神の末裔は褥に微睡む。

織緒こん

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暗闇を辿る。✳︎

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 emergency‼︎ 

 地雷注意報発令です。人権無視のサイコパスヤンデレ野郎の登場です。織緒作品中、最上級にエゲツないです。そこに愛はあるんか? と問われたら、ない! と言い切ります。

 飛ばしても話が繋がるように致します。十八歳未満のお嬢様、苦手なお姉様はご自衛ください。

 ⁂ ⁂ ⁂ ⁂ ⁂


 気持ちが悪い。

 記憶を辿る、たったそれだけのことで吐き気がする。

 俺ではない、けれども紛れもなく俺自身の記憶。

「生木をくように杭を打ち込まれたとき、アリスレアは形になる前の初恋が終わったことを悟ったよ」

 シュトレーゼン伯爵家のアリスレアは、孕み胎を持つ神子返りで、十歳の誕生日に隣の領地の継嗣との婚約が整った。六歳年上の彼が王都に勤めに出る前に、両家で話をまとめることになったからだ。アリスレアはひとりっ子で、将来は産んだ子のひとりに伯爵家を継がせる予定で、そのためには往来のしやすい隣の領地はとても良い嫁ぎ先だった。

 その頃のアリスレアは綺麗な顔をしているものの、領民の子どもたちと小馬に乗って湖に行ったり棒切れを振り回すような、どこにでもいる普通の男の子だった。両家の大人たちはそんなアリスレアとのちに婚約者になる少年を出会わせた。相性が良ければ、くらいの気軽な顔合わせだったが、アリスレアは少年を兄と慕った。

 相性は悪くなさそうだと見てすぐに婚約が整い、少年は礼儀正しく頬への口付けだけを残して、王都に旅立った。

 まめな便りとささやかな贈りものは、毎月必ずアリスレアに届けられ、自分が大切にされていることを喜んだ。恋がどんなものかはわからないけれど、兄様と慕う婚約者に抱く淡いものは胸をときめかせた。

 手紙の返事を書くために頑張って飾り文字の練習をしたし、護衛兼世話係を相手にダンスの練習もした。初めての王都で夜会に参加したとき、婚約者にダンスを褒められて嬉しくて堪らなかった。

 この方と自分は結婚するのだと、ようやく実感が湧いた。婚約者の優しい笑顔にドキドキして、世界で一番幸せな花嫁になれそうだと思ったりした。

 すぐに、絶望の底に叩き落とされたけれど。

 飲み物を取りに行った婚約者を待っていたアリスレアは、横柄な態度の男に声をかけられた。

『今そこで踊っていたのはお前か? 近くで見ると顔も好みだな。こい』

 突然手を掴まれて、会場から連れ出された。アリスレアは踏ん張って、掴まれた手を必死に振り解いた。このとき、田舎育ちのアリスレアはこの男がどこの誰なのかわからなかった。だからこそ、不敬とかそんなことを気にしないで振り解いてしまったのだけれど。

『いいのか? 僕を邪険に扱うと、お前と踊っていた男が牢にぶち込まれるぞ』

 そう言われて初めて、この男がそれなりの権力者だと気づいた。そして理不尽なことを平気で言う、腐った性根の持ち主だということも。

 淡い想いを抱き始めた婚約者の優しい笑顔が脳裏を掠めた。その戸惑いを見逃さなかった男は再びアリスレアの腕を掴んで、引き摺るように近くの休憩室に連れ込んだ。

 女官がひとり部屋を整えていたので追い払うように押しのける。女官はアリスレアを見て血相を変えた。

『まだ幼い若様でございます。どうかご無体は……!』

 男は女官に花瓶を投げつけた。

 女官の額から赤い血が流れるのを見て、アリスレアはおびすくんで引き摺られた。寝台に放り込まれて、下衣を剥ぎ取られる。四つ這いに逃げようとして押さえつけられて、秘された場所にぬるつく液体を感じた。

『ーーーーーーッ!』

 こじ開けられる激痛に声も出なかった。

 痛いと苦しいしか感じない。

 何が起こっているのか。恐慌の只中ただなかにあって、たったひとつ、はっきりしていること。

 もう、兄様の花嫁にはなれないんだ。

 ひとしきり腰を振って満足した男がアリスレアの上から退いた。うつ伏せのまま痛みに朦朧としているところに、もうひとり男がやってきて、恭しく男に接するのを聞いた。

 ふたりの会話から、乱暴した男がクシュナ王で後から来た男が乳兄弟のハイマンだと知れた。どうでもよかった。

 クシュナ王……クズ王は、アリスレアを気に入ったと言い、全ての手配をハイマンに任せた。ハイマンはアリスレアの脚を強引に開いて手巾で乱暴に血とクズ王の精液を拭うと、教会に提出するための保管箱に入れた。

 気づけば王妃だった。

 耐えきれず自傷したら、枷として没落貴族の令嬢が連れて来られた。それがトーニャだ。

 その後しばらくは茫洋と時間を過ごしていたので、はっきりした記憶はない。ただ、夜になるとクズ王が来る前に乳兄弟がやってきて、アリスレアの身体を入念に準備した。ハイマンはアリスレアを慮ったのではなく、嫉妬に駆られてのことのようだった。

『私の陛下をお前の血で汚すのは許されません』

 そう言って、彼は自らの手で王妃の身体を機械的に準備するのだ。

 乳兄弟が見守る中、クズ王はうつ伏せにしたアリスレアの腰を掴んで突き入れる。準備のおかげで痛みはないが、心だけが疲弊していく。クズ王が一心に腰を振る間、乳兄弟は憎悪の眼差しで王妃を睨み続けた。クズ王が寝室に入ってから、アリスレアとの間に会話はない。

 俺に言わせりゃ、気色悪いだけの変態プレイだ。

 クズ王が満足して眠りにつくと、乳兄弟はうっとりとクズ王の身体を清める。ほったらかされたアリスレアはノロノロと起き出して、浴室に向かう。そこで待ち構えたトーニャに手伝ってもらって身体を清めるのだ。

 十二歳の少女に情交の後始末をさせるなんて、虐待以外のなにものでもない。それ以前に、そのときのアリスレアも十四歳だったのだけれど。

 身を清めると、ハイマンが用意したクソ不味い薬湯を飲む。

『滋養に良いのですよ』

 ニタリと笑って差し出されるそれを飲むと、大抵吐き気と腹痛に襲われた。どう考えても避妊薬だ。それも粗悪品。

「それが三年続いた。これが王妃だったアリスレアの私生活。おおやけのことは内務卿と財務卿が詳しいから割愛するよ」

 ぐるりと見渡すと、ほぼ全員が表情を無くしていた。なぜほぼ・・なのかといえば、財務卿が泣き伏しているからだ。

「アリス……」

 ジェムがそっと俺を抱いた。

「辛かったのは俺じゃない」

「それでも、あなただ」

 過去の話だ。わざわざ掘り返したのは、今ある危機を回避するため。

「あのサイコヤンデレ乳兄弟、ガヴァナ夫人に変なものを飲ませるかもしれない」

 避妊薬とか堕胎薬とか。

 俺のつぶやきにみんなが、はっと息を呑んだ。
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