【2話完結】委員長が不登校になった日

西東友一

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む
 あれから、30年くらい経った。
 僕も大分おっさんになった。

 学生時代はクラスでは委員会とか部活動もヒラだったし、いろんな面倒くさいことを避けてきたし、周りからも期待されていなかった。

 けれど、社会ってのは年功序列で、それなりの歳になると、肩書きがないと恥ずかしいと言えば恥ずかしいと感じる僕も管理職なんかになった。

「でね、ワタリ君が『俺について来いよ』って言うシーン、きゅん過ぎて・・・」

「はい、磯野さん。今は勤務時間中ですからお喋りはその辺で、作業してください」

「は~い」

 気のない返事で女性職員がマウスを動かす。

(はぁ・・・)

 世の中じゃ、僕のことを口うるさい上司とかって言って、そういう番組に投稿されたりするんだろうな。
 ため息を抑えながら、トイレへと向かった。


「ふぅ~」
 
 トイレだけが唯一の癒しというのも・・・はてさて。
 清掃に予算が割けないと言って、管理職以外の職員で清掃をしてもらっているが、トイレは臭い。
 ただ、これも強くは言えない。

 昔は上司に「ちゃんとやれっ!!」と怒られたものだが、パワーハラスメントになるし、そもそも勤務時間外にやるようにと悪しき風習でなっている。
 だから、それについて文句をいう上司もいるだろうが、僕は黙認という形を取らせてもらっている。


「はぁ・・・」

 手洗いの鏡を見ると、疲れたおっさんがこちらを見ている。
 
(僕は管理職は不向きな性格なのかもしれないな…管理職は委員長みたいな人がいいんだろう)
 
 管理職になってから、ときどき委員長のことをよく思い出すようになった。

 あの当時は面倒くさい女の子だと思っていたけれど、文化祭があればクラスTシャツをデザインしたり、クラスの出し物を決めたり、予定表を作ってくれたり、合唱コンクールがあれば、いくつか選曲してきてくれたり、CDも実費で買ってきたりと色々やってくれていた。

 けれど、社会に出て会社に勤めて周りを見れば、そんな人間はごくわずか。

 昔よりは大分良くなったといわれても、昔の名残か男性は仕事、女性は家庭みたいなものは蔓延っているし、ニュースで出てくるようなバリバリ働きたいのに女性ということで仕事を貰えない、正当に評価してもらえない、と言ってくる女性はとりあえず僕の周りにはいない。

 みんな、仕事で責任を負いたくないといって、最低限。
 仕事を依頼すれば嫌な顔。
 
 『家庭があるので、帰ります』、『用事があるので帰ります』でなかなか協力してくれない。
 僕自身、そういった職員の気持ちが凄いわかるし、言うべきことは言うようにはしているけれど、自分で仕事を抱え込みがちだ。
 
 自席に戻ろうとすると、僕に気づいた女性職員の磯野さんたちが「やばい」という顔をしながら、作業を再開する。きっと、サボっていて、なんなら僕の悪口を言っていたんだろう。そのスリルみたいなのは、よく学生時代経験した。

(いい歳して学生か、お前らは)

 入った会社の社風が悪いのかもしれない。
 もしくは、学生時代、小中高とあったけれど、やる気がある女性に恵まれていただけかもしれない。

 ただ、社会に出て男女が逆転してしまった感覚だ。
 当然、昔だってそういう学業以外のことに真面目に取り組む男子もいたし、不真面目な女子もいたし、仕事に不真面目な男性職員もいれば、違う部署では真面目にやっている女性職員もいると聞く。

(いや、これは罰だ)

 これは学生時代、頑張る奴を馬鹿にして、無責任に暮らして来た報いだと悟った。

 おしまい。
 


しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

Kabochan
2021.08.04 Kabochan

ちょいちょい?!
ちょんちょんだろ

2021.08.10 西東友一

Kabochan様

お読みいただき誠にありがとうございます。
貴重なご意見ありがとうございました。

解除
歌川ピロシキ

イジメはやった奴は相手が引きこもりになろうが自殺しようがなんとも思わないか、むしろ武勇伝くらいにしか思わない。
この話の語り手もそんな感じ。我慢して真面目に対応しようとするだけ無駄。

解除

あなたにおすすめの小説

少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い…… 「昔話をしてあげるわ――」 フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?  ☆…☆…☆  ※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪  ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

魔女は小鳥を慈しむ

石河 翠
児童書・童話
母親に「あなたのことが大好きだよ」と言ってもらいたい少女は、森の魔女を訪ねます。 本当の気持ちを知るために、魔法をかけて欲しいと願ったからです。 当たり前の普通の幸せが欲しかったのなら、魔法なんて使うべきではなかったのに。 こちらの作品は、小説家になろうとエブリスタにも投稿しております。

イチの道楽

山碕田鶴
児童書・童話
山の奥深くに住む若者イチ。「この世を知りたい」という道楽的好奇心が、人と繋がり世界を広げていく、わらしべ長者的なお話です。

【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか
児童書・童話
私を作ってくれた 私らしくしてくれた あの優しい彼らを 忘れないためにこの作品を

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。