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「他国の内政に干渉はしませんが、最低ですね」

 クオンは笑顔だったけれど、嫌悪を隠さなかった。

「さっきから、何なんだお前は。まったく、こんな変な男を連れてくるなんて人を見る目すらないのか」

 お父様はカンカンになっている。

「顔はいいですけどね」

 リーウェンがクオンに近づいてクオンの顔を見上げて確認する。

「でも、ダメですよ。お姉様、目先のことばかり考えては。まずは、地位を着実にして、それから愛玩を用意する者ですよ?」

 クオンの頬を気安く触るリーウェン。

「どう?何にも持ってないエカチュリーナなんかのところじゃなくて、私のところに来ない?私のところにくれば・・・それなりの生活を保障するわ」

「おい、リーウェン」

 お父様が慌てる。

「大丈夫です、お父様。ちゃーんと、王子の妻の役割は果たしますから」

 身体を摺り寄せようとするリーウェンの手を取ったクオン。

「ん?」

 手を取られて、頬を赤くするリーウェン。

「エカチュリーナは先を見据えて動いているよ?それに、ボクにはキミが何かを持っているように感じないな?」

 パリンと、リーウェンのメッキが剥がれた気がした。

「はははっ、じゃあこれで失礼しますっ」

 今度はクオンが私の手を取って走る。
 廊下、中庭、街へと走る私たち。
 楽しそうに走るクオンを見ていたら、私も楽しくなって笑ってしまった。
 
「はぁ、はぁっ。大丈夫ですか?エカチュリーナ」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・大丈夫よ。でも・・・ごめんなさいね。あなたを丁寧にもてなそうと思っていたのにクオン・・・いいえ、ライアン王子」

 びっくりするライアン王子。

「他国から来たと言いましたが・・・どうして王子だと?」

「それは・・・企業秘密よ」

 私の『神眼』は彼は信用できる男性だと告げているけれど、なんだか恥ずかしい感じになりそうだし、秘密の一つでもあった方が心に余裕が持てるような気がした私ははぐらかした。

「やっぱり、キミは面白い女性だ」

 ライアン王子はとても興味深そうに私を見てきて私は少し照れてしまった。


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