4 / 7
4
しおりを挟む
「なんなんだ貴様は?」
あぁ、悪い奴の定番のセリフいただきました。
さぁ、王子様、見栄を張る絶好のチャンスですわ。
ようやく目が慣れてきて、輪郭しか見えなかった黒い人型が見えてくる。
黒い鎧、ユニコーンと同じ場所にあるいかついツノ。あれ、あれれれ・・・なんか鎧が禍々しいし、王子様というよりも・・・
「まっ、魔王だあああああっ!!!」
「きゃああああああっ」
王族や貴族たちが腰を抜かしたり、教会の奥へと逃げ出す。
私のロープを握っていた男や、先ほど私を殴ろうとしていた眉なしスキンヘッドのギンギラ目の男なんて一目散に逃げてた。あぁ、弱い相手にだけイキる系の男でしたか。
私が冷めた目で後ろを見ていると、鎧がこすれる音が大分近づいていて、魔王が私の目の前に立っていた。
うーん、これはヤバイ?
だって、聖女と魔王って天敵だよね、きっと・・・。
聖と魔なんて対義語で出てきそうだし。
私は緊張する。
漫画の読みすぎかもしれないけれど、魂を未来永劫苦痛の中に閉じ込めるなんて技をこの魔王が持っているかもしれないから、さっきの死刑なんてかわいいものだったかもしれない。
オワタ・・・っ
「んっ」
私は優しく抱えあげられた。
防具は固かったけれど、それを加味して傷つかないように私を大事に抱えあげ、お姫様抱っこをされてしまった。
「聖女は、いただいていくぞっ!!!」
目元しか見えなかったけれど、自信家そうなキリっとした目が顔を覗かせていた。
魔王ももしかしたら、イケメンなのかもしれない。
「はーっはっはっはっはっ」
誰もその暴君に対して、手出しはできなかった。
もしかしたら、私が聖女として成長したら倒す必要があった男。
教会を出た魔王は日の光に浴びて清々しい顔をしながら、
「滅びろっ」
と唱えると、教会は瓦礫のように崩れ去った。
私は怖くて、身体が硬直してしまう。
「怖いか?」
魔王がふっと息をかけると、さるぐつわとロープが焼け落ちる。
熱そうで怖いと思ったけれど、温度は無かったし、火傷もしなかった。
「やっぱり、かわいいなぁ、キミは。はーっはっはっはっ」
魔王はからっとした声で笑った。
「私を・・・殺さないの?」
「なんで、殺す?」
首を傾げる魔王。
あぁ、そういうパターンか。
とりあえず、魔王にさらわれて、王子様を待つパターンか。よくあるゲームのお決まりのパターンね。
まぁ、もしかしたら、王子じゃなくてヒゲを生やしたダンディなおじ様かもしれないけれど、それはそれであり・・・かしら。
あぁ、悪い奴の定番のセリフいただきました。
さぁ、王子様、見栄を張る絶好のチャンスですわ。
ようやく目が慣れてきて、輪郭しか見えなかった黒い人型が見えてくる。
黒い鎧、ユニコーンと同じ場所にあるいかついツノ。あれ、あれれれ・・・なんか鎧が禍々しいし、王子様というよりも・・・
「まっ、魔王だあああああっ!!!」
「きゃああああああっ」
王族や貴族たちが腰を抜かしたり、教会の奥へと逃げ出す。
私のロープを握っていた男や、先ほど私を殴ろうとしていた眉なしスキンヘッドのギンギラ目の男なんて一目散に逃げてた。あぁ、弱い相手にだけイキる系の男でしたか。
私が冷めた目で後ろを見ていると、鎧がこすれる音が大分近づいていて、魔王が私の目の前に立っていた。
うーん、これはヤバイ?
だって、聖女と魔王って天敵だよね、きっと・・・。
聖と魔なんて対義語で出てきそうだし。
私は緊張する。
漫画の読みすぎかもしれないけれど、魂を未来永劫苦痛の中に閉じ込めるなんて技をこの魔王が持っているかもしれないから、さっきの死刑なんてかわいいものだったかもしれない。
オワタ・・・っ
「んっ」
私は優しく抱えあげられた。
防具は固かったけれど、それを加味して傷つかないように私を大事に抱えあげ、お姫様抱っこをされてしまった。
「聖女は、いただいていくぞっ!!!」
目元しか見えなかったけれど、自信家そうなキリっとした目が顔を覗かせていた。
魔王ももしかしたら、イケメンなのかもしれない。
「はーっはっはっはっはっ」
誰もその暴君に対して、手出しはできなかった。
もしかしたら、私が聖女として成長したら倒す必要があった男。
教会を出た魔王は日の光に浴びて清々しい顔をしながら、
「滅びろっ」
と唱えると、教会は瓦礫のように崩れ去った。
私は怖くて、身体が硬直してしまう。
「怖いか?」
魔王がふっと息をかけると、さるぐつわとロープが焼け落ちる。
熱そうで怖いと思ったけれど、温度は無かったし、火傷もしなかった。
「やっぱり、かわいいなぁ、キミは。はーっはっはっはっ」
魔王はからっとした声で笑った。
「私を・・・殺さないの?」
「なんで、殺す?」
首を傾げる魔王。
あぁ、そういうパターンか。
とりあえず、魔王にさらわれて、王子様を待つパターンか。よくあるゲームのお決まりのパターンね。
まぁ、もしかしたら、王子じゃなくてヒゲを生やしたダンディなおじ様かもしれないけれど、それはそれであり・・・かしら。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています
黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。
彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。
ようやく手に入れた穏やかな日々。
しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。
彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。
そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。
「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。
「いつものことだから、君のせいじゃないよ」
これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。
二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。
心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。
無能な悪役令嬢は静かに暮らしたいだけなのに、超有能な側近たちの勘違いで救国の聖女になってしまいました
黒崎隼人
ファンタジー
乙女ゲームの悪役令嬢イザベラに転生した私の夢は、破滅フラグを回避して「悠々自適なニート生活」を送ること!そのために王太子との婚約を破棄しようとしただけなのに…「疲れたわ」と呟けば政敵が消え、「甘いものが食べたい」と言えば新商品が国を潤し、「虫が嫌」と漏らせば魔物の巣が消滅!? 私は何もしていないのに、超有能な側近たちの暴走(という名の忠誠心)が止まらない!やめて!私は聖女でも策略家でもない、ただの無能な怠け者なのよ!本人の意思とは裏腹に、勘違いで国を救ってしまう悪役令嬢の、全力で何もしない救国ファンタジー、ここに開幕!
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる