少女魔法士は薔薇の宝石。

織緒こん

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ツンデレなオカン登場!

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 入学式での出会いから、わたし、ロージー・ローズとハ・ユンはすっかり仲良しになった。

 なんと学級も同じで、さとを出て慣れない王都での暮らしに戸惑っているのも同じだった。なにかと話し込んでいるうちに、気づけば学級内でもニコイチの扱いになっていた。

「あのふたり、可愛くね?」
「入学式の時、講堂で並んでたよな」
「同郷同士、くっついてるのかな?」
「いやいや、人種が違い過ぎでしょ」

 なんかジロジロ見られてなぁい? コソコソ話してるけど、イマイチ聞き取れないわね。
 
「このクラスでよかったぁ」
「眼福眼福」

 あ、聞こえた。そうだろうそうだろう。ハ・ユンはおっとりとしていて自分の容姿に無頓着だけど、超可愛い。こんな子と同じクラスなんて、私も嬉しいわ~。

  麗しい兄と従兄弟たちに囲まれて。イケメンはお腹いっぱいな私でも、美少女は別腹よ。

「艶のある漆黒の直毛と豊かに輝く黄金色の巻き毛」
「神秘的な黒曜石の瞳と鮮やかな緑柱石の瞳」
「どこをとっても対照的なふたりだ」
「まるで黒真珠と薔薇水晶だ」

 真珠と水晶がどうしたのかしら?

「魔力構築の媒体かなぁ。ねぇ、ロージーは何を準備してきたの?」

 そっか、媒体か。黒曜石だ緑柱石だのも言ってるものね。

「まずは無難に水晶にしたわ。金剛石や紅玉もいいらしいんだけど、良い石はもったいなくって」
「ユンもよ。青玉を勧められたんだけど、最初から良いもので失敗するのもこわくって」

 高価なものはお値段なりのメリットもあるんだけど、ダイヤモンドを消耗品と割り切るのは無理だ。私の中のアラサーOLが待ったをかける。

 それに水晶玉ってなんだか魔術師っぽくない? 真球にしたものはめちゃくちゃ高かったから、ちょっと大きめの結晶にしたんだけどね。
 
 午前の一般教養の授業が一段落して、ふたりで揃って昼食を摂るためにカフェテラスへ向かった。

 学院の関係者は誰でも利用できる広い休憩スペースで、軽食の販売もしている。持ち込みも可能で座席のみの使用も許可されているので、気軽に立ち入ることができる。

 ハ・ユンは持ち込み派。山岳から出てきたばかりで、王都の、と言うかこの国の食べ物にまだ慣れて居ないから、自宅でお弁当を作っている。自炊のために、寮ではなくて下宿を借りてるらしい。

 持参した弁当にカフェのデザートを一品追加して、ぼちぼち口を慣らしている。いずれはセットを注文したいんだって。

 私は食事に関しては困っていないので、カフェのメニューを攻略している。ローゼウス家は西の辺境に領地を賜っているけど、両親は元々王都の出身なのよ。王都から連れて行った料理番頭の食事で育ったので、たいして味に苦労はない。

 食べながらふたりで午前の授業の疑問点を話し合っていると、傍に人影が現れた。顔を上げると見知らぬ少女が仁王立ちをしている。

「あなた方、いい気にならないことね!」

 腰に手を当て踏ん反り返った少女は、私たちより年上に見えた。十六・七歳かなぁ。西洋人の年齢はわかりにくい。⋯⋯あれ? 私も今はそうだったよ。

 背後には気弱そうな眼鏡の少年が「だだだだダメです、お嬢さまああぁぁ」とすがりついている。見たまんま、お嬢さまと下僕みたいな関係ね!

 少女は少年を鬱陶しげに振り払ってから、もう一度言った。

「あなた方、目障りなのよ。男どもが浮き足立って授業にならないから、もう少し地味にしてくださらない!?」
「ダメです、お嬢さまぁぁ。ただの言いがかりですぅぅ」

 その通りだ、少年!

 そもそもあなた誰?

「まずは、はじめまして。シーリア・ダフです。こちらはタタン。クラスメイトよ」

 チェリーブロンドが揺れた。意外と礼儀正しい。

「こちらこそ、はじめまして。ロージー・ローズです」
「キ・ハ・ユンです」

 シーリアが微笑んで頷いて、タタンはガクガクと頷いた。

「で、なに?」
「あなた方クラスで浮いてるの気付いてる? ふたりでくっついてないで、もっと他と交流しなさいよ! でないといつまで経っても、男どもがあなた方に慣れないから、ソワソワウジウジ見てる方がイラつくんですのよ! 交流する気がないのなら、もうちょっと地味にしていらして!」

 言ってる意味はよくわからないけど、要するにもっと友だちを作れと言うことかしら? うわぁ、この子可愛い。ツンとした美人系なのに中身はツンデレでオカンとか、なんなの、この萌えポイント詰め込み美少女!

 これはぜひ、友達になっておかねば!
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