【完結】浮気症の辺境王子に婚約破棄されたけれど、一途な中央国家の王子に好かれた話

西東友一

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本編

55話 stop the second kiss

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「ふふっ」

 私はクリスから首にかけてもらったピンクオパールの勾玉を触っていると、どうしてもにやけてしまう。
 太陽の光にかざすと、半透明の勾玉は光を浸透させて全体を光らせつつ、一部は光を反射させて輝いている。

「きれいだね」

 クリスもヒスイの勾玉をつまみながら、私に笑顔を振りまいてくれる。

「ごめんなさい、私ったら。プレゼントを提案した私の方が喜んじゃって・・・」

 私は少し反省して、指をもじもじさせつつ、照れながら上目遣いでクリスを見る。

「何を言っているんだい?僕ら二人の思い出じゃないか。僕は君のように表に出さないだけで、君と同じくらい嬉しいし、君も嬉しいなら、もっと嬉しいよ」

 私に疑問が生まれた。

 この人は本当に王子様なのだろうか。
 こんな片田舎のしがない貴族にここまで言ってくれるなんて、本当に心がきれいな人だ。

「ふふっ、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう」

 ボッド王子もクリスの爪の垢でも煎じて飲ませれば、もっと国が良くなるかもしれない。

「でも、キミのお父様に話すまでは仕舞っておこうかな」

 そう言って、クリスは服の襟から見えない場所へ仕舞ってしまう。

「そんな悲しそうな顔をしないでよ、シャーロット」

 私の視線に気づいたクリスは笑いながら言う。どうやら少しばかり寂しい気持になっていたのが、すぐに顔に出てしまったようだ。

「うーん、お父様は怒らないと思うんだけど」

 素直に出したままにしてと言うのは、恥ずかしかったので遠回しにクリスが隠す理由を潰そうと試みてみる。

「あれっ、さっきと言っていることが違う気がするな」

 クリスはからかうような笑顔をしている。そういえば、さっき冗談でクリスに私のお父様が怖いと言ったのを忘れていた。

「それはそれ、これはこれよっ」

 私は強がりながら苦しい言い訳をすると、それを見ていたクリスは笑っている。

「じゃあ、こういうのはどうだい?これは二人だけの秘密と言うのは」

 もう一度、ヒスイの勾玉を胸元から取り出して、私の持っていたピンクオパールの勾玉と重ねる。
 勾玉は綺麗な円になる。黄緑色とピンク色のコントラストがきれいだ。
 そして、私の勾玉と彼の勾玉がまるで永遠に追い掛けっこをしあっているような気がした。

「どう?」

 私がクリスの顔を見ると、紐の長さも限られているため、自然と顔の距離が近いクリス。
 私は先ほど、キスをしたことを思い出して、唇がうずいて、ドキドキしてしまう。

「ん?」

 私の反応を楽しむかのように優しく笑うクリスは細くなった目元を少しだけ大きくした。
 目元も気になるけれど、先ほどの柔らかかった唇を思い出してしまう。
 すると、再びクリスの唇が近づいてきて、私の背中にクリスの温かくて大きな手が私の背中を支える。

 私の心臓はバクンッ、バクンッ音を出して、顔は沸騰したように熱くなる。
 そして、私の目はクリスの唇一点以外見えなくなってしまった。

 ピタッ

 私は右手の人差し指でクリスの唇を抑えて、左手でクリスの胸のあたりを触れる。

「さ・・・っ、さっきのおじいさんも知っているわよ」

 私がドキドキしながら、目で離れてほしいと訴えかけると、それを察したクリスは後ろに回した手をゆっくりと離して、クリスが距離を取ってくれる。

「そうだね」

 クリスは目で「じゃあ、行こうか」と歩くのを促す。
 私たちは再び歩き出す。

(大丈夫・・・よね?)

 クリスを傷つけてしまったか不安だったけれど、クリスはいつもと変わらない表情と声でいろんな話をその後もしてくれた。私も変わらないようにクリスと話をしていたけれど、何度かクリスの唇に視線が奪われていた。

(でも・・・)

 本音を言えば、私もクリスとキスをしたかったし、再び彼の腕に包まれて。胸によりかかりながら身を預けたかったけれど、そうしてしまえば彼への想いが高まり過ぎて、自分を抑えることができる気がしなくて、怖かった。

(うん、そうよ。だって、今は・・・初めてのキスを大事にしたいもの)

 日はどんどん沈んでいき、今日という日が終わろうとしているけれど、今日は本当に私にとって、とても素敵な1日になったとこの時は思っていた。
 
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