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本編
42話 温かい手
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「きれい・・・」
キキョウさんが私の髪を触りながら恍惚の声を漏らす。
「そんな、キキョウさんの髪の方がきれいですよ」
鏡越しに私の髪を結ってくれているキキョウさんを座りながら見る。
「ありがとう、シャーロットちゃん。でも私の髪はこんな風に光り輝かないもの」
私の髪を持ち上げて太陽の光の反射を愛でるキキョウさん。私の見えないところを見つめられると思うと、とても恥ずかしくなる。
「今日はいい天気ですね」
私は窓の外を首を動かさずに見る。
「えぇ、そうね。デート日和だわ」
ドキッとしたけれど、気持ちを隠したいと思った私はキキョウさんに話を振る。
「キキョウさんわあ、デートされるんですか?」
少し声が裏返ってしまった。
「ん?しないわよ」
「したことは?」
「うーん、あるような、ないような・・・」
「えっ、どんな人とですか?もしかして、ミツルギさんとですか?」
意表を突かれた顔をしたキキョウさん。
「ふふっ。秘密よ」
「えー、教えてくださいよ」
私が聞いてもキキョウさんは笑ってはぐらかすばかりだった。
「はいっ、でーきたっ」
そんな恋バナ未満のような話をしばらくしていると、いつの間にか完成していたようだ。
「うわあ・・・すごい・・・」
私が横を向くと後ろ髪を綺麗に結ってある。今までに見たことのない結い方だった。
私は何も考えずにおしゃべりだけしていたのだけれど、キキョウさんは話もしながら、こんなに素晴らしい髪形を作ってくれていたと思うと、普段から美意識が高い人なんだと思った。
「マクアス王国で今流行っている結い方なの。気に入ってくれた?」
「えぇ・・・とっても」
私は何度も左右に首を振って確認する。完全なシンメトリーになって、綺麗な曲線を描いている。
「行ってみたいなぁ、マクアス王国に」
思わず声が出ていた。
「ぜひ、いらっしゃってください。クリス王子も御喜びになりますわ」
「それは・・・どうかしら?」
私が苦笑いをすると、キキョウさんは驚いた顔をする。
キキョウさんは知らないから、そうやって驚くかもしれないけれど、私は昨日、いろんな想いから結婚を断ってしまった。そんな私がぜひ、マクアス王国へ行きたいなんて言うのは我ながら厚顔無恥だと思ってしまう。
ポンッ
両肩に細い指が乗る。
私は鏡越しにその指の持ち主のキキョウさんを見る。
「今度はお化粧してあげる」
「ほんとですか?わーいっ」
「ふふっ、こっち向いて」
そう言って、キキョウさんは顔に化粧をしてくれる。
「お化粧しないと外に出れないって人がいるんだけど、私は違うと思っているの」
テキパキと私はなすがままに顔に化粧を塗られていく。
「お化粧はあくまで、その人のいい部分を際立たせて、悪いところを目立たなくしているだけだもの」
「はぁ・・・」
私は口元にファンデーションを塗られていたので、軽く相槌だけうつ。
「だから、着飾ったって、お化粧だってしたっていいけれど、変な見栄を張って、自分を見失わないようにね・・・。あなたは、あなたなのだから」
目の前のキキョウさんは、にこっと笑った。
戦に赴くこともあるからだろうか。キキョウさんは薄いメイクだったけれど、とても輝いてきれいに見えた。
「・・・はいっ」
「本当に、シャーロットちゃんは素直でいい子ね。大好き」
きっと、年上のキキョウさんは私よりもいっぱい恋を重ねて、こんなに色っぽいのだろう。
「やっぱり、キキョウさんの恋バナ聞きたいなぁ」
「だ~めっ。おしえな~い」
「ええっ、キキョウさんのいじわるっ」
私たちはまるで姉妹のようにじゃれ合いながら笑い合った。
キキョウさんみたいな人が姉だったらいいのに。
キキョウさんが私の髪を触りながら恍惚の声を漏らす。
「そんな、キキョウさんの髪の方がきれいですよ」
鏡越しに私の髪を結ってくれているキキョウさんを座りながら見る。
「ありがとう、シャーロットちゃん。でも私の髪はこんな風に光り輝かないもの」
私の髪を持ち上げて太陽の光の反射を愛でるキキョウさん。私の見えないところを見つめられると思うと、とても恥ずかしくなる。
「今日はいい天気ですね」
私は窓の外を首を動かさずに見る。
「えぇ、そうね。デート日和だわ」
ドキッとしたけれど、気持ちを隠したいと思った私はキキョウさんに話を振る。
「キキョウさんわあ、デートされるんですか?」
少し声が裏返ってしまった。
「ん?しないわよ」
「したことは?」
「うーん、あるような、ないような・・・」
「えっ、どんな人とですか?もしかして、ミツルギさんとですか?」
意表を突かれた顔をしたキキョウさん。
「ふふっ。秘密よ」
「えー、教えてくださいよ」
私が聞いてもキキョウさんは笑ってはぐらかすばかりだった。
「はいっ、でーきたっ」
そんな恋バナ未満のような話をしばらくしていると、いつの間にか完成していたようだ。
「うわあ・・・すごい・・・」
私が横を向くと後ろ髪を綺麗に結ってある。今までに見たことのない結い方だった。
私は何も考えずにおしゃべりだけしていたのだけれど、キキョウさんは話もしながら、こんなに素晴らしい髪形を作ってくれていたと思うと、普段から美意識が高い人なんだと思った。
「マクアス王国で今流行っている結い方なの。気に入ってくれた?」
「えぇ・・・とっても」
私は何度も左右に首を振って確認する。完全なシンメトリーになって、綺麗な曲線を描いている。
「行ってみたいなぁ、マクアス王国に」
思わず声が出ていた。
「ぜひ、いらっしゃってください。クリス王子も御喜びになりますわ」
「それは・・・どうかしら?」
私が苦笑いをすると、キキョウさんは驚いた顔をする。
キキョウさんは知らないから、そうやって驚くかもしれないけれど、私は昨日、いろんな想いから結婚を断ってしまった。そんな私がぜひ、マクアス王国へ行きたいなんて言うのは我ながら厚顔無恥だと思ってしまう。
ポンッ
両肩に細い指が乗る。
私は鏡越しにその指の持ち主のキキョウさんを見る。
「今度はお化粧してあげる」
「ほんとですか?わーいっ」
「ふふっ、こっち向いて」
そう言って、キキョウさんは顔に化粧をしてくれる。
「お化粧しないと外に出れないって人がいるんだけど、私は違うと思っているの」
テキパキと私はなすがままに顔に化粧を塗られていく。
「お化粧はあくまで、その人のいい部分を際立たせて、悪いところを目立たなくしているだけだもの」
「はぁ・・・」
私は口元にファンデーションを塗られていたので、軽く相槌だけうつ。
「だから、着飾ったって、お化粧だってしたっていいけれど、変な見栄を張って、自分を見失わないようにね・・・。あなたは、あなたなのだから」
目の前のキキョウさんは、にこっと笑った。
戦に赴くこともあるからだろうか。キキョウさんは薄いメイクだったけれど、とても輝いてきれいに見えた。
「・・・はいっ」
「本当に、シャーロットちゃんは素直でいい子ね。大好き」
きっと、年上のキキョウさんは私よりもいっぱい恋を重ねて、こんなに色っぽいのだろう。
「やっぱり、キキョウさんの恋バナ聞きたいなぁ」
「だ~めっ。おしえな~い」
「ええっ、キキョウさんのいじわるっ」
私たちはまるで姉妹のようにじゃれ合いながら笑い合った。
キキョウさんみたいな人が姉だったらいいのに。
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