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その日は、私らしくありませんでした。
熱のせいか頭が働かず、感情の赴くままに行動して、覚えていることも言語化できないくらい記憶がありません。
ですが、頭は覚えていなくても心がしっかりと覚えていて、大切な記念になりました。
次の日の朝は倦怠感はありましたが、とても幸せな気分で起きることができ、こんなにも満たされた気持ちなのは初めてでした。寝ていたシーザーを起こさないようにして、ベッドから降り、身なりを整えて、鏡の前に座ると、のろけた少女が映っていて、あまりにもたるんでいたので恥ずかしくなり、私は髪を整え始めました。
「おはようございます・・・スノウ様」
「鏡の奥に移っていたベッドからシーザーが顔を出す。寝起きのシーザーの顔はとても可愛らしかった。
「おはようございます、シーザー様」
私が鏡越しではなく、ふり返ると、シーザーが身なりを整えて、私の近くに来て、膝を曲げて私に目線を合わせて、
「お互い、様呼び、それと敬語は止めませんか?」
と優しい笑顔で言うので、
「わかったわ・・・シーザー?」
「ありがと、スノウ」
私が恥らいながら言うと、シーザーは嬉しそうにしながら、私のおでこにキスをして離れていった。
「ちゃんと・・・キスをして・・・?」
「昨日あんなにしたじゃないか?」
シーザーはちょっと小悪魔的な笑顔で私を見る。可愛がるのは私がしたいのに。嬉しいようで、ちょっとだけ張り合いたくなった。
「あれは・・・水分補給でしょ? ちゃんとしたキス・・・してもらったことがないもの」
「じゃあ・・・」
戻って来たシーザーは私の膝の上にあった両手を掴んで愛おしむようにさすりながら、
「僕は・・・キミを幸せにすると誓う。だから、結婚しよう。スノウ」
真剣な蒼い眼差しに、少し照れて赤くなる頬。
「私も貴方を幸せにすると誓うわ、シーザー」
私たちは目を閉じ、お互いの唇をそっと重ねた。
唇を離すと、温もりが無くなり寂しくなったけれど、目を開ければ愛すべきシーザーが微笑んでいた。だから、もう寂しくなんかない。
「あと、二つ言っておかなきゃいけないことが」
そう言って二本指を立てるシーザー。
「何かしら?」
「一つは、キミは僕が女の扱いに長けているなんて言ったけれど、僕は誰とも付き合ったことがない。だって、ずーっとキミのことが好きだったんだからねっ」
照れたシーザーが私から目を外して、さらに頬を赤くした。
(そうだったのね・・・)
「ありがとう、シーザー」
「それと、もう一つ」
シーザーは照れ隠しをするためか食い気味に二つ目を言おうとして、再び私の顔を見た。
「キミのご両親にはすでにキミの了承を得る前に、キミを貰うと言ってしまったよ」
「ウソっ?」
「ホント」
「えー、なんかショックです」
「ごめんね」
馬鹿っぽくじゃれ合う私たち。
もう熱のせいにはできないけれど、二人だけのときはこんな風にすぐに笑える関係でいたいと思った。馬鹿になるのも悪くないなと思うのは、愛のせいにでもしておこう。
FIN
熱のせいか頭が働かず、感情の赴くままに行動して、覚えていることも言語化できないくらい記憶がありません。
ですが、頭は覚えていなくても心がしっかりと覚えていて、大切な記念になりました。
次の日の朝は倦怠感はありましたが、とても幸せな気分で起きることができ、こんなにも満たされた気持ちなのは初めてでした。寝ていたシーザーを起こさないようにして、ベッドから降り、身なりを整えて、鏡の前に座ると、のろけた少女が映っていて、あまりにもたるんでいたので恥ずかしくなり、私は髪を整え始めました。
「おはようございます・・・スノウ様」
「鏡の奥に移っていたベッドからシーザーが顔を出す。寝起きのシーザーの顔はとても可愛らしかった。
「おはようございます、シーザー様」
私が鏡越しではなく、ふり返ると、シーザーが身なりを整えて、私の近くに来て、膝を曲げて私に目線を合わせて、
「お互い、様呼び、それと敬語は止めませんか?」
と優しい笑顔で言うので、
「わかったわ・・・シーザー?」
「ありがと、スノウ」
私が恥らいながら言うと、シーザーは嬉しそうにしながら、私のおでこにキスをして離れていった。
「ちゃんと・・・キスをして・・・?」
「昨日あんなにしたじゃないか?」
シーザーはちょっと小悪魔的な笑顔で私を見る。可愛がるのは私がしたいのに。嬉しいようで、ちょっとだけ張り合いたくなった。
「あれは・・・水分補給でしょ? ちゃんとしたキス・・・してもらったことがないもの」
「じゃあ・・・」
戻って来たシーザーは私の膝の上にあった両手を掴んで愛おしむようにさすりながら、
「僕は・・・キミを幸せにすると誓う。だから、結婚しよう。スノウ」
真剣な蒼い眼差しに、少し照れて赤くなる頬。
「私も貴方を幸せにすると誓うわ、シーザー」
私たちは目を閉じ、お互いの唇をそっと重ねた。
唇を離すと、温もりが無くなり寂しくなったけれど、目を開ければ愛すべきシーザーが微笑んでいた。だから、もう寂しくなんかない。
「あと、二つ言っておかなきゃいけないことが」
そう言って二本指を立てるシーザー。
「何かしら?」
「一つは、キミは僕が女の扱いに長けているなんて言ったけれど、僕は誰とも付き合ったことがない。だって、ずーっとキミのことが好きだったんだからねっ」
照れたシーザーが私から目を外して、さらに頬を赤くした。
(そうだったのね・・・)
「ありがとう、シーザー」
「それと、もう一つ」
シーザーは照れ隠しをするためか食い気味に二つ目を言おうとして、再び私の顔を見た。
「キミのご両親にはすでにキミの了承を得る前に、キミを貰うと言ってしまったよ」
「ウソっ?」
「ホント」
「えー、なんかショックです」
「ごめんね」
馬鹿っぽくじゃれ合う私たち。
もう熱のせいにはできないけれど、二人だけのときはこんな風にすぐに笑える関係でいたいと思った。馬鹿になるのも悪くないなと思うのは、愛のせいにでもしておこう。
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