1 / 12
1
しおりを挟む
「ごちそうさま」
間宮楓、17歳はそう言って、席を立ち、階段を登っていく。
「なぁっ、楓・・・」
自分の部屋まであと5歩くらいの廊下で振り返ると、気まずそうな顔をした兄、間宮慎一がいた。
(8歳も年上なのに・・・)
「だっさっ」
気まずいなら話かけなければいい。
そんなこともわからない兄のことが腹が立った楓は前を向いて、自分の部屋へと入って行ってしまった。
そんな姿をただただ見送った慎一は仕方なく、リビングへと戻っていく。
「どう?伝えられた?」
母親が食卓を拭きながら、慎一に尋ねる。
「伝えられなかった」
どかっと、ソファーに座って頭を抱える慎一を見て、母親はクスクスっと笑う。
「大丈夫よ、ちゃんと伝えればわかってくれるわ」
半信半疑の慎一は、ため息をつきながら天井を見ながら、8歳下の妹の楓と話した内容を思い出すが、「邪魔」「死ね」「消えろ」などの単語のみで会話もほぼ成立しておらず、しかも暴言しかなかったことを思い出して、再び下を向いて肩を落とした。
「なぁ、母さんから言ってくれよ」
体勢を直して、前のめりになりながら、慎一が洗い物を始める母親の背中を見る。
「だーめ。もう一人前でしょ。それに、養う家族もできたんだから」
母親は洗い物をしながら、顔だけ少し振り向きながらそう慎一に伝える。すると、慎一は自分の左手の甲や指を見ながら、
「まぁ・・・そうだけど・・・」
と答えた。その歯切れの悪さに母親が再び笑う。
「でも、あいつ。俺のことなんて聞きたくないんじゃないかな?」
「じゃあ、結婚式に呼ばないつもり?」
「いや・・・それはないけど・・・さっ」
「でしょ。早苗さんだって、妹ができるって喜んでいたじゃない。あんたが、ちゃんと橋渡ししないと」
慎一はスマホをポケットから取り出す。待ち受け画面は自分と婚約者の一ノ瀬早苗が映っており、二人とも笑顔で慎一が早苗の肩に手を回して立っている写真だった。この写真は旅行先の恋の岬で、プロポーズした後撮った写真で、慎一にとって大切な思い出だ。慎一は早苗の笑顔を見て元気をもらいつつ、プロポーズした緊張に比べれば、妹の楓に結婚報告する方が簡単だと自分に言い聞かせる。
「よしっ」
「頑張って」
「明日、言うわ」
そう言って、テーブルにあったリモコンを手に取ってテレビを見始める慎一。テレビの音が聞こえて少し呆れながら、母親は洗い物を続ける。
そんな二人のやり取りなど知らない楓は音楽を聴きながら、宿題をやるために開いたノートに少しだけ問題を解いたのち、飽きてしまって落書きをしていた。
「きゃわ・・・いいなぁ・・・っ」
ひたすら枠外に自分がかわいいと思うハートを描いて描いて描いて・・・。ハートで埋め尽くされたノートの枠外を見て、満足そうにそう呟いた。
間宮楓、17歳はそう言って、席を立ち、階段を登っていく。
「なぁっ、楓・・・」
自分の部屋まであと5歩くらいの廊下で振り返ると、気まずそうな顔をした兄、間宮慎一がいた。
(8歳も年上なのに・・・)
「だっさっ」
気まずいなら話かけなければいい。
そんなこともわからない兄のことが腹が立った楓は前を向いて、自分の部屋へと入って行ってしまった。
そんな姿をただただ見送った慎一は仕方なく、リビングへと戻っていく。
「どう?伝えられた?」
母親が食卓を拭きながら、慎一に尋ねる。
「伝えられなかった」
どかっと、ソファーに座って頭を抱える慎一を見て、母親はクスクスっと笑う。
「大丈夫よ、ちゃんと伝えればわかってくれるわ」
半信半疑の慎一は、ため息をつきながら天井を見ながら、8歳下の妹の楓と話した内容を思い出すが、「邪魔」「死ね」「消えろ」などの単語のみで会話もほぼ成立しておらず、しかも暴言しかなかったことを思い出して、再び下を向いて肩を落とした。
「なぁ、母さんから言ってくれよ」
体勢を直して、前のめりになりながら、慎一が洗い物を始める母親の背中を見る。
「だーめ。もう一人前でしょ。それに、養う家族もできたんだから」
母親は洗い物をしながら、顔だけ少し振り向きながらそう慎一に伝える。すると、慎一は自分の左手の甲や指を見ながら、
「まぁ・・・そうだけど・・・」
と答えた。その歯切れの悪さに母親が再び笑う。
「でも、あいつ。俺のことなんて聞きたくないんじゃないかな?」
「じゃあ、結婚式に呼ばないつもり?」
「いや・・・それはないけど・・・さっ」
「でしょ。早苗さんだって、妹ができるって喜んでいたじゃない。あんたが、ちゃんと橋渡ししないと」
慎一はスマホをポケットから取り出す。待ち受け画面は自分と婚約者の一ノ瀬早苗が映っており、二人とも笑顔で慎一が早苗の肩に手を回して立っている写真だった。この写真は旅行先の恋の岬で、プロポーズした後撮った写真で、慎一にとって大切な思い出だ。慎一は早苗の笑顔を見て元気をもらいつつ、プロポーズした緊張に比べれば、妹の楓に結婚報告する方が簡単だと自分に言い聞かせる。
「よしっ」
「頑張って」
「明日、言うわ」
そう言って、テーブルにあったリモコンを手に取ってテレビを見始める慎一。テレビの音が聞こえて少し呆れながら、母親は洗い物を続ける。
そんな二人のやり取りなど知らない楓は音楽を聴きながら、宿題をやるために開いたノートに少しだけ問題を解いたのち、飽きてしまって落書きをしていた。
「きゃわ・・・いいなぁ・・・っ」
ひたすら枠外に自分がかわいいと思うハートを描いて描いて描いて・・・。ハートで埋め尽くされたノートの枠外を見て、満足そうにそう呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ゆるぎとはな。
海月くらげ
恋愛
「せんせえ、もうシよ……?」
高校生の花奈と、聖職者であり高校教師の油留木。
普段穏やかで生徒からも人気のある油留木先生。
そんな男が花奈にだけ見せる表情がある。
教師×生徒 禁断TL小説
田舎の幼馴染に囲い込まれた
兎角
恋愛
25.10/21 殴り書きの続き更新
都会に飛び出した田舎娘が渋々帰郷した田舎のムチムチ幼馴染に囲い込まれてズブズブになる予定 ※殴り書きなので改行などない状態です…そのうち直します。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる