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 高級なレストラン。
 美味しい料理と、優秀なスタッフ。

 ベティの結婚報告を聞いてから数日経ち、さらに弱ったお父様を屋敷に残して、このような幸せに包まれているであろう場所に自分がいる。それが、少し後ろめたい。

「やはり、貴女は聡明で素敵な方だ」

 目の前で一緒に食事をするガルボは前回とは違って私のことを良く褒めてくれた。丁寧な相槌もしてくれたし、気遣いもとても良くしてくれた。悪いところは見当たらないし、きっと困った時も相談して解決していけて、暮らしも困らないだろう。

(あれっ・・・・・・ネガティブなことばかり考えているわ)

 美味しい料理や和やかな雰囲気なのに、気持ちが乗ってこない。
 でも、結婚とは恋じゃないはず。幸せな過程を築くことが大事なはずだ。

 昔読んだ絵本に出てくるような話はとても心がキラキラして、私もこんな素敵な恋をするんだ、と思っていた時期もあったけれど、今まで心がときめくのはお話の世界だけで、男性の誰かと出会って心がときめいたことはない。

(お父様・・・)

 お父様に残された時間は限られている。
 誰にも心がときめかない私はそういう人間なのだろう。

(私ももしかしたらベティと同じ・・・・・・。そうよね、姉妹だもの)

「ガルボ様」

「なんだい?」

「婚約の件、お受けしたいと思います」

 私もベティと同じで感情で結婚するのではなく、理性で結婚する人間なようだ。

 ニヤッ

 ん?

「嬉しいよ、必ずキミを幸せにしよう」

(一瞬・・・ガルボに嫌な感じを持ったけれど・・・・・・大丈夫よね?)

 そうして、私はガルボの婚約者になりました。



 その日の夜、さっそくお父様に報告に伺いました。
 私がお父様に婚約した旨を告げると、

「そうか・・・・・・」

 と言って、ニコッとしたお父様の笑顔は弱々しく、もう余命がわずかなことを悟りました。私は眠ってしまったお父様にお別れを告げ、部屋を後にしました。

「お姉様」

「あら、ベティ」

 廊下に出るとベティがいました。

「ギリギリ間に合ったわね」

「それはどういう…」

 私がベディに尋ねようとしましたが、ベディはそのまま行ってしまいました。
 その日を境にお父様は昏睡状態になり、翌日の夕方、命を引き取りました。

 私やベティ、そして婚約者であるガルボやモンテスキュー公爵、シャドーなどの使用人たちで葬儀を行いました。

「お父様っ・・・・・・ううううっ」

 お父様を棺に入れて埋葬する際、これで二度とお父様の顔が見れなくなると思うと、私は泣かずにはいられませんでした。そんな泣いている私をよそにベティ達はよからぬことを考えていたとは、私は気づきませんでした。
 


 
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