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間をとって灰色とかないのだろうか。
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ヴィラード国王は責任を取って退位するよう、我が帝国の皇帝陛下は一気に方針を転換した。ヴィラード国王は呆然として、なにかを言いかけて口を開き、結局なにも言わなかった。
しばらく喘ぐように呼吸していたけど、ぐるりと回した視線が私を捉えた。
国をまとめる人材が他にいないことに安心してたのかもしれない。それを私がひっくり返したから、こんなことになってしまったのよね。⋯⋯まさか陛下がこんな小娘の意見を話し合いもなく、採用するとは思わないじゃない。
「生命までは取るまい。蟄居か軟禁であるな」
陛下が言って、ヴィラード国王は肩の力を抜いた。
「⋯⋯結局、自分の生命かよ」
傍らで三兄様が小声で吐き捨てた。それ、私も思った。自分だけ加護宝珠つけてたし、瘴気が蔓延する前から他の国を侵略はしてたんだもんね。あー、ヤダヤダ。こんな自分のことしか考えてないおっさんのお嫁さんがシーリア?
⋯⋯って、待て。
「つかぬことを伺いますが、現在ヴィラード国の王妃の椅子は空なのですか?」
あ、明後日の方見た!
いるんじゃん!
王位にあったいい歳したおっさんが、奥さんいないわけないじゃん!下手すりゃ、私たちより年上の子どもがいるんじゃないの⁈
「へーえ? そーう? もしかして、シーリアと歳の釣り合う王子様とかいらっしゃるんじゃなくて?」
私の視線がじっとりしたものになるのは当然でしょ。当事者のシーリアだけじゃなくて、ユンの視線も軽蔑の色を隠そうともしていない。
「⋯⋯息子を王配には」
「しません」
まだ言うか。シーリアに切って捨てられて、これ以上は陛下の心証が悪くなると察したのか、口をつぐんだ。
こんなあっさり決めていいのか不安になってたけど、この王様じゃなければ誰でもいい気がしてきたわ。
問題はヴィラード国の次の王様を誰にするかじゃなくて、帝国からヴィラード国に派遣するメンツをどうするかに移る。
陛下が黒鯨騎士団に私の共をするように命じたので、白鷹騎士団のフィッツヒュー団長がめっちゃ不機嫌なのよ。対照的に黒鯨のバッカス団長は厳しい顔の口元がうっすら上がっている。あれ、よくわからないけど上機嫌なんだろうな。
「ウィルフレッド・ローゼウスよ、ヴィラード国の王を丁重に部屋にお連れせよ」
陛下がアイラン砦のウィル叔父様に命じた。丁重にって、もう軟禁開始なのね。陣幕には戻さないんだ。
陣幕で待ってるヴィラード国の騎士団(と言うのもおこがましい)って、瘴気に冒された状態で各々王様についてきてるから、指揮形態がしっちゃかめっちゃからしいのよ。王様をここにとじこめちゃったら、誰がまとめるんだろう?
「陛下、黒鯨の皆さんに対する指揮権って、私にありますか? 指揮権っていうか、お願いする権利とかおねだりする権利なんですけど」
「ぶっふぉお!」
バッカス団長が盛大に噴いた。
「せせせ、聖女殿⁈ 黒鯨騎士団におねだりですかな⁈」
「宝石姫、おねだりはダメだ! 命令にしろ!」
「ぎゃははは、姫さん、いいぞ。遊んでやれ!」
バッカス団長が真っ赤になった。日に焼けた顔が赤くなると、黒さが増してすごいことになっている。三兄様はなんでか目くじら立ててるし、フィッツヒュー団長は完全に遊んでいる。
「⋯⋯あ~、ローゼウス嬢よ、バッカス団長になにかやらせたいことでもあるのか?」
陛下が疲れたように返事をくれた。
「はい、ヴィラード国の陣幕にいる正規軍っぽい騎士を、取りまとめてもらえないかと思ったのです。私たちが王都に向かうときに一緒に帰還するんでしょうけど、指揮官もいない寝首をかいてきそうな集団、どなたかに首根っこを押さえていてもらわなくては、一緒に道程を行くのは怖いです」
「⋯⋯それは、我らを頼みにされているということか」
黒鯨騎士団の皆さん、白鷹騎士団の皆さんより体格が良い人が多いし、隊服が黒いから、見た目のインパクトでヴィラード国の連中が恐れてくれないかなぁ、と。それに、白鷹騎士団って血気盛んというか手が早そうだから、いらない喧嘩をしそうな気もするし。
一番の懸念は副団長が私のそばを離れないんじゃないかって言う⋯⋯。
そんな思惑があってのお願いなんだけど。
「はい、ヴィラード軍を抑えていただくのに、バッカス団長のお力をお借りしたいのです」
「陛下、聖女殿の願い、聞き届けたく存じます! ヴィラード国への赴任中、聖女殿の命に従います!」
大音声って、声にするとこんななのね。
真面目だ⋯⋯。
そして、融通が効かなそうだ⋯⋯。
これは絶対、フィッツヒュー団長とは気が合わないわ。
「聖女サマの身辺は、俺たちが守護するってよ」
「ぐぬぅ。しかし、聖女殿の信頼は我らにある。貴様らでは抑えられぬと仰せだ」
フィッツヒュー団長がニヤニヤして言うので、バッカス団長の眉間にシワがよった。
三兄様とアリアンさん以外は馴染みがないから、正直言って、どっちでもいい⋯⋯なんて、口に出して言える雰囲気じゃなかった。
おーい、陛下。鶴の一言で黙らせてくれませんかね。
しばらく喘ぐように呼吸していたけど、ぐるりと回した視線が私を捉えた。
国をまとめる人材が他にいないことに安心してたのかもしれない。それを私がひっくり返したから、こんなことになってしまったのよね。⋯⋯まさか陛下がこんな小娘の意見を話し合いもなく、採用するとは思わないじゃない。
「生命までは取るまい。蟄居か軟禁であるな」
陛下が言って、ヴィラード国王は肩の力を抜いた。
「⋯⋯結局、自分の生命かよ」
傍らで三兄様が小声で吐き捨てた。それ、私も思った。自分だけ加護宝珠つけてたし、瘴気が蔓延する前から他の国を侵略はしてたんだもんね。あー、ヤダヤダ。こんな自分のことしか考えてないおっさんのお嫁さんがシーリア?
⋯⋯って、待て。
「つかぬことを伺いますが、現在ヴィラード国の王妃の椅子は空なのですか?」
あ、明後日の方見た!
いるんじゃん!
王位にあったいい歳したおっさんが、奥さんいないわけないじゃん!下手すりゃ、私たちより年上の子どもがいるんじゃないの⁈
「へーえ? そーう? もしかして、シーリアと歳の釣り合う王子様とかいらっしゃるんじゃなくて?」
私の視線がじっとりしたものになるのは当然でしょ。当事者のシーリアだけじゃなくて、ユンの視線も軽蔑の色を隠そうともしていない。
「⋯⋯息子を王配には」
「しません」
まだ言うか。シーリアに切って捨てられて、これ以上は陛下の心証が悪くなると察したのか、口をつぐんだ。
こんなあっさり決めていいのか不安になってたけど、この王様じゃなければ誰でもいい気がしてきたわ。
問題はヴィラード国の次の王様を誰にするかじゃなくて、帝国からヴィラード国に派遣するメンツをどうするかに移る。
陛下が黒鯨騎士団に私の共をするように命じたので、白鷹騎士団のフィッツヒュー団長がめっちゃ不機嫌なのよ。対照的に黒鯨のバッカス団長は厳しい顔の口元がうっすら上がっている。あれ、よくわからないけど上機嫌なんだろうな。
「ウィルフレッド・ローゼウスよ、ヴィラード国の王を丁重に部屋にお連れせよ」
陛下がアイラン砦のウィル叔父様に命じた。丁重にって、もう軟禁開始なのね。陣幕には戻さないんだ。
陣幕で待ってるヴィラード国の騎士団(と言うのもおこがましい)って、瘴気に冒された状態で各々王様についてきてるから、指揮形態がしっちゃかめっちゃからしいのよ。王様をここにとじこめちゃったら、誰がまとめるんだろう?
「陛下、黒鯨の皆さんに対する指揮権って、私にありますか? 指揮権っていうか、お願いする権利とかおねだりする権利なんですけど」
「ぶっふぉお!」
バッカス団長が盛大に噴いた。
「せせせ、聖女殿⁈ 黒鯨騎士団におねだりですかな⁈」
「宝石姫、おねだりはダメだ! 命令にしろ!」
「ぎゃははは、姫さん、いいぞ。遊んでやれ!」
バッカス団長が真っ赤になった。日に焼けた顔が赤くなると、黒さが増してすごいことになっている。三兄様はなんでか目くじら立ててるし、フィッツヒュー団長は完全に遊んでいる。
「⋯⋯あ~、ローゼウス嬢よ、バッカス団長になにかやらせたいことでもあるのか?」
陛下が疲れたように返事をくれた。
「はい、ヴィラード国の陣幕にいる正規軍っぽい騎士を、取りまとめてもらえないかと思ったのです。私たちが王都に向かうときに一緒に帰還するんでしょうけど、指揮官もいない寝首をかいてきそうな集団、どなたかに首根っこを押さえていてもらわなくては、一緒に道程を行くのは怖いです」
「⋯⋯それは、我らを頼みにされているということか」
黒鯨騎士団の皆さん、白鷹騎士団の皆さんより体格が良い人が多いし、隊服が黒いから、見た目のインパクトでヴィラード国の連中が恐れてくれないかなぁ、と。それに、白鷹騎士団って血気盛んというか手が早そうだから、いらない喧嘩をしそうな気もするし。
一番の懸念は副団長が私のそばを離れないんじゃないかって言う⋯⋯。
そんな思惑があってのお願いなんだけど。
「はい、ヴィラード軍を抑えていただくのに、バッカス団長のお力をお借りしたいのです」
「陛下、聖女殿の願い、聞き届けたく存じます! ヴィラード国への赴任中、聖女殿の命に従います!」
大音声って、声にするとこんななのね。
真面目だ⋯⋯。
そして、融通が効かなそうだ⋯⋯。
これは絶対、フィッツヒュー団長とは気が合わないわ。
「聖女サマの身辺は、俺たちが守護するってよ」
「ぐぬぅ。しかし、聖女殿の信頼は我らにある。貴様らでは抑えられぬと仰せだ」
フィッツヒュー団長がニヤニヤして言うので、バッカス団長の眉間にシワがよった。
三兄様とアリアンさん以外は馴染みがないから、正直言って、どっちでもいい⋯⋯なんて、口に出して言える雰囲気じゃなかった。
おーい、陛下。鶴の一言で黙らせてくれませんかね。
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