美しい姉と優秀な姉に邪見にされても、王子を取られても、国外追放されても、最後に幸せになるのはこの私です。

西東友一

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7 フランソワ視点

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 ヘルミンは怒っていた。

 「今、なんと言ったのかしら?」

 メイドのマリーが助けを求めるように私を見るけれど、私もヘルミンと同じ気持ちだ。

「ねぇ、マリー。私たちの命令を忘れたのかしら?」

「フランソワさま・・・・・・」

 私が頬を触ると、頬をほんのり赤く染めて、まるで生まれたての子猫のようにウルっとした瞳で私を見るマリー。いつもなら、可愛がってあげるところだけれど、今日はとても憎たらしい。

(もう、可愛がるのは止めましょう)

 私にとって、もうマリーは嫌悪の対象でしかない。

「私の命令は?」

 私は優しい声を出しながら、マリーの耳たぶを優しくつまむ。
 もし、覚えていなかったら、不意打ちで思いっきり引っ張ってやろう。

「はひっ、アンナを別荘に隔離し、監視することです」

(耳は悪くなかった、と)

「そうよね、そう。そうなのよ。それで・・・・・・あなたは・・・・・・どうしてここにいるのかしら?」

 私は再び彼女の頬に手を当てる。

「アンナを独りにして困らせた方が、フランソワさまがお喜びになると―――」


 バチンッ!!

 これでもかってくらい、思いっきりマリーの頬を叩いた。
 手がとても痛い。

(こんなバカのせいで、手が痛い)
 
 ドカっ!!!

 腹が立ったから、床に座り込んで混乱したマリーの背中を蹴とばしといた。

「あーあっ、じゃあ、フランソワのせいじゃない」

 私が後ろをゆっくり振り向くと、両手を頭の後ろに組んだヘルミンが背中を伸ばしてヤレヤレ顔をしている。

(コイツも・・・・・・)

 全員腹立たしい。

「いえ、それはこのマリーが勝手に・・・・・・」

「えー、だから、アンタがいつも従者に自分で考えろって言っているからでしょ」

「ええ、それはそうです。そうした方が・・・・・・より快適な」

「いや、だめじゃん。失敗じゃん。大失敗。あーあっ」

 ため息をつくヘルミン。
 カチンときたけれど、言い返す材料がない。

「だから、言ってるじゃないの。従者なんて無教養のバカばっかなんだから、指示したことだけやらせればいいのよ、こうやって」

 勝ち誇った笑みを浮かべたヘルミンは、マリーの前へと歩いて行く。

「いや、いや、いやです。ヘルミンさま・・・・・・フランソワさまっ!!」

 いけない、止めないと。

「お姉様、お待ちくだ・・・・・・」

「死をもって償いなさい、この無能が」

 ヘルミンの言葉でマリーの瞳から光は消え、糸の切れた人形のように身体から力が抜けて、床に倒れ込んだ。

「アンタのメイドなんだから、処理は任せるわよ、フランソワ。私のかわいい妹」

 ニコッといたずらっぽく笑うヘルミンの笑顔は、小悪魔なんかじゃない。
 悪魔そのものだった。

(長女だからってチート過ぎるでしょ・・・・・・この・・・・・・)

”世界征服のヘルミン”め。
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