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後編
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あれから、30年くらい経った。
僕も大分おっさんになった。
学生時代はクラスでは委員会とか部活動もヒラだったし、いろんな面倒くさいことを避けてきたし、周りからも期待されていなかった。
けれど、社会ってのは年功序列で、それなりの歳になると、肩書きがないと恥ずかしいと言えば恥ずかしいと感じる僕も管理職なんかになった。
「でね、ワタリ君が『俺について来いよ』って言うシーン、きゅん過ぎて・・・」
「はい、磯野さん。今は勤務時間中ですからお喋りはその辺で、作業してください」
「は~い」
気のない返事で女性職員がマウスを動かす。
(はぁ・・・)
世の中じゃ、僕のことを口うるさい上司とかって言って、そういう番組に投稿されたりするんだろうな。
ため息を抑えながら、トイレへと向かった。
「ふぅ~」
トイレだけが唯一の癒しというのも・・・はてさて。
清掃に予算が割けないと言って、管理職以外の職員で清掃をしてもらっているが、トイレは臭い。
ただ、これも強くは言えない。
昔は上司に「ちゃんとやれっ!!」と怒られたものだが、パワーハラスメントになるし、そもそも勤務時間外にやるようにと悪しき風習でなっている。
だから、それについて文句をいう上司もいるだろうが、僕は黙認という形を取らせてもらっている。
「はぁ・・・」
手洗いの鏡を見ると、疲れたおっさんがこちらを見ている。
(僕は管理職は不向きな性格なのかもしれないな…管理職は委員長みたいな人がいいんだろう)
管理職になってから、ときどき委員長のことをよく思い出すようになった。
あの当時は面倒くさい女の子だと思っていたけれど、文化祭があればクラスTシャツをデザインしたり、クラスの出し物を決めたり、予定表を作ってくれたり、合唱コンクールがあれば、いくつか選曲してきてくれたり、CDも実費で買ってきたりと色々やってくれていた。
けれど、社会に出て会社に勤めて周りを見れば、そんな人間はごくわずか。
昔よりは大分良くなったといわれても、昔の名残か男性は仕事、女性は家庭みたいなものは蔓延っているし、ニュースで出てくるようなバリバリ働きたいのに女性ということで仕事を貰えない、正当に評価してもらえない、と言ってくる女性はとりあえず僕の周りにはいない。
みんな、仕事で責任を負いたくないといって、最低限。
仕事を依頼すれば嫌な顔。
『家庭があるので、帰ります』、『用事があるので帰ります』でなかなか協力してくれない。
僕自身、そういった職員の気持ちが凄いわかるし、言うべきことは言うようにはしているけれど、自分で仕事を抱え込みがちだ。
自席に戻ろうとすると、僕に気づいた女性職員の磯野さんたちが「やばい」という顔をしながら、作業を再開する。きっと、サボっていて、なんなら僕の悪口を言っていたんだろう。そのスリルみたいなのは、よく学生時代経験した。
(いい歳して学生か、お前らは)
入った会社の社風が悪いのかもしれない。
もしくは、学生時代、小中高とあったけれど、やる気がある女性に恵まれていただけかもしれない。
ただ、社会に出て男女が逆転してしまった感覚だ。
当然、昔だってそういう学業以外のことに真面目に取り組む男子もいたし、不真面目な女子もいたし、仕事に不真面目な男性職員もいれば、違う部署では真面目にやっている女性職員もいると聞く。
(いや、これは罰だ)
これは学生時代、頑張る奴を馬鹿にして、無責任に暮らして来た報いだと悟った。
おしまい。
僕も大分おっさんになった。
学生時代はクラスでは委員会とか部活動もヒラだったし、いろんな面倒くさいことを避けてきたし、周りからも期待されていなかった。
けれど、社会ってのは年功序列で、それなりの歳になると、肩書きがないと恥ずかしいと言えば恥ずかしいと感じる僕も管理職なんかになった。
「でね、ワタリ君が『俺について来いよ』って言うシーン、きゅん過ぎて・・・」
「はい、磯野さん。今は勤務時間中ですからお喋りはその辺で、作業してください」
「は~い」
気のない返事で女性職員がマウスを動かす。
(はぁ・・・)
世の中じゃ、僕のことを口うるさい上司とかって言って、そういう番組に投稿されたりするんだろうな。
ため息を抑えながら、トイレへと向かった。
「ふぅ~」
トイレだけが唯一の癒しというのも・・・はてさて。
清掃に予算が割けないと言って、管理職以外の職員で清掃をしてもらっているが、トイレは臭い。
ただ、これも強くは言えない。
昔は上司に「ちゃんとやれっ!!」と怒られたものだが、パワーハラスメントになるし、そもそも勤務時間外にやるようにと悪しき風習でなっている。
だから、それについて文句をいう上司もいるだろうが、僕は黙認という形を取らせてもらっている。
「はぁ・・・」
手洗いの鏡を見ると、疲れたおっさんがこちらを見ている。
(僕は管理職は不向きな性格なのかもしれないな…管理職は委員長みたいな人がいいんだろう)
管理職になってから、ときどき委員長のことをよく思い出すようになった。
あの当時は面倒くさい女の子だと思っていたけれど、文化祭があればクラスTシャツをデザインしたり、クラスの出し物を決めたり、予定表を作ってくれたり、合唱コンクールがあれば、いくつか選曲してきてくれたり、CDも実費で買ってきたりと色々やってくれていた。
けれど、社会に出て会社に勤めて周りを見れば、そんな人間はごくわずか。
昔よりは大分良くなったといわれても、昔の名残か男性は仕事、女性は家庭みたいなものは蔓延っているし、ニュースで出てくるようなバリバリ働きたいのに女性ということで仕事を貰えない、正当に評価してもらえない、と言ってくる女性はとりあえず僕の周りにはいない。
みんな、仕事で責任を負いたくないといって、最低限。
仕事を依頼すれば嫌な顔。
『家庭があるので、帰ります』、『用事があるので帰ります』でなかなか協力してくれない。
僕自身、そういった職員の気持ちが凄いわかるし、言うべきことは言うようにはしているけれど、自分で仕事を抱え込みがちだ。
自席に戻ろうとすると、僕に気づいた女性職員の磯野さんたちが「やばい」という顔をしながら、作業を再開する。きっと、サボっていて、なんなら僕の悪口を言っていたんだろう。そのスリルみたいなのは、よく学生時代経験した。
(いい歳して学生か、お前らは)
入った会社の社風が悪いのかもしれない。
もしくは、学生時代、小中高とあったけれど、やる気がある女性に恵まれていただけかもしれない。
ただ、社会に出て男女が逆転してしまった感覚だ。
当然、昔だってそういう学業以外のことに真面目に取り組む男子もいたし、不真面目な女子もいたし、仕事に不真面目な男性職員もいれば、違う部署では真面目にやっている女性職員もいると聞く。
(いや、これは罰だ)
これは学生時代、頑張る奴を馬鹿にして、無責任に暮らして来た報いだと悟った。
おしまい。
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お読みいただき誠にありがとうございます。
貴重なご意見ありがとうございました。
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