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「おおっ、彼の者こそ、この世界を救う勇者よっ」

 紫のローブの被っていたフードを脱ぐと、頭の左右の上部に黒髪で結った御団子が頭についているツイン御団子ヘアー現れて、目が奪われる。そんな僕の視線に気づいた彼女、占い師ミーシャ。僕も彼女が僕を見ていることに気が付いて、彼女の顔を見る。

 白いきめ細かい肌。朱色の唇と、目元も朱くメイクをしていて一重の瞳がとても神秘的で、魅力的だった。周りが歓喜の声でざわめいていたけれど、僕と彼女にしかいないんじゃないかというくらい僕は彼女フォーカスを当てていて、二人で見つめ合った。

 前世でも・・・まぁ・・・若い頃は恋もしてきた僕。っていっても、片思いばかりだったし、社畜になってからは恋をする余裕は僕にも無かったし、下のアンテナも朝ですら起き上がることも無くなっていた僕。そんな僕をこんなきれいな女性が興味を持って真っすぐ見つめてくれている。昔の僕ならドギマギして、恥ずかしくて目を逸らしていたかもしれないけれど、それ以上に嬉しかった。

 どんなに頑張ってもオンボロ会社の歯車として、高速回転をしてきた僕。僕の歯車の歯はしっかりしていたとしても、受け皿の歯車の歯が歯抜けだから、僕のエネルギーを全て活かすこともなく、それでいてもっと回転することを強要されて・・・そして、お金を支払うことをケチり、評価されることはなく、結果が出ようが出まいが、まだまだと言われて卑下され、更なる要求を与えられた。

 会社は守銭奴だから、油断すれば金を要求されると思ったのかもしれない。僕だってお金は欲しかった。でも、頑張ってきた僕はやりがいぐらいは欲しかった。『頑張ったな』とか、『君のおかげだ』とか、『ありがとう』って言ってほしかった。

 でも、組織はそれすらしてくれなかった。上司は自分のポジションを守るために、僕の成果も自分の成果に、その上司の上司も同じように・・・。そして、責任は下へ下へ。取引先でトラブルが合った時、担当の児島さんと一緒に来た佐々木課長が「上司や管理職は責任を取るのが仕事」なんて言っていたのがとても羨ましく見えた。

「・・・ゴ・・・ユーゴっ」

 僕は感傷に浸っていたけれど、国王の声で我に返る。すると、国王は「ははーん」みたいな感じでにやりとして、ミーシャを見る。なんか、勘違いしているようだ。

「ユーゴ・・・いいや、勇者ユーゴ様。この世界を、そして我らを魔王軍から救ってくださいませ」

 国王が会釈程度に頭を下げると、王族や貴族、大臣や兵士にメイドや執事などが歓喜に湧く。

「いや・・・、えーっと・・・」

 ここまで、注目を浴びたことがない僕は頭を掻きながら、なんて言えばいいのかわからずに困惑してたけれど、悪い気はしなかった。
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