美しい姉と優秀な姉に邪見にされても、王子を取られても、国外追放されても、最後に幸せになるのはこの私です。

西東友一

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 空気が読めない。

(そんなことを言われても、お二人は想像以上にわがままなんだもの。それに、説明もちゃんとしないんだし。仕方ないじゃない)

「アンナ、なんか文句でもあんの?」

 ヘルミンお姉様はかなり怒っていた。

(って、いけないいけない。お二人に勝とうとするなんて良くないわ)

「いえ滅相もございません。ただ、この愚妹にいつ帰れば良いか教えていただけますか?」

「えっ、good night?」

「ヘルミンお姉様、愚妹です、ぐ・ま・い。愚かな妹ってことです」

「誰が?」

「アンナがです」

「あらそう。それでなんだったかしら?」

「いつ帰ればいいかです」

「えーっと、なるべく遅くよ、遅く・・・えーっと・・・・・・」

「今日は帰らなくていいわ。泊まってきなさい」

 フランソワお姉様はそう言って、私にお金を手渡しで渡して握らせた。

「ですが、それはさすがに・・・」

 ヘスポリス王国は他国に比べれば治安がいいかもしれない。でも、暗くなった夜に10代の女が一人で無事に帰れるわけがない。それに、まだ結婚も婚約もしていない私が夜に歩き回っていただなんて事実があれば、遊女だなんてあらぬ疑いをかけられて、結婚したとしても、それを理由に簡単に離婚できる理由になってしまう。

 私だって、結婚して幸せになりたいからそれはごめんだ。

「大丈夫よ、メイドと一緒に。それと、向かう先は別荘にすればいいじゃない」

 フランソワお姉様の態度を見るに、何かの理由で私を説得するのに相当の時間を掛けているのが分かった。理由は少し気になるけれど、それだけの条件を付けるのであれば、二人のお姉様たちから解放されるメリットもあるし、断る理由はない・・・・・・と思う。

「分かりました。では、そうさせていただきます」

 歯向かうことはマイナスでしかない。
 二人の要望を聞いた中で、自分にとって都合のよいものを選んでいくしかない。
 それが、私の人生。
 私の愚かな選択が招いた未来だ。

 私はお城を離れた。
 二人がこんな会話をしているとも知らずに。

「ふふ、お金に釣られて馬鹿な妹ね」

「そうですね、ヘルミン」

「あの子はいつも目先のことに飛びつくのだもの、滑稽だわ」

「ふふふっ。あとは彼の到着を待つのみね」

「ちゃんと手伝ってよね、フランソワ。私もちゃーーんと、貴女のお世話をするんだから」

「ふふふっ。分かっていますわ、ヘルミン」

「まぁ、彼があんなボサボサ頭で、顔だってよく見せない気味の悪い子を好きになるはずはないと思うけど」

「いいえ、ヘルミン。忘れたの? アンナの性格の悪さを。それにあの能力を考えると・・・・・・万が一のためね」

「そんな心配をしなくても長女である私が全てを手に入れるんだから」

「・・・・・・」

「どうかした?」

「いいえ、そうですね。男に困ったことがないので、アンナの気持ちなんて分からないなって思いまして」

「ふふっ、私だってお父様が色々言わなければ男に困らないのだけれど。さすがモテる女は余裕ね、フランソワ。アンナみたいに無理やり人から物を奪うような卑しい力を選ぶんじゃなくて、自分を磨く力を手に入れた―――」

”愛される美、フランソワ”

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