【完結】浮気症の辺境王子に婚約破棄されたけれど、一途な中央国家の王子に好かれた話

西東友一

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本編

52話 「幸せ」は自信がない人が嫌いだ

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「ねぇ、クリス。あなたはこの領地が目当てで私に近づいたのよね?」

「いいや・・・僕は・・・」

「そう言ってよ・・・っ」

 私はクリスの声を遮ぎる。

 この国にある技術や資源を望んで私に近づいたなら、どんなに良かっただろう。
 まだ半日だというのにクリスと二人で歩いて私にはわかった。

―――クリスは完璧な男性だ。

 全てを持っていて、それでいて気さくで、優しくて母性をくすぐる部分もあって・・・
 私はそんな彼の隣を歩くことができる女性なのか、不安になったのだ。

 サッ

 私の背中が優しさに包まれる。

「クリス・・・」

 いつの間にかクリスは私の後ろに立っており、私を優しく抱きしめていた。

「ちょっと、クリス・・・放して・・・」

「いやだ」

「ちょっと、ワガママ言わないでよ。誰かに見られたら・・・」

 ハグとは違う。ハグならば、友人同士の挨拶でも行う。けれど、こんな風に後ろから抱きしめる関係性、それは―――

「僕は構わない」

「あなたが構わなくても、私が気にするのっ」

「キミのそういうところが・・・僕は嫌いだ」

「え・・・っ」

 クリスの言葉は私の心を切り刻んだ。

(クリスだけは私を傷つけないと信じていたのに・・・)

 両目から涙が溢れた。

(でも・・・それでいいのかもしれない。こんな醜い私は・・・消えてなくなってしまえばいいわ)

 私の世界から希望は消えた。

「えぇ、そうよね・・・こんな私・・・」

「なんで、自分を信じてあげないんだ・・・」

 クリスは悲しそうに私を力強く抱きしめてくる。

「あなたのような完璧で、清廉潔白な人にはわからないのよっ!!」

「僕が完璧?ははっ、キミに僕の何が分かる?」

「わからないわよ・・・っ」

 クリスも私と同じように感情的になっている。

「じゃあ、僕は王子を捨てる。それならいいだろっ!」

「はっ、駄々っ子にならないでよ、良いわけないでしょ」

「キミが手に入らないなら、王子なんていらないよっ!!」

「私を物扱いしないでよっ、それじゃあ、ボッド王子と同じよ!!」

 私の言葉にクリスは言い返せなくなる。

「・・・ごめん、そんなつもりじゃなかった・・・」

 私を抱きしめる腕が弱まる。

「・・・うん」

 私も興奮していたけれど、少し冷静になる。

「でも・・・僕はどうすればいいんだろうね」

「わかんない・・・っ」

 クリスは悲しそうに笑う。

「昨日、キミに断られてた後、僕も色々考えたんだ。この想いは一時のものなのか、それとも揺らがない想いなのか。キミのことを諦めるか、諦めないか。僕は・・・・・・キミのためなら足りない部分は身に着けよう。そして、キミが望むなら全てを捨てよう。全てはキミのために」

 クリスは手を差し出す。
 綺麗な手を。
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