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知らない話を語る人の、愛のお話。
典型的でない貴族の婚姻。7/8
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ランバートとジョセフがどれくらい清く正しい交際をしたかと言うと、ランバートの父が領主を務める西の領地への旅路も、同じ部屋を取りつつも二台の寝台の間に衝立を置いたほどだった。
寝台がひとつしかない部屋しか取れなかったときは、真ん中に護身用の剣を置いた。これは『絶対に不埒な真似は致しません』と言う誓いである。ジョセフはなんとも古風なことをしてランバートを安心させたのだった。
ジョセフの家は裕福な商家で、国に財力にて貢献した功績をもって准男爵の位を賜った一代貴族である。ジョセフ本人はかつて騎士爵の位をもっていたが、騎士を廃業したときに返上していて現在はただの准男爵の長子だ。一代貴族である故に、継嗣とも呼ばれない。継ぐべき爵位がないからだ。
王都でランバートを紹介された准男爵は、若くして才覚を表したやり手なだけあって、息子が身分が上の子爵家の三男を連れてきても慌てなかった。長男が騎士の道を選んだときに、商売は金勘定が得意な次男が継ぐことが決まっていたから、今更長男が男性を妻として連れて来ても困らなかったし、もとより息子たちに商才がなければ優秀な部下に身代を譲ってもいいと考えていた。
そんな准男爵であったから、ランバートが子爵家の子息であったことより宰相補佐官の地位の方を警戒した。権力の中枢に近寄ることは、商売人とって諸刃の剣だ。真っ当な取引をするのは当然として、善良な相手であっても泥舟には乗るわけにはいかない。
しかし、ランバートを値踏みしようとした准男爵は拍子抜けした。『お前、面食いだったんだな』と文官にも商人にも見えない長男を見やる。彼の息子は愛おしそうに傍の華奢な男を支えていた。
息子が連れてきたスノー子爵家の三男は、下位のノーマン准男爵を見下すことなく、恥じらってガチガチに緊張すると言う可憐な様子を見せた。打ち解けてくると大農場の息子のおおらかさを見せて、おっとりのんびりとしていて、本当に宰相府で二番目に権力を持つ男なのかと首を傾げたくなる。
ともあれ、准男爵はランバートを気に入った。怪我をして騎士を廃業した長子が、自棄にもならず新しい道を歩むことを決めたのは、この優しげな青年がきっかけだと言うことは、かねてから知るところだったのだから。
そうして准男爵家は、長子のために素晴らしい納采(結納)の品を揃えたのだった。
ランバートは夏の休暇に合わせてジョセフと共に領地に帰ることにした。新年の夜会で長兄がまとめた縁談とは言え、ジョセフを家族に紹介しないわけにはいかない。ジョセフ自身は准男爵家が用意した納采を携えて挨拶に向かう気満々であったので、ふたり揃って夏の休暇を長めにとっての旅行になった。
ランバートは旅行となって多少の覚悟はしたのだが、ジョセフは礼儀正しく額や頬、指先に口付けを落とすに止まった。
エスターク王国の西側にあるスノー子爵家の領地は、夏は蒸し暑く冬はドカ雪に見舞われる典型的な田舎領地だった。のどかな田園と柵の中で伸び伸び飼われている家畜たち、働く人々の純朴な笑顔。
豊かな領地だが前王時代の腐った老害から食指を伸ばされなかったのは、ただただ王都への交通の便が悪いからである。お陰で生臭い権力争いから逃げおおせて、領主一家と領民はおっとりのんびり暮らして来たのだった。
「うちの領地は自給自足というか、生活に困らない程度になんでもあるから、領地内で完結しちゃうんだよね」
そう言って車窓から見える懐かしい景色に、ランバートは目を細めた。余所者が滅多に訪れないのどかな田舎道は、夏の日差しを浴びて茹だる暑さだった。見慣れない馬車を畑仕事の手を止めて眺める人々は、日除けのほっかむりをして暑さにも慣れたものだ。
領主の館は平家の広い建物で、門を過ぎてから玄関までが非常に遠かった。庭だか森だかわからないほど樹木が植っていて、心地よい木陰を作っている。暑い夏を乗り切るための工夫なのだろう。
「バート兄さん! お帰りなさい‼︎」
停車した馬車からジョセフがランバートをエスコートして降ろしていると、大音声で呼び止められた。そこにいたのはジョセフと変わらない体躯の麦わら帽子を被った若い男で、両手で玉蜀黍がどっさり入った籠を運んでいた。ポタポタと汗を垂らして、垂れがちな目尻をほんにゃりと下げて笑っている。ジョセフは新年に会ったランバートの長兄を思い出した。
「リーアン? ランリーアンだよね⁈」
ランバートは目を丸くした。
「私より小さかったのに、こんなに大きくなるなんて⁈」
「僕が幼年学校を卒業してから、一体何年経ってると思ってるんだよ。子守を面倒くさがって帰省しないから、身長が伸びなかったんじゃないの?」
「うわぁ、その生意気な口調はやっぱりリーアンだ」
「兄さんこそちっちゃくなっちゃって! そっち、旦那さんでしょう? はじめまして、弟のランリーアンです。ドリュー兄さんに聞いてます! ちょうど昼食なんです。一緒にどうぞ‼︎」
まだ婚約者だと言いたかったが、ランバートは真っ赤になって口籠った。ジョセフが嬉しそうに微笑むから、否定するのが申し訳なくなったからだ。
こっちこっちとランリーアンに促されて、屋敷の裏手に回ると、煙と一緒にいい匂いがしてくる。わいわいと賑やかな声も聞こえてきて、変わらない田舎の生活が懐かしくなって、ランバートの足は自然に早くなった。
「⋯⋯炊き出しですか?」
「バーベキューだよ」
元騎士らしいジョセフの質問に、ランバートは笑った。
樹々にロープを張って日除けの吊りテントが張られていて、その下に丸太を組んだ大きなテーブルがあった。そこでは大人と子どもが大勢ひしめいていて、和気藹々と食事を楽しんでいた。テーブルの傍では使用人と思しき人々が、笑顔で調理しているし、小さな子どもが火の近くで走り回って少し大きな子どもに叱られている。
ジョセフは動揺は見せなかったが、わずかに目を見開いた。
男性の膝の上で串焼きを頬張っている小さな男の子が、ランリーアンに気づいて手を振った。それからランバートとジョセフを見て首を傾げる。麦藁色の髪も垂れがちな眦もランバートの子ども時代かと錯覚するほどに似ていた。
「あの子、シルフかな? それともウィンディ?」
「残念、メイヤーだよ!」
「え⁉︎ 産まれたばっかりのときに会ったきりだよ!」
ジョセフは兄弟の会話から、ランバートが本当に長く領地に帰っていなかったことを知った。そしておおらかな大家族だと聞いてはいたが、予想をはるかに超えるおおらかさにとても驚いた。
不思議と粗雑さや行儀の悪さは感じられない。ただ楽しげな様子に、ジョセフの頬が弛んだ。
「やぁ、ノーマン殿! 新年ぶりだな‼︎」
長兄のランドルフが肩車で男の子を担ぎ、腕にすやすやと眠る赤ん坊を抱いてやって来た。ピンクのレースが可愛らしい衣服から見て、赤ん坊は女の子だろう。
「まずは昼食だ。食べながら適当に紹介するから、気楽に過ごしてくれ。おーい、ふたりぶん増えるから、場所詰めろよ」
大家族はベンチタイプの椅子の上で、慣れたように移動を始めた。赤ん坊を膝に乗せていた若い婦人が隣の男性の膝の上に躊躇いもなく移動し、年長の少年も小さな女の子を膝に乗せている。
「酷いな、ドリュー兄さん。僕の場所は作ってくれないの?」
「お前は玉蜀黍を焼いてくれ」
「益々酷いや。焼くだけじゃなくて、皮を剥いてソースを絡めるところまでやるんだろう?」
「当然だ!」
夏の陽射しの下で、スノー一家の笑いが弾けた。
スノー子爵夫妻、兄ふたり、姉三人、弟妹がひとりずつ。そして、兄ふたりと姉三人の配偶者。さらにはその子どもたちが男女取り混ぜて十七人。姉のひとりはお腹が大きかった。
驚くことに子爵の両親は健在で、兄弟姉妹とその家族は収拾がつかなくなるからと、この日は遠慮してもらったそうだ。
大きな身体のスノー子爵と小さくてふんわりした子爵夫人が、ランバートとジョセフをとなりに招いた。
「うちはこんな大家族だし、家畜も畑も放っておけないから、王都の聖堂での結婚式には家族全員では行けないんだ。今日は前祝いだからね、楽しんでいきなさい」
子爵が眦の下がった優しい表情でジョセフに言った。
「ジョセフ・ノーマンと申します。ご挨拶も失礼しておりますのに、過分な歓待をいただき感謝いたします」
「なんの婿殿。こんな立派な若者がバートの側に居てくれるなんて、心配がひとつ減ったというものだ」
「そうですよ。ウチのボンヤリさん、頭は良いのにどこか抜けてるから、ジョセフさんみたいな方が捕まえておいてくれたら安心だわ」
かしこまったジョセフに、夫妻が笑顔を向けた。ジョセフは深く頭を下げて、ランバートは真っ赤になって顔を背けた。
こうして両家の挨拶を恙無く終えたふたりは、ゆっくりと時間をかけて婚姻の準備に取り組んだ。仕事も私事も順調で、繁忙期にはジョセフが書類に集中するランバートの口に食べ物を運ぶようになったのも、この婚約期間中だった。
新居を探し、家具を選び、引越しの算段をする。どこにでもいる幸せな婚約者同士の姿に、一番喜んだのは、何故か后子殿下だった。
「絶対絶対、絶対! 結婚休暇は七日以上あげてね‼︎」
后子殿下が強く強く宰相に訴えたので、ふたりは気兼ねなく休暇をもらうことにしたのだった。
⁂ ⁂ ⁂ ⁂ ⁂
バーベキューは『チ◯ちゃんに叱られる』的な。お父さんが張り切る青空焼肉じゃなくて、使用人がちゃんとグリルしたものをサーブしてくれるタイプのBBQです。
寝台がひとつしかない部屋しか取れなかったときは、真ん中に護身用の剣を置いた。これは『絶対に不埒な真似は致しません』と言う誓いである。ジョセフはなんとも古風なことをしてランバートを安心させたのだった。
ジョセフの家は裕福な商家で、国に財力にて貢献した功績をもって准男爵の位を賜った一代貴族である。ジョセフ本人はかつて騎士爵の位をもっていたが、騎士を廃業したときに返上していて現在はただの准男爵の長子だ。一代貴族である故に、継嗣とも呼ばれない。継ぐべき爵位がないからだ。
王都でランバートを紹介された准男爵は、若くして才覚を表したやり手なだけあって、息子が身分が上の子爵家の三男を連れてきても慌てなかった。長男が騎士の道を選んだときに、商売は金勘定が得意な次男が継ぐことが決まっていたから、今更長男が男性を妻として連れて来ても困らなかったし、もとより息子たちに商才がなければ優秀な部下に身代を譲ってもいいと考えていた。
そんな准男爵であったから、ランバートが子爵家の子息であったことより宰相補佐官の地位の方を警戒した。権力の中枢に近寄ることは、商売人とって諸刃の剣だ。真っ当な取引をするのは当然として、善良な相手であっても泥舟には乗るわけにはいかない。
しかし、ランバートを値踏みしようとした准男爵は拍子抜けした。『お前、面食いだったんだな』と文官にも商人にも見えない長男を見やる。彼の息子は愛おしそうに傍の華奢な男を支えていた。
息子が連れてきたスノー子爵家の三男は、下位のノーマン准男爵を見下すことなく、恥じらってガチガチに緊張すると言う可憐な様子を見せた。打ち解けてくると大農場の息子のおおらかさを見せて、おっとりのんびりとしていて、本当に宰相府で二番目に権力を持つ男なのかと首を傾げたくなる。
ともあれ、准男爵はランバートを気に入った。怪我をして騎士を廃業した長子が、自棄にもならず新しい道を歩むことを決めたのは、この優しげな青年がきっかけだと言うことは、かねてから知るところだったのだから。
そうして准男爵家は、長子のために素晴らしい納采(結納)の品を揃えたのだった。
ランバートは夏の休暇に合わせてジョセフと共に領地に帰ることにした。新年の夜会で長兄がまとめた縁談とは言え、ジョセフを家族に紹介しないわけにはいかない。ジョセフ自身は准男爵家が用意した納采を携えて挨拶に向かう気満々であったので、ふたり揃って夏の休暇を長めにとっての旅行になった。
ランバートは旅行となって多少の覚悟はしたのだが、ジョセフは礼儀正しく額や頬、指先に口付けを落とすに止まった。
エスターク王国の西側にあるスノー子爵家の領地は、夏は蒸し暑く冬はドカ雪に見舞われる典型的な田舎領地だった。のどかな田園と柵の中で伸び伸び飼われている家畜たち、働く人々の純朴な笑顔。
豊かな領地だが前王時代の腐った老害から食指を伸ばされなかったのは、ただただ王都への交通の便が悪いからである。お陰で生臭い権力争いから逃げおおせて、領主一家と領民はおっとりのんびり暮らして来たのだった。
「うちの領地は自給自足というか、生活に困らない程度になんでもあるから、領地内で完結しちゃうんだよね」
そう言って車窓から見える懐かしい景色に、ランバートは目を細めた。余所者が滅多に訪れないのどかな田舎道は、夏の日差しを浴びて茹だる暑さだった。見慣れない馬車を畑仕事の手を止めて眺める人々は、日除けのほっかむりをして暑さにも慣れたものだ。
領主の館は平家の広い建物で、門を過ぎてから玄関までが非常に遠かった。庭だか森だかわからないほど樹木が植っていて、心地よい木陰を作っている。暑い夏を乗り切るための工夫なのだろう。
「バート兄さん! お帰りなさい‼︎」
停車した馬車からジョセフがランバートをエスコートして降ろしていると、大音声で呼び止められた。そこにいたのはジョセフと変わらない体躯の麦わら帽子を被った若い男で、両手で玉蜀黍がどっさり入った籠を運んでいた。ポタポタと汗を垂らして、垂れがちな目尻をほんにゃりと下げて笑っている。ジョセフは新年に会ったランバートの長兄を思い出した。
「リーアン? ランリーアンだよね⁈」
ランバートは目を丸くした。
「私より小さかったのに、こんなに大きくなるなんて⁈」
「僕が幼年学校を卒業してから、一体何年経ってると思ってるんだよ。子守を面倒くさがって帰省しないから、身長が伸びなかったんじゃないの?」
「うわぁ、その生意気な口調はやっぱりリーアンだ」
「兄さんこそちっちゃくなっちゃって! そっち、旦那さんでしょう? はじめまして、弟のランリーアンです。ドリュー兄さんに聞いてます! ちょうど昼食なんです。一緒にどうぞ‼︎」
まだ婚約者だと言いたかったが、ランバートは真っ赤になって口籠った。ジョセフが嬉しそうに微笑むから、否定するのが申し訳なくなったからだ。
こっちこっちとランリーアンに促されて、屋敷の裏手に回ると、煙と一緒にいい匂いがしてくる。わいわいと賑やかな声も聞こえてきて、変わらない田舎の生活が懐かしくなって、ランバートの足は自然に早くなった。
「⋯⋯炊き出しですか?」
「バーベキューだよ」
元騎士らしいジョセフの質問に、ランバートは笑った。
樹々にロープを張って日除けの吊りテントが張られていて、その下に丸太を組んだ大きなテーブルがあった。そこでは大人と子どもが大勢ひしめいていて、和気藹々と食事を楽しんでいた。テーブルの傍では使用人と思しき人々が、笑顔で調理しているし、小さな子どもが火の近くで走り回って少し大きな子どもに叱られている。
ジョセフは動揺は見せなかったが、わずかに目を見開いた。
男性の膝の上で串焼きを頬張っている小さな男の子が、ランリーアンに気づいて手を振った。それからランバートとジョセフを見て首を傾げる。麦藁色の髪も垂れがちな眦もランバートの子ども時代かと錯覚するほどに似ていた。
「あの子、シルフかな? それともウィンディ?」
「残念、メイヤーだよ!」
「え⁉︎ 産まれたばっかりのときに会ったきりだよ!」
ジョセフは兄弟の会話から、ランバートが本当に長く領地に帰っていなかったことを知った。そしておおらかな大家族だと聞いてはいたが、予想をはるかに超えるおおらかさにとても驚いた。
不思議と粗雑さや行儀の悪さは感じられない。ただ楽しげな様子に、ジョセフの頬が弛んだ。
「やぁ、ノーマン殿! 新年ぶりだな‼︎」
長兄のランドルフが肩車で男の子を担ぎ、腕にすやすやと眠る赤ん坊を抱いてやって来た。ピンクのレースが可愛らしい衣服から見て、赤ん坊は女の子だろう。
「まずは昼食だ。食べながら適当に紹介するから、気楽に過ごしてくれ。おーい、ふたりぶん増えるから、場所詰めろよ」
大家族はベンチタイプの椅子の上で、慣れたように移動を始めた。赤ん坊を膝に乗せていた若い婦人が隣の男性の膝の上に躊躇いもなく移動し、年長の少年も小さな女の子を膝に乗せている。
「酷いな、ドリュー兄さん。僕の場所は作ってくれないの?」
「お前は玉蜀黍を焼いてくれ」
「益々酷いや。焼くだけじゃなくて、皮を剥いてソースを絡めるところまでやるんだろう?」
「当然だ!」
夏の陽射しの下で、スノー一家の笑いが弾けた。
スノー子爵夫妻、兄ふたり、姉三人、弟妹がひとりずつ。そして、兄ふたりと姉三人の配偶者。さらにはその子どもたちが男女取り混ぜて十七人。姉のひとりはお腹が大きかった。
驚くことに子爵の両親は健在で、兄弟姉妹とその家族は収拾がつかなくなるからと、この日は遠慮してもらったそうだ。
大きな身体のスノー子爵と小さくてふんわりした子爵夫人が、ランバートとジョセフをとなりに招いた。
「うちはこんな大家族だし、家畜も畑も放っておけないから、王都の聖堂での結婚式には家族全員では行けないんだ。今日は前祝いだからね、楽しんでいきなさい」
子爵が眦の下がった優しい表情でジョセフに言った。
「ジョセフ・ノーマンと申します。ご挨拶も失礼しておりますのに、過分な歓待をいただき感謝いたします」
「なんの婿殿。こんな立派な若者がバートの側に居てくれるなんて、心配がひとつ減ったというものだ」
「そうですよ。ウチのボンヤリさん、頭は良いのにどこか抜けてるから、ジョセフさんみたいな方が捕まえておいてくれたら安心だわ」
かしこまったジョセフに、夫妻が笑顔を向けた。ジョセフは深く頭を下げて、ランバートは真っ赤になって顔を背けた。
こうして両家の挨拶を恙無く終えたふたりは、ゆっくりと時間をかけて婚姻の準備に取り組んだ。仕事も私事も順調で、繁忙期にはジョセフが書類に集中するランバートの口に食べ物を運ぶようになったのも、この婚約期間中だった。
新居を探し、家具を選び、引越しの算段をする。どこにでもいる幸せな婚約者同士の姿に、一番喜んだのは、何故か后子殿下だった。
「絶対絶対、絶対! 結婚休暇は七日以上あげてね‼︎」
后子殿下が強く強く宰相に訴えたので、ふたりは気兼ねなく休暇をもらうことにしたのだった。
⁂ ⁂ ⁂ ⁂ ⁂
バーベキューは『チ◯ちゃんに叱られる』的な。お父さんが張り切る青空焼肉じゃなくて、使用人がちゃんとグリルしたものをサーブしてくれるタイプのBBQです。
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