【完結】私聖女なんですけど?なんで、私に味方するのが魔王だけなんですか・・・。

西東友一

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「なんなんだ貴様は?」

 あぁ、悪い奴の定番のセリフいただきました。
 さぁ、王子様、見栄を張る絶好のチャンスですわ。

 ようやく目が慣れてきて、輪郭しか見えなかった黒い人型が見えてくる。
 黒い鎧、ユニコーンと同じ場所にあるいかついツノ。あれ、あれれれ・・・なんか鎧が禍々しいし、王子様というよりも・・・

「まっ、魔王だあああああっ!!!」

「きゃああああああっ」

 王族や貴族たちが腰を抜かしたり、教会の奥へと逃げ出す。
 私のロープを握っていた男や、先ほど私を殴ろうとしていた眉なしスキンヘッドのギンギラ目の男なんて一目散に逃げてた。あぁ、弱い相手にだけイキる系の男でしたか。

 私が冷めた目で後ろを見ていると、鎧がこすれる音が大分近づいていて、魔王が私の目の前に立っていた。
 うーん、これはヤバイ?
 だって、聖女と魔王って天敵だよね、きっと・・・。
 聖と魔なんて対義語で出てきそうだし。

 私は緊張する。
 漫画の読みすぎかもしれないけれど、魂を未来永劫苦痛の中に閉じ込めるなんて技をこの魔王が持っているかもしれないから、さっきの死刑なんてかわいいものだったかもしれない。

 オワタ・・・っ

「んっ」

 私は優しく抱えあげられた。
 防具は固かったけれど、それを加味して傷つかないように私を大事に抱えあげ、お姫様抱っこをされてしまった。

「聖女は、いただいていくぞっ!!!」

 目元しか見えなかったけれど、自信家そうなキリっとした目が顔を覗かせていた。
 魔王ももしかしたら、イケメンなのかもしれない。

「はーっはっはっはっはっ」

 誰もその暴君に対して、手出しはできなかった。
 もしかしたら、私が聖女として成長したら倒す必要があった男。
 教会を出た魔王は日の光に浴びて清々しい顔をしながら、

「滅びろっ」

 と唱えると、教会は瓦礫のように崩れ去った。
 私は怖くて、身体が硬直してしまう。

「怖いか?」

 魔王がふっと息をかけると、さるぐつわとロープが焼け落ちる。
 熱そうで怖いと思ったけれど、温度は無かったし、火傷もしなかった。

「やっぱり、かわいいなぁ、キミは。はーっはっはっはっ」

 魔王はからっとした声で笑った。

「私を・・・殺さないの?」

「なんで、殺す?」

 首を傾げる魔王。
 
 あぁ、そういうパターンか。
 とりあえず、魔王にさらわれて、王子様を待つパターンか。よくあるゲームのお決まりのパターンね。
 まぁ、もしかしたら、王子じゃなくてヒゲを生やしたダンディなおじ様かもしれないけれど、それはそれであり・・・かしら。

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