回復最強の加護を捨てるまで

西東友一

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「やばいっ、逃げるぞっ!!」

 眼前には火の王とも名高いサラマンダーが元気に口に火を溜めている。小一時間戦ったのに、その身体は無傷であり、土の汚れすらほとんどない。この危機的状況でリーダーである剣士のテッドはいの一番に逃げて、背中越しに私たちに言い残したのだ。

(いやいや、だから言ったのに・・・)

 圧倒的戦力差があることを私は再三忠告した。しかし、このアホテッドは「必ずみんなを俺が守る」と言ってみんなを説得した。雄弁な無敗の剣士と普段から大人しい回復師の私。みんなリーダーであるテッドに合わせてしまうことは、無理ないと思いつつ・・・。

(あんたが、一番初めに逃げたら、陣形も崩れるし、魔防の加護をあなたにかけた意味がないじゃないのっ)

 うちのパーティーの編成はリーダー兼剣士のテッドと剣士のギース、魔法師のレイラと、回復師のこの私の4人だ。前衛に剣士の二人を置き、中段にレイラ、後方の私という布陣を轢いて、前衛の二人が切り込み、レイラがその二人の補助をしたり自ら魔法攻撃を放ち、私が加護によって、みんなのステータスを上げたり、回復したり、敷陣で守ったりしている。

 身体を張っているということで、装備だってテッドやギースが優先して購入していて、レイラも後回しがちだけれど、二人に媚びて、なんだかんだそれなりの装備をしている。だけど私なんか未だに初心者の杖と、ただの服、そして、逃げるにしてもぼろい靴を未だに履き続けている。

「スライドっ」

 レイラも逃げ遅れていたけれど、得意の魔法で滑りながら二人の前へ出る。

「あっ、ずりぃ」

「ごめんなさいねっ」

 楽しそうに逃げるパーティーたち。

「ちょっと、私にも魔法を・・・」

「何をやっているんだ、ルーシーっ!!もしかして・・・俺たちを庇うために・・・しししっ」

「お前のことは忘れないぜっ!アディオ!!」

「ごめんなさいね、ルーシー。もう少しであなたの手を取れたのに・・・ふふふっ」

 笑いながら逃げる3人。私の使う加護は神にから授かるもので、強大な力の代わりに制約も多く、修道女としての神に仕えなければ発動させることができず、無欲・清心・貞潔などを保っていないと使えない。だから今回の逃げるのに適した加護を自分に与えることもできない。

(そろそろ・・・限界かな、これは・・・)


「タイムヒールッ」

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