【完結】浮気症の辺境王子に婚約破棄されたけれど、一途な中央国家の王子に好かれた話

西東友一

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本編

21話 ミツルギ流

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「く・・・っ」

 ボッド王子はミツルギの剣先が自分の喉元に向けられて、立ち慄いている。

「どうした?構えねば、こちらから参る。よもや、それでも不意打ちとは言わぬだろうな」

 ミツルギが間合いを一歩詰めると、ボッド王子の傍らにいた兵士2人が後ずさる。
 それに対して、ボッド王子は恐怖で後ずさることもできなかったようだが、そんな2人を見て声を上げる。

「おっ、お前ら、なにをしているっ!?早く倒してこい!!」

「むっ、無理です」

 二言返事で断った2人にボッド王子は苛立ちを顕にする。

「なんのために高い金を払って、お前らを兵士として雇っていると思ってるんだ。早く行けっ」

 2人の兵士はお互いの顔を見つめ合い微妙な顔をする。その顔は「高級取りじゃないよな、俺たち」と目で言い合っているような顔だった。

「何をしている、早く行けっ!」

 2人の兵士は仕方なさそうに剣を構えてミツルギの前に立つ。

「参るっ」

 私の目には留まることのない速さで、先ほどのデジャヴを見ているかのようにあっさりと2人の兵士の剣を吹き飛ばすミツルギ。

 呆然と立ち尽くす2人はさっきまで剣を握っていた手が弾かれた痺れで震えている。
 
 カチャンッ

 ミツルギは剣を鞘に収める。

「弱さに感謝するんだな」

「へっ?」

 ミツルギの言葉に兵士が間の抜けた顔をする。

「実力が拮抗していれば、ケガをさせてしまったかもしれない。中途半端な強さは、時に状況を悪化させてしまうのだから」

 ミツルギは何かを思い返したのか、一瞬悲しそう顔を浮かべた。

「さて・・・貴公はどうする?ボッド王子」

 ミツルギは自身の仕舞った剣の束に指先で触れながら、ボッド王子を横目で見る。先ほどまで少し見せていた殺気や戦闘意欲は全く見せず、どちらかと言えば憐れむような顔をしていた。

 ボッド王子は再び自軍の約3000の兵を見る。
 兵士たちはミツルギの実力を見て、戦意が削がれていた。

「弓を放てえええっ!!」

 ボッド王子は叫びながら、3000人の軍へと逃げ帰る。

「ボッド様ぁ」

 剣を弾かれた二人がボッド王子の背中に声をかける。

「お前ら2人は命をかけて、その男を足止めせよ」

「そんなっ」

 二人の兵は振り返ってミツルギを見る。
 ミツルギは呆れたような顔をして、二人を殺めるつもりは無い様子だった。
 それを見て、二人の兵もほっとした顔を浮かべる。

「ふっ、余裕を浮かべていればいい。所詮は・・・」

 ボッド王子がミツルギの攻撃範囲から出れたと油断してほくそ笑む。

「放てっ」

 兵隊長が兵士たちが弓を構えたのを確認して号令をかける。

 無数の弓が7人の騎士に向けられて放たれた。
 
 私が空を見上げると、綺麗な空に約3000の矢が飛翔し、ぶつぶつした黒点となって空を汚し始めた。
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