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「・・・ナダルさん、まずはお友達からではいかがでしょうか?」

 ナダルとの出会い、ナダルと関係も大切にしたい。だからこそ、順序を守って1つずつ思い出を作っていきたいと思った。

「僕は・・・本気なんです。ちゃんとナナリー様には異性として僕を見て欲しい。必ず、僕が幸せにします」

 でも、ナダルはブレなかった。
 再び熱い視線を私に向けてくる。

「でも・・・お父様が・・・お許しならないと・・・」

 大事にしたいからこそ、みんな、特に家族には認めて祝福してほしい。

「では、ナナリー様のお父様を説得できれば、結婚していただけますね?」

 喜んだ顔をするナダル。
 でも、それは早計な気がして、ナダルを宥めようとした。
―――その時

「ナナリー」

 私は、また心の中のレオンが邪魔してきたのかと思った。でも、違った。
 少し、怒った顔したレオンが目の前に現れたのだ。

「なんで・・・」

 いつも、ちょっとくらいの喧嘩なら追ってこないレオン。なのに、今日はなんで追ってくるのか。
 私はレオンが覚えているかもわからないのに、婚約破棄を言い放ったことを思い出して、とても恥ずかしくなって、とても居心地が悪かった。

「キミかい?」

 私の態度を見て、ナダルが立ち上る。

「お前のような商人にキミ呼ばわりされる筋合いはない」

 ナダルの方が商人という仕事柄か逞しく大きかったけれど、レオンは毅然としてナダルにガンを飛ばした。こんなに怒っているレオンを見るのは・・・初めてかもしれない。

「そうですか・・・では、お引き取りを。ナナリー様はアナタがいると嫌なようです」

 そう言って、手で喫茶店の出入り口を示すナダル。

「だから、商人。俺に指図をするな。ほらっ」

 そう言って、レオンは貨幣が入っているであろう袋を机の上に投げ捨てた。かなりの額が入っているであろうその袋は机に着地した瞬間いい音を鳴らした。

「それを持って出て行け。俺はナナリーと話をしなければならないんだ」

 袋を見つめていたナダルに再び言い放つレオン。

(こんなの・・・)

「レオン。止めてよ。ナダルさんに失礼よ」

 身分や資産でマウントを取るなんてレオンらしくない。

 私がそう言うと、レオンは私を睨んできた。レオンに睨まれることは多々あったけれど、今日の睨みは怖くて、悲しかった。目を逸らした方が負け、そんな風に見つめ合っていた私とレオンだったけれど、今日のレオンの目はやっぱり怖い。私がレオンの目力に負けそうになっていると、

「いらないです」

 と言って、ナダルが私とレオンの間に入って来て、守ってくれた。

「僕もナナリー様に大事な話、明るい未来の話をしているのです。暗い過去をほじくり返そうとしている人はお願いですから、帰ってください」

 立場が弱いはずなのに、必死になって守ってくれるナダルの逞しい背中がとてもカッコよく見えた。
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