文字サイズ
小
中
大
特大
26 / 28
26
「行ってくるよ」
「ええ、無事に帰ってくるのをお待ちしております」
再び、王を纏ったリチャードは朝から昼に差し掛かる頃、出陣しようとしていた。
私はそんなリチャードを見送る。
リチャードの顔からは暗さと迷いが無くなっていた。
エドワード軍は強かった。
しかし、利には理を。
そもそも、大義といえるような理由なく侵攻してきたエドワード軍。
エドワード軍に利が味方したように、ザクセンブルク公国には理が味方した。
エドワード軍の理由なき侵攻を批難し、ザクセンブルク公国に恩義があった周辺諸国が旗を上げた。
それによって風向きが変わった。
・・・名目上はそうだったし、戦に疎い私はそれを当時は信じていたけれど、後にそれも利も絡んでいたことを私は大臣に教えられた。その大臣の考えも私は理解したけれど、やっぱり人が動くのは最後は心、ザクセンブルク前国王やリチャードの今までの善い行いがあったからこそ、みんなが協力してくれたんだと私は感じた。
盛り返したザクセンブルク公国率いるリチャード軍は盛り返し、エドワード軍を押し返し始めた。
旗色が悪いと感じたエドワード軍を陰で支援していた国々も援助をすぐさま止めると、リチャード軍が優勢になり、エドワード軍はすぐさま逃げ帰った。
追撃すればエドワード軍を殲滅できたかもしれないけれど、リチャードはそんな成果よりも兵士たちの命を尊んだ。禍根を残すことだと、臣下や協力国の王たちにも言われたけれど、リチャードは首を縦に振らなかった。優しいリチャードらしい決断だと思って、発言権がない私は陰ながらそれを応援した。
リチャードは戦が終わり、被害の復興に努めた。
経済大国として多くの蓄えがあったといっても、軍事へ資金も食料も使ってかなり寂しくなった蓄えだったけれど、リチャードは被害地へ支援を行った。嬉しそうに感謝している国民の顔がとても印象的だったのを私は覚えている。
ザクセンブルク公国が善政に努めている頃、私の故郷ワルタイト王国は再び軍事に力を注ぐため、多額の税をかけ民に圧政を強いている知らせを耳にした。戦でも多くの若者の命を落とし、その後も一息つく間もなく、過酷な労働を強いられている。はるか遠くにいる友人たちのことを想うと、私は心配で泣いてしまうこともあったけれど、リチャードは優しく慰めてくれた。
闘いは何も私たちの国だけで起きているわけではない。
戦乱の世。
やられっぱなしでいれば、なめられる・・・とまではいかなくても、他国へのけん制や威信の意味でもすべき世の中。
リチャードもワルタイトの王国の民のため、理由もなく侵攻を受け奪われた多くのザクセンブルク公国の民のため、そしてお父様のために挙兵したい気持ちがありながらも、彼の優しさがそれを阻んだ。
賛否があったけれど、それがザクセンブルク公国のリチャード王なのだ。
「ええ、無事に帰ってくるのをお待ちしております」
再び、王を纏ったリチャードは朝から昼に差し掛かる頃、出陣しようとしていた。
私はそんなリチャードを見送る。
リチャードの顔からは暗さと迷いが無くなっていた。
エドワード軍は強かった。
しかし、利には理を。
そもそも、大義といえるような理由なく侵攻してきたエドワード軍。
エドワード軍に利が味方したように、ザクセンブルク公国には理が味方した。
エドワード軍の理由なき侵攻を批難し、ザクセンブルク公国に恩義があった周辺諸国が旗を上げた。
それによって風向きが変わった。
・・・名目上はそうだったし、戦に疎い私はそれを当時は信じていたけれど、後にそれも利も絡んでいたことを私は大臣に教えられた。その大臣の考えも私は理解したけれど、やっぱり人が動くのは最後は心、ザクセンブルク前国王やリチャードの今までの善い行いがあったからこそ、みんなが協力してくれたんだと私は感じた。
盛り返したザクセンブルク公国率いるリチャード軍は盛り返し、エドワード軍を押し返し始めた。
旗色が悪いと感じたエドワード軍を陰で支援していた国々も援助をすぐさま止めると、リチャード軍が優勢になり、エドワード軍はすぐさま逃げ帰った。
追撃すればエドワード軍を殲滅できたかもしれないけれど、リチャードはそんな成果よりも兵士たちの命を尊んだ。禍根を残すことだと、臣下や協力国の王たちにも言われたけれど、リチャードは首を縦に振らなかった。優しいリチャードらしい決断だと思って、発言権がない私は陰ながらそれを応援した。
リチャードは戦が終わり、被害の復興に努めた。
経済大国として多くの蓄えがあったといっても、軍事へ資金も食料も使ってかなり寂しくなった蓄えだったけれど、リチャードは被害地へ支援を行った。嬉しそうに感謝している国民の顔がとても印象的だったのを私は覚えている。
ザクセンブルク公国が善政に努めている頃、私の故郷ワルタイト王国は再び軍事に力を注ぐため、多額の税をかけ民に圧政を強いている知らせを耳にした。戦でも多くの若者の命を落とし、その後も一息つく間もなく、過酷な労働を強いられている。はるか遠くにいる友人たちのことを想うと、私は心配で泣いてしまうこともあったけれど、リチャードは優しく慰めてくれた。
闘いは何も私たちの国だけで起きているわけではない。
戦乱の世。
やられっぱなしでいれば、なめられる・・・とまではいかなくても、他国へのけん制や威信の意味でもすべき世の中。
リチャードもワルタイトの王国の民のため、理由もなく侵攻を受け奪われた多くのザクセンブルク公国の民のため、そしてお父様のために挙兵したい気持ちがありながらも、彼の優しさがそれを阻んだ。
賛否があったけれど、それがザクセンブルク公国のリチャード王なのだ。
感想 29
あなたにおすすめの小説
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。
ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。
しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。
強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。
そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。
一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。
病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。
聖女だけど婚約破棄されたので、「ざまぁリスト」片手に隣国へ行きます
セレフィア王国の伯爵令嬢クラリスは、王太子との婚約を突然破棄され、社交界の嘲笑の的に。だが彼女は静かに微笑む――「ざまぁリスト、更新完了」。実は聖女の血を引くクラリスは、隣国の第二王子ユリウスに見出され、溺愛と共に新たな人生を歩み始める。
継母や義妹に家事を押し付けられていた灰被り令嬢は、嫁ぎ先では感謝されました
貧乏貴族ローウェル男爵家の娘キャロルは父親の継母エイダと、彼女が連れてきた連れ子のジェーン、使用人のハンナに嫌がらせされ、仕事を押し付けられる日々を送っていた。
そんなある日、キャロルはローウェル家よりもさらに貧乏と噂のアーノルド家に嫁に出されてしまう。
しかし婚約相手のブラッドは家は貧しいものの、優しい性格で才気に溢れていた。
また、アーノルド家の人々は家事万能で文句ひとつ言わずに家事を手伝うキャロルに感謝するのだった。
一方、キャロルがいなくなった後のローウェル家は家事が終わらずに滅茶苦茶になっていくのであった。
※4/20 完結していたのに完結をつけ忘れてましたので完結にしました。
私を追い出したらこの店は潰れますが、本当に良いんですね?
私を追い出す? この店を取り仕切っているのは私ですが、私が居なくなったらこの店潰れますよ? 本気いや正気ですか? そうですか。それじゃあお望み通り出て行ってあげます。後で後悔しても知りませんよ?
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。