美しい姉と優秀な姉に邪見にされても、王子を取られても、国外追放されても、最後に幸せになるのはこの私です。

西東友一

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1 いけないのは私

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 私たち三姉妹にはお祖母様から授かった力がある。
 
 その時に未来は決まってしまったのだろう。
 くだらない力を選択し、その力を使い過ぎて、お姉様二人の反感をかった。
 もう二度と力を使おうとは思わないと決めた。
 そう、あの日まではーーー

「ねぇ、フランソワ。なんか、臭くない」

「確かにそうですわね、ヘルミンお姉様」

 前髪の隙間から見える二人のお姉様たちは口角を上げ、眉間にしわを寄せながら私を見る。
 
(よかった・・・・・・)

 今日の二人は心に余裕があって、からかいたい日で昨日みたいに痣を作らなくて済みそうだ。

「すいません、それ私だと思います」

 昨日水浴びをしたし、多分に臭うことはないと思う。けれど、今日のパターンで知らん顔なんてしたら、二人から笑顔が消えて、私の身体に新たに痣が生まれるだけだし、無実の罪であっても認めて申告した方が丸く収まるのだ。

「もー、しっかりしてよね、アンナっ」

「・・・っ」

 私の背中を叩くヘルミンお姉様の強さの程度は、とても友人や家族にする強さのものじゃなく、息が止まりかけた。

「そうよっ、気を付けないさい」

「・・・・・・っ」

 フランソワお姉様も張り合うように私の背中を叩き、ヘルミンお姉様は「やるわね」みたいな顔をし、フランソワお姉様も「でしょ」みたいなドヤ顔をしてヘラヘラしていた。

「本当に申し訳ございません」

 逆らってはいけない。
 世の中は上の者が偉いのだ。
 下の者が逆らっちゃいけない。

「もーーーっ」

 そう言って、ヘルミンお姉様が私を抱きしめてきた。脂っぽいお肉ばかり食べているヘルミンお姉様の香ばしい香りにえずきそうになったけれど、必死に堪えた。

「無能で愚鈍で駄目な可愛い妹なんだからぁ」

 そういって、ヘルミンお姉様はトントン私の背中を叩く。
 今日は本当にご機嫌な様子だ。叩く強さは強めだけれど、痛めつけるつもりはないようだ。

「アンナ。今日はね、プレゼントを用意したの」

 フランソワお姉様がそう言って、私の顔の目の前で瓶を揺らす。
 すると、ヘルミンお姉様の香ばしい香りを打ち消すような柑橘系の爽やかな香りがした。

「それはなんでしょうか」

「えー、こんなに匂いがするのに分からないの? 貴女のこれはただの飾り?」

 フランソワお姉様はヘルミンお姉様に抱きしめられて身動きが取れない私の鼻をぐいぐい押してきた。

「本当に、なんであんたなんかの鼻が・・・・・・一番高いのかしらね」

 フランソワお姉様は私の鼻が低くなるように呪いをかけるかのように鼻を何度も強く押した。ただ、これは嫉妬じゃないことを私は知っている。これは、自分より下の者に負けたくないからだ。

(だって、こんなにお二人はお美しいのだもの)

 私の立場からは二人の性格がいいとは言えない。
 けれど、お二人ともとても綺麗なのだ。
 特に、フランソワお姉様はとてもとてもお美しい。

 世界一綺麗だと言われても、私は当然だと言うだろし、みんなもすぐに納得すると思う。
 ただ、仮にお姉様の鼻の高さが私くらいあれば、その美しさ一つで世界を魅力し、支配できたに違いない。
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