脳筋で、疲れることなく私をあっという間にその場所まで連れて来た。

「「ではっ」」

 そう言って、二人の兵士が背中を向ける。

「嘘でしょっ!?ねぇ、一応、私令嬢なんですけどっ!!ただの令嬢なんですけどっ!!こんな格好で、野生の動物だっているでしょっ!!」

 私の言葉が耳に入らないのか、人間の言葉がわからないのかそのまま帰って行ってしまう兵士たち。
 私もスカートの袖を上げて走って彼らを追って、国へ帰ろうとすると、

 ジャキンッ

 こんな無防備な私に門番たちは鋭利な槍を向けて、国内には決して入れない様子だった。

「もぅ・・・どうしよう・・・・・・」

 さすがの私もその場に座り込んだ。
 膝を抱えて、お父様やお母様が私に向けてくださる笑顔を思い出し、住み親しんだ我が家を思い出す。
 でも、思い出せば思い出すほど、良い記憶のはずなのに、今のこの惨めな私は悲しくなる。

「よしっ、歩こう」

 私は考えた。
 門番たちが見えないところまで歩いて、商人を見つける。
 そして、商人に交渉して、荷物に忍び込ませていただいて、国の中に入り、謝礼をたっぷり渡して、家に帰ろうと。とても、いい案だと思った。

(この人は・・・むりっ)

 けれど、意外とこの作戦は難航した。
 私も一応は女だ。
 身だしなみもきちんとしていたから、王子に見初められた。
 だから、相手を間違えると、人身売買で売られてしまう可能性もある。
 
 私に呪いの赤いブローチを送って来たハンス王子。
 そんな彼と売買をしに来る商人たちはクセのありそうな悪人ずらの人が多く、歯が抜けたり、ボロボロの服を着たり、血の匂いや、怪しい匂いをしている商人がほとんどで、私がイメージしている身だしなみがしっかりしており、理知的で私の提案にも面白い商売だと言ってくれそうな商人は全然現れてくれなかった。

 だから、私は草むらの方へと移動した。
 すれ違うだけでも危険そうな商人も大勢だったし、日が落ちてくるとその傾向はとても増した。
 バレなくてよかったけれど、ここら辺の山賊らしき人と楽しそうに話をしている商人もいた。

「あっ」

(あの人なら・・・)

 人の良さそうな商人が馬車に乗って国へ向かっていた。
 これがラストチャンスかもしれない。
 私は意を決して草むらから出ようとすると、

「えっ・・・うそっ」

 私と道の反対側で待ち伏せしていた山賊たちが彼の馬車を襲った。
 

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