美しい姉と優秀な姉に邪見にされても、王子を取られても、国外追放されても、最後に幸せになるのはこの私です。

西東友一

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8 フランソワ視点(過去の話)

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 三姉妹で可哀想なのは、二女だ。

「あんたは、じじょよ、侍女。私に従いなさい」

 バカで傲慢な姉のヘルミンは、小さい頃にそんなことを言って私をイジメてきた。
 女らしさも品格も全くないヘルミンは、よく私からお菓子やおもちゃを奪ったし、二人で遊んでいてヘルミンが乱暴に花瓶を壊した時も私のせいにされた。反論したかったけれど、体格差もあり、大人の前であろうが暴力で解決するヘルミンに私は従うしかなかった。妹とはそういうものだと、私は理解していた。

 でも、周りの貴族の姉妹を見て、姉って、女の子って、姉妹って華やかでキラキラしたものなんじゃないかって思っていたの。

「お母様っ! 子どもが生まれるの!?」

 だから、お母様が子どもを授かった時、私は姉になれるととても興奮した。

「ええ、そうよ」

「撫でていい?」

「ええ、いいわよ」

「息子ならいいな」

 お父様がそう言っていたけれど、私は、

(女の子でありますように)

 と願いながら、お母様のお腹を擦った。

(あと、できれば・・・・・・)

「私も!! 私も!! ちょっと、フランソワっ!!」

「あぁ、暴れてはダメよ。二人とも。うっ」

(えっ、お母様、私は暴れてなんかいな・・・・・・)

「二人とも、出て行きなさい。ほらっ」

 お父様が私たちの背中を押す。ヘルミンは駄々をこねるからお父様は私の背中から手を離して、

「ほら、フランソワも。暴れないで部屋の外に出るんだ」

(暴れてなんて・・・・・・いないのに)

 そう言って、私たちを部屋の外に追い出した、お父様はお母様の背中を擦っていた。

 ポカンっ!!

「痛っ」

「あんただけずるいのよっ!!」

「うぇーーーーんっ!!」

「こらっ!! 喧嘩をするんじゃない!!!」

 部屋からお父様のお怒りの声がして、ヘルミンは慌てて逃げ出し、私は痛いのと泣きたいのを我慢してその場で、下唇を噛んだ。

「大丈夫か?」

 お父様の優しい声がしたのでふり返ると、その言葉は私じゃなくてお母様に向けたものだった。

「ええ、お姉ちゃんたちが騒がしくて。うるさいよって、お腹を蹴ったのかも? いい子、いい子」

 そう言って、お父様とお母様はお母様のお腹にいる赤ちゃんを撫でていた。
 私はいい子にしていたのに、頭が痛い。
 けれど、次に生まれてくる子はお母様のお腹を蹴ったにも関わらず、なでなでされている。

(こんな、世界・・・・・・おかしいじゃない)

 時々だけ、お母様とお父様は妹だからという理由で、私をかわいがってくださることがあった。
 けれど、それもあのお腹の中の子に奪われるんじゃないかと不安が湧いてくる。

 私は拳をぎゅっと握り締める。

「そうなら・・・・・・私は・・・・・・」
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