料理が下手だから婚約破棄ですか…。じゃあ、慰謝料で美味しい物でも食べに行こうと思ったら…そうなっちゃいますか(笑)

西東友一

文字の大きさ
16 / 17

16

しおりを挟む
「あっ、そうだ。僕、車で来ているから、送るよ…あれっ」

 ジト目で私はミナトさんを見る。
 いや、別に私が恋愛脳なのがいけないのかもしれない。
 とは言え、電話をかけたら、名前を当てられて、嬉しそうに店前でお出迎えしてくれて、料理もご馳走してくれて、連絡先を交換してほしいと言われれば、ちょっとそう言う目で見られているのではないかと思うのも仕方ないじゃないかと思う。

「いいです。用事は済んだのであればこれで…」

「あの、好きですっ!!付き合ってくださいっ!!」

 ミナトさんは顔を赤らめながら、急に告白してきた。
 無防備だった私のハートは傷だらけだったはず。
 だけど、いつの間にか綺麗になっていて、ときめいてしまう。
 
 もう、アオハルなんて言葉のブームが去ったように、私たちも青春をするような歳は去った。
 こんな風に白いお洋服を着飾って、化粧をして綺麗になり、あの頃のように馬鹿みたいに大声で笑って、友達同士で抱き合って泣いたり、飛び跳ねたりしている私じゃないし、周りもみんな肩書きを背負っている。

 ミナトさんの言い方はヘタレな言い方だったと思う。
 ギャップと言えば、聞こえはいいけれど、大人っぽい部分と、青年っぽい部分がちぐはぐしている。
 でも、その青年っぽさが、作りやすさよりも見栄えの良さを優先した一皿を創れるのかもしれない。

 私と言えば、OLだからだろうか。
 人付き合いがベースとして、社会生活を送って来たから、よくも悪くも性格が丸くなったし、効率重視で自由な発想なんて求められる機会はほとんどなく、子どもっぽさは心の奥へ奥へと手が届かない所へと隠されてしまった。

 でも、ミナトさんのだからこそかもしれない。
 ミナトさんのそのシンプルな言葉は社会人として身に着けた色々なものをすり抜けて、私の心に響いた。

「ごめんなさいっ!!」

 ただ、嬉しすぎて、これが嘘だったら私のハートは完全崩壊を起こす。私の心の中の老婆心のような年老いた私が「簡単に男を信用したらならん」と囁いてきて、私はそれに従った。

「あはは……っ。そうだよね……っ」

 ミナトさんは苦笑いをしていた。けれど、とても切ない顔をしていてその寂しさを私が埋めたいと思った。やはり、私はアプローチされるよりもそうやって、一歩引かれると追いたくなる傾向があるみたいだ。
 すると、心の中に若者の私が現れて、「彼にこの身を預けるんだっ」と叫んでいて、年老いた私が「一時の感情に身を任せてはいかん」と言い争っていた。

 私がそんな心の中の二人を「まぁまぁ」となだめると、二人は互いに向けていた目線を一緒に私に向けてきて、「「じゃあ、貴女はどうしたいんだ?」」と尋ねて来た。

 私は………
 

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

処理中です...