【完結】私聖女なんですけど?なんで、私に味方するのが魔王だけなんですか・・・。

西東友一

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「王、大変ですっ!!!」

 魔王軍の幹部っぽいのが、魔王に対して報告をする。
 魔王って呼ばないんだと、感心しながら、私はお茶を飲みながら見ていた。

「なんだ、どうしたっ!!」

「西の国で、貴族たちがまた平民をイジメています」

「王、大変ですっ!!!東の国の王が、また重税をかけていますっ!!!」

「くっ・・・どいつもこいつも・・・人間どもめ・・・ぶっつぶしてくれるわ」

「「おお・・・っ、王自らの出陣だ。みんな、行くぞっ!!!」

 私を残してみんな出て行ってしまった。

「よっこいしょっと」

 私はお茶を飲みながら、魔王の玉座に座る。

「うーん、これはどういうことなのかしら?」

 私はお茶をテーブルに置いて考える。



―――あの日、私は魔王に連れ去られた。

 私を魔女として殺そうとしていた関係者を全て抹殺した。
 残された平民たちは不安がっていたけれど、食料もきちんと残してきたし、おそらく大丈夫だろう。
 魔王は、平民には全く関心を示さなかった、というよりは照れ臭いのか気まずそうな顔をして近づかなかった。平民のみんなも魔王になんか近づきたくないので、なんの会話もすることもなく国を飛び去った。

「清らかなれ」

 私はグラスのワインを飲む。
 程よい酸味と、程よいアルコール度数、そして程よい渋味。
 魔王軍は度数が強いお酒が好きだけれど、私にはこれくらいがちょうどいい。
 
 だいたんなことはできないけれど、私は聖なる術の修行を怠らなかった。
 そして、イケメン勇者を待っていた。

 けれど、一向に勇者が現れたと言う話は聞かないし、魔王が勇者を倒したと言う話も聞かない。
 というか、魔王が勇者になんか興味はなく、貴族や王族を殺すことに命をかけている感じだ。

「あの人は人殺し・・・絶対に許してはいけない」

 私はあの魔王を憎めずにいた。
 
 だって・・・

『エミリーを悪者にする世の中なんて、俺は許さん。キミは・・・幸せにならなければならんのだ』

 彼も彼の部下も、彼の考える正義のために罪を被る。
 彼は部下の前では罪悪感を与えないように笑顔で、その成果を褒めた。
 けれども、時々夜中に泣いているのを知っている。
 寝ている時にうなされるのも、知っている。

 だから、私は・・・

「おうっ、ただいま帰ったぞっ!!」

 扉は丁寧に開けなさいと何度も言っても治らない魔王は元気に扉を開けて帰って来た。

「あぁ、お帰りなさい」

 私は王座に座りながら、挨拶を返す。

「って、そこは王の椅子ですよ、エミリー様」

 すると、魔王軍幹部が私を注意する。

「ええい、お仕置きが必要だな、バランっ、席を外せ」

 魔王がそう言うと、バランは少しニヤッとしたあと、

「はっ、かしこまりましたっ」

 と真面目に言って、部屋の外に出た。
 
「ふっふっふっふっ・・・」

 不気味な笑い声が王の間に響いてるけど・・・ね。
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