回復最強の加護を捨てるまで

西東友一

文字の大きさ
3 / 7

しおりを挟む
「ということで、サラマンダーを討てと神が言っている。俺たちはサラマンダーを討伐に行くぞっ!!!」

 他の冒険者たちにも聞こえるようにテッドがクエストの神を掲げると、他の冒険者たちがざわつく。羨望の眼差しで見る者、嫉妬する者、驚く者、半信半疑の者、どのリアクションもテッド達の自尊心を満たした。

「おい、テッド。サラマンダーは止めとけ・・・まだ、お前らには早い・・・っ。仲間を失うぞ?」

 顔の片目が隠れるようにターバンをした白髪のハンマー使い。ジェコブお爺ちゃんが私たちに近づいてくる。その隠されたターバンの下には、全盛期にサラマンダーの子どもと戦った時に負った火傷でただれているのをみんな知っている。

「大丈夫だ、俺がみんなを守る」

「ヒューッ」

 ギースが口笛を鳴らす。
 すると、多くの夢見る若者たちがテッドの格好をつけた言葉に興奮して騒ぎ出す。困惑するジェコブお爺ちゃん。私もその言葉が上辺だけの薄っぺらい言葉であることを知っているので、ため息をつきたくなる。

「あの~」

 盛り上がっているのを承知で私は手を挙げる。

「はっ、なんだ?」

 睨む三人。
 私の発言権を認める気はないようだ。

「あの、サラマンダー退治は無理だと思います」

 空気が凍り、一気に重くなる。
 ジェコフお爺ちゃんが言った時よりもさらに雰囲気は悪くなった。というか比べるまでもなく、最悪ってやつに違いない。けれど、私はサラマンダーを目の当たりにした。サラマンダーを目の当たりにして生還できた人なんて、ジェコフお爺ちゃんくらいしか見たことないし、無傷の人となれば、大昔の勇者と呼ばれた人しかいないだろう。サラマンダーからしたら、蟻が一回り大きくなったくらいの差しかないと思った。

「じゃあ、お別れだ」

「えっ」

 私は三人の顔を見るが、みんなどことなく嬉しそうな顔をしていた。この人たちには話し合うとかそう言う価値観はないのだろうか。

「急に言われても・・・少しは話合・・・」

「急に言い出したのはお前の方だろう、ルーシー」

 テッドを庇うようにテッドの肩に手を置いたギースは馬鹿にしたように笑う。

「えー残念だけど、仕方ないようね。バイバイ、ルーシーちゃん」

 私の方が年上なのに、“ちゃん呼び”してくるレイラ。三人とも卑しいゴブリンのような笑い方をしていた。

「やっぱりさ、今度の回復師はスタイルいい女にしようぜ、テッド」
「ふっ」
「えーっ、ひどいーーーっ」
「いやいや、レイラはかわいい系だからさ。レイラが一番かわいいぜ」

 もう、私の次の回復師を集める話をしているテッド・・・というか、ギース。私はレイラに脅されていたのに加え、性格の悪いレイラと男たちが揉めるのも見ていられなかったから黙っていたけれど、レイラが魅了魔法をかけたり、料理も嫌いな癖にたまに無理やり作るのは、媚薬を入れていたからだ。

 薬で繋がった関係を辞めさせようともした世界線もあったけれど、ギスギスして皆不幸になっていたのを思い出して、少し気持ち悪くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

二本のヤツデの求める物

あんど もあ
ファンタジー
夫の父の病が重篤と聞き、領地から王都の伯爵邸にやって来たナタリーと夫と娘のクリスティナ。クリスティナは屋敷の玄関の両脇に植えられた二本の大きなヤツデが気に入ったようだ。 新たな生活を始めようとするナタリーたちだが、次々と不幸が襲いかかり……。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

処理中です...