最優テイマーの手抜きライフ。悪役令嬢に転生しても、追放されても、私は辺境の地でこの魔物たちと仲良く暮らします。

４ 決裂

「うちのバカ娘が、大変申し訳ありませんでしたっ！！！」

　サクラ・ブレンダ・ウィリアムの父、ジェームズ・ガジェット・ウィリアムが何度も何度も王座の間で頭を下げる。サクラも父のそのへりくだった行為に見入ってしまったけれど、父のガジェットに睨まれえて、慌てて自分も頭を下げる。

「おい、ガジェット。それだけか？」

　アレキサンダー王子は足を組んで、肘掛けに肘をついてムスッとしている。顔色を伺うためにちらっと頭を上げたガジェットはその不機嫌そうな顔を見て、再び頭を下げて震えるガジェット。

「つまらないものですが・・・」

　ガジェットは自分の付き人から布に筒摘まれた物を渡されて、両手で大切そうに受け取って、アレキサンダー王子に一礼して、階段を登り、王子に近寄る。

「どうぞ・・・お納めください」

　布をめくると、ウィリアム家の家宝である首飾りだった。金のネックレスに小さな宝石が散りばめられて、真ん中には大きなピンクダイヤが君臨していた。
　それを見て、少しにやけるアレキサンダー王子。
　しかし、サクラと目が合うと、再び険しい顔をするアレキサンダー王子。

「本当につまらないものだなぁっ！！」

　その首飾りを払い飛ばすと、ガジェットが震える。

「申し訳ありませんっ！！」

　再び謝るガジェット。

「本当につまらないものだなぁ、ガジェット。お前の持参してきたあれも、お前の娘も、お前らの人生もっ！！」

　アレキサンダー王子はガジェットを蹴とばし、ガジェットは階段から転げ落ちる。

「お父様っ！！！」

　サクラは父親であるガジェットに近寄る。怯えていて身体が強張っているところに不意打ちで蹴とばされたガジェットは受け身を取ることもできず、身体がボロボロになっていた。

「なんだ？」

　睨むサクラ。転生した白川桜にとっては、君主制が当たり前という感覚はなく、目の前にいる男は憎たらしい悪人にしか見えなかった。そんなサクラを上から見下ろす返すアレキサンダー王子。彼は逆に君主制が生み出すヒエラルキーの最上部にいる自分に対して、そんな反抗的な態度をとる元婚約者を気に入るわけがなかった。

「ふっ・・・お前らから貴族の地位をはく奪することを宣言する！！」

　驚くウィリアム親子。

「そ・・・それだけは・・・なにとぞ・・・」

　ボロボロになっていたガジェットがか細い声で懇願する。

「聞こえんぞ、ガジェット？」

　そんな二人の顔を見て、喜んで笑うアレキサンダー王子は悪人そのものだった。
　サクラは気持ちが追いついていなかったけれど、父であるガジェットが大切な人であることは十二分に感じた。

「アレキサンダー王子っ！！」

　サクラは父にあたるガジェットがこんなにも切ない顔をしているのを見て、何かをしなければならないと思った。