料理が下手だから婚約破棄ですか…。じゃあ、慰謝料で美味しい物でも食べに行こうと思ったら…そうなっちゃいますか(笑)

西東友一

文字の大きさ
15 / 17

15

しおりを挟む
 外は暗くなっており、金星はもう見えなくなっていたし、都会の町の光で見える星は、月ぐらいしか見えない。

「すいません。お待たせいたしました」

 声の方を見ると、ミナトさんがやって来た。

(うわぁ……っ)

 ミナトさんの私服を初めて見たけれど、オシャレなブランドの服だと思うけれど、マネキンよりも服を着こなしている。日本人離れした足の長さだ。もしかしたら、オーダーメイドなのだろうか。

「あれっ、片づけとか、ミーティングみたいなものがあるんじゃないんですか?」

「あぁ、気遣ってくれてありがとう。エンドウ……さっき、僕らを怒ったスー・シェフが待たせてるなら早く行けっていってくれてさ」

 にこっと、ミナトが笑うと私も思い出して、笑ってしまう。
 共犯者…って、犯罪じゃないけれど、一緒に怒られた連帯感は絆と言うには大層過ぎるかもしれない。

「えーっと、単刀直入に話をしていいかな?」

「はい」

 ミナトさんが真面目な口調、どちらかと言うと、緊張した感じで話しかけてきたので、私も身なりを整えて返事をする。

「……」

「……」

 ミナトさんは緊張しているのか、なにも言ってくれない。
 私はミナトさんの顔を見る。
 整った顔。鼻筋は通っていて、まつげが長い。
 料理人として、清潔感があって素敵だ。

 私が見定めるような目でしまったせいか、ミナトさんは私と目があると、ちょっと困った顔をしていた。

「あのですね……っ」

「…はい」

 あんまり、急かさないように私も返事する。

「連絡先を交換してくれませんかっ」

「は…い……?」

 それぐらいであれば、全然いい。

「本当ですかっ?」

 嬉しそうな顔をして、私と目が合うとはにかんでくれたミナトさん。

「はい、喜んで」

「じゃあ……」

 それから私たちはスマホのSNSを交換し合った。
 ミナトさんが純粋に喜んでいるのを見て、青春の日々を思い出してしまう。

(こんな恋も……)

 ピロンッ

 ピロンッ

「あっ」

『ミナトくん、今度遊びに行こうよ♡』

 スタンプ。

(ふーん…アンナさんか)

 別に見たかったわけではないけれど、女性の名前を見てしまって、浮ついた気持ちが炎だとすれば、水をかけられて鎮火された気分だ。

「あっ、違うよ。アンナはただの友達で、違うから、本当にっ」

 目は口程に物を言う、というやつだろうか。
 私はちょっと目つきが悪くなっていたようだ。

(他の女の影がある男は絶対ヤダ)

 カケルのことがあったし、心を100%許せる人がいい。
 例えるなら…あの牛肉ちゃんのような…優しく私を包み込んでくれるような。

(いけない、いけない。ミナトさんと結婚したら毎日食べられるんじゃないかとか思っちゃった)

 一瞬、ミナトさんの顔が先ほどの肉料理に見えてしまった。
 けれど、カケル同様、本気の料理をしている人はきっと時間をかけられない料理に対して、口うるさいに違いない。だって、ミナトさんは………

 カケルの師匠なんだから。




 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

処理中です...