料理が下手だから婚約破棄ですか…。じゃあ、慰謝料で美味しい物でも食べに行こうと思ったら…そうなっちゃいますか(笑)

西東友一

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 外は暗くなっており、金星はもう見えなくなっていたし、都会の町の光で見える星は、月ぐらいしか見えない。

「すいません。お待たせいたしました」

 声の方を見ると、ミナトさんがやって来た。

(うわぁ……っ)

 ミナトさんの私服を初めて見たけれど、オシャレなブランドの服だと思うけれど、マネキンよりも服を着こなしている。日本人離れした足の長さだ。もしかしたら、オーダーメイドなのだろうか。

「あれっ、片づけとか、ミーティングみたいなものがあるんじゃないんですか?」

「あぁ、気遣ってくれてありがとう。エンドウ……さっき、僕らを怒ったスー・シェフが待たせてるなら早く行けっていってくれてさ」

 にこっと、ミナトが笑うと私も思い出して、笑ってしまう。
 共犯者…って、犯罪じゃないけれど、一緒に怒られた連帯感は絆と言うには大層過ぎるかもしれない。

「えーっと、単刀直入に話をしていいかな?」

「はい」

 ミナトさんが真面目な口調、どちらかと言うと、緊張した感じで話しかけてきたので、私も身なりを整えて返事をする。

「……」

「……」

 ミナトさんは緊張しているのか、なにも言ってくれない。
 私はミナトさんの顔を見る。
 整った顔。鼻筋は通っていて、まつげが長い。
 料理人として、清潔感があって素敵だ。

 私が見定めるような目でしまったせいか、ミナトさんは私と目があると、ちょっと困った顔をしていた。

「あのですね……っ」

「…はい」

 あんまり、急かさないように私も返事する。

「連絡先を交換してくれませんかっ」

「は…い……?」

 それぐらいであれば、全然いい。

「本当ですかっ?」

 嬉しそうな顔をして、私と目が合うとはにかんでくれたミナトさん。

「はい、喜んで」

「じゃあ……」

 それから私たちはスマホのSNSを交換し合った。
 ミナトさんが純粋に喜んでいるのを見て、青春の日々を思い出してしまう。

(こんな恋も……)

 ピロンッ

 ピロンッ

「あっ」

『ミナトくん、今度遊びに行こうよ♡』

 スタンプ。

(ふーん…アンナさんか)

 別に見たかったわけではないけれど、女性の名前を見てしまって、浮ついた気持ちが炎だとすれば、水をかけられて鎮火された気分だ。

「あっ、違うよ。アンナはただの友達で、違うから、本当にっ」

 目は口程に物を言う、というやつだろうか。
 私はちょっと目つきが悪くなっていたようだ。

(他の女の影がある男は絶対ヤダ)

 カケルのことがあったし、心を100%許せる人がいい。
 例えるなら…あの牛肉ちゃんのような…優しく私を包み込んでくれるような。

(いけない、いけない。ミナトさんと結婚したら毎日食べられるんじゃないかとか思っちゃった)

 一瞬、ミナトさんの顔が先ほどの肉料理に見えてしまった。
 けれど、カケル同様、本気の料理をしている人はきっと時間をかけられない料理に対して、口うるさいに違いない。だって、ミナトさんは………

 カケルの師匠なんだから。




 

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