13 / 13
13 スキナノハカオリアナタダケ
しおりを挟む
「お茶をお出ししますね」
私達を居間へと案内したタバサ嬢は、カッコよく指を鳴らしてメイドを呼び、すぐにお茶の用意をするよう命じた。
「では、カール王子様とシシリアさんはこちらにお座りになって下さい」
タバサ嬢は、私とシシリア嬢を席に着かせると、ランディの前に向かい合って立ち、両手を広げた。
「さあ! どうぞ!」
闘いでもはじめるかのかようにタバサ嬢の声には気合いが入る。
そんな彼女を、ランディは唇を噛み見つめていた。
「シシリア嬢、タバサ嬢とランディは何をしているんだろうね?」
声を潜ませ話しかけると、シシリア嬢は「さ、さぁ何でしょう~」と目を泳がせた。
ーーこの反応、何か知ってる……。
シシリア嬢は嘘がつけない人のようだ。
タバサ嬢は、しばらくランディからの動きを待っていたが「もうっ、強情ねっ」と痺れを切らしたように言うと、手にしていたステッキをクルクルと回しはじめた。
回るステッキの先から光が放たれる。
と同時に、いい匂いが漂ってきた。
「ふわぁ、いい匂い」
「本当ですね……ん?」
シシリア嬢は鼻で大きく息を吸うと、首を傾げた。
「カール王子様、この匂い、花の匂いですよね? なんていう名前の花だったかな~?」
「花?」
そう言われると、確かに花の匂いだ。
瞼を閉じて匂いに集中してみると、頭にパッとオレンジの小さな花が浮かんだ。
ーーそうだ、なぜすぐに気づかなかったんだろう。
この匂いは、前世、光輝と住んでいたアパートの自転車置き場の所に植えてあった、あの木の花の匂いだ。
「金木犀の……花の香り……」
そう自分で言って『はなのかおり』か、前世での私の名前だなぁ、なんて思い、ふふっと笑った。
「はなの……かおり……」
これまで黙っていたランディが、なぜか私の言葉を繰り返した。
それも、いつもとは違う今にも泣きそうな声で。
(ランディ?)
気になって顔を見ると、ランディはタバサ嬢と目を合わせたまま、ボロボロと涙を溢していた。
タバサ嬢はランディの泣き顔を見ながらニコニコと笑い、ステッキを回し続けている。
すると、ランディがおもむろに口を開いた。
「…………む」
その声はとても小さくて。
「たの……む」
ーー頼む?
ランディはその場に崩れるように膝をついた。
「たのむ、頼むからっ! 呪いを解いて、解いて下さい。俺は……香と……」
ランディは声を上げて泣きはじめた。
すると、タバサ嬢はステッキを天井へと放り投げ、クルリと一回転してそれを背面キャッチする。
「はあーい! 合格でーす! 約束を叶えるわよ!」
タバサ嬢は、ピースサインをしながら私にウインクをする。
号泣するランディと、対象的に楽しそうにポーズを決めるタバサ嬢。
ーーいったい、これは?
それにさっきランディは呪いとか、香とか言ってなかった?
聞き間違い?
タバサ嬢の言った『約束』はどういうことなんだろう。
などと考えていたその瞬間、私の体からピンク色の煙が出てきた。
「うわっ、何これ?」
なぞの煙に体が包み込まれる。
バタバタと手足を動かして煙を払おうと試みたが、結局、次から次に出てくる煙に巻かれてしまった。
「カール王子様、心配しないで。その煙は魔法です。ーー呪いかな?」
ピンクの煙の向こうからシシリア嬢の「害はないから大丈夫」と笑う声が聞こえる。
害はないのならいいのかな? と思っていたら煙が消えだした。
ーーって、あ、あれ?
煙が消えてしまうと、私の体に異変が起きていた。
「髪が……伸びた……?」
短かった髪が、腰のあたりまで伸びている。
ーーえっ?
ーーどういうこと?
心なしか、体が変わったような気もする。
「カール……」
私を見るランディが、涙を流しながらめちゃくちゃ嬉しそうに笑ってる。
(んん?)
戸惑っていると、シシリア嬢が何処からか姿見鏡を持ってきた。
「カール王子様、鏡を見て下さい!」
「鏡って、どうして……」
言われるがまま、鏡の前に立った私は言葉を失った。
(これって……)
鏡に映っていたのは、これまでの『カール王子様』ではなかった。
髪の色こそ変わっていないが、緑色だった瞳はルビーの様に赤く変わっている。透明感のある白い肌に可憐な小さな桃色の唇。
背も少し縮んでいるみたい。
程よい大きさの胸に、細い腰、どう見ても女の子だ。
それもかなりの美少女。
(あー、緑から赤に変わる瞳ってこのことだったんだ……って違うでしょ! これ、王子じゃなくない? 王女だよね?)
鏡を見て動揺していると、ランディが後ろから抱きついてきた。
「かおりっ!」
「へっ?」
「かおり、かおりっ!」
「ちょっとランディ『かおり』って、さっきから何言ってんの?」
「ごめん、ごめんな。もう離さない、離れないから」
ランディは、夢中になって私を抱きしめている。
ーーどういうこと?
私が混乱している間に、タバサ嬢と話し合っていたシシリア嬢が、片手を上げた。
「カール王女様、私からお話します」
「はい」
すでに呼び方が王子ではなくなってる……。
「まず私は、ランディの友人ではありません。私は魔女シシリアです」
「は、はい?」
(魔女? 魔女なの?)
シシリア嬢、もとい魔女シシリアはコクリと頷いた。
「かおり……かおり……」
私を抱きしめるランディは、ずっと『かおり』と言っている。
どうしてランディが『かおり』と私の前世の名を呼ぶのかわからない。
ーーまさか、ランディも……魔女?
「えーっと、カール王女様が今お考えのことは間違ってます」
「えっ?」
声に出していないのに、魔女シシリアは私の考えがわかったらしい。
「私は相手の顔を見ればすべてがわかってしまう『何でもお見通し』という素晴らしい魔法が使えます。だから、カール王女様の考えもお見通しです!」
ーーなるほど……。
コクリと頷くと、魔女シシリアはタバサ嬢に両手を差し出してパラパラと振った。
「ここにおられますお方、タバサ嬢は、16年前カール王女様に魔法をかけられた偉大なる大魔女様です!」
声を上げた魔女シシリアは、盛大に拍手をする。
「大魔女……」
シシリア嬢は魔女で、タバサ嬢は大魔女。
それも、私に魔法をかけた……?
「カール様は、お生まれになってすぐタバサ様の魔法で性別を変えられていたのです。凄いですね! とてもすごい魔法ですよ。私も一度かけてもらいたいぐらいです」
「……いや、いやいや、ちょっと待ってよ」
「何か?」
「私は、これまでずっと魔法をかけられていたの?」
「はい。しかし今、その魔法は解かれ、正しいお姿に戻ったのです」
「じゃあ、コレが本当の私?」
魔女シシリアと大魔女タバサは大きく頷いた。
それから魔女シシリアは、私が前世が香という名前だったこと。神様と会い、転生設定をしたことも知っていると話した。
「そんなことまで……?」
「もちろんです。そして、香さんが王子様として転生を望まれたことも知ってます」
魔女シシリアはニヤリと笑った。
「すべては、そこのランディ、前世の花野光輝さんの希望で変えられてしまったことなのです!」
ーーえっーー?
「前世って、ランディは光輝なの?」
魔女シシリアと大魔女タバサは同時に頷く。
「そうだよ、香」
ランディ(光輝)が、甘い低音ボイスで囁いた。
ーーちょっと待って?
光輝が転生したことは、自分もしているから理解できる。
けれど、同じ国に? 同じ歳に転生って……。
転生の仕組みは知らないけれど、それって、もしかして……。
「まさか私の後を追って死んじゃったの⁈」
「違うよ、俺は」
「そうだよね、そんな訳ない。光輝には付き合っている女の人いたもんね」
「違う!」
ランディは私の肩を持ち、クルリと自分の方へ体を向き直らせた。
それから、顔を寄せ目を合わせて。
「香、お前誤解してんだよ! 俺は浮気なんてしてない。もちろん後追いもしてない。ちゃんと寿命をまっとうしたんだ」
必死になって話すランディの姿が、前世の光輝の姿と重なっていき胸がキュッと痛くなった。
「……本当に? 浮気してなかったの?」
「してねーよ。はじめて好きになった女の子は香だ、付き合ったのも、結婚したのも、死ぬまで想っていたのは香だけだ!」
その言葉を聞いた瞬間、スッと胸の奥で燻っていた何かが消えたような感じがした。
「……光輝……」
ずっと、私を好きでいてくれたの?
私が死んでからも、ずっと……?
「香……俺と結婚しよう」
私の肩を抱いたまま、ランディが突然プロポーズの言葉を告げた。
急展開に驚いたけど、納得できた。
ーーああ、ランディは本当に光輝だ。
光輝って、思ったことをすぐ口にするから。
だから、あの時は浮気を疑ったんだけどーー。
「光輝、ううん、ランディ」
「カール……」
突然のプロポーズは驚いたけど嬉しかった。できるなら、私もまた光輝(ランディ)と結婚したい。
ーーけれど、私は王女だから。
「私はランディとは結婚できないよ」
「はっ? なんで?」
「私は王女だから。乳兄弟のランディとは結婚できない。許されないよ」
せめて、ランディの身分が高ければ、王女の私との結婚は許されるだろう。
でも、ランディは……。
悩ましいけれど、どうにもならない。
ーーと、大魔女タバサが口を挟んだ。
「カール王女様、ランディは乳兄弟じゃないわよ。彼、本当は隣の国の王子様なの。結婚できるわよ」
「えっ……えええっ!」
ランディは、目を見開き驚く私の髪を一房手に取り唇を落とした。
「お前が王女なら、俺は王子じゃないと結婚できないと思ってさ、転生先は王子様にしろって、じじい神様に頼んだんだ」
チュ、チュとランディは髪に何度も口付けた。
「香……いや、カール。俺と結婚しよう。そして二人の子供を持とう」
「子供……子供っ?」
「俺の子供、産んでくれるだろう? 今度は大丈夫。そこんとこも頼んでるから」
ランディはアイスブルーの瞳を蕩けさせ、優しく微笑んだ。
「カール」
スッと膝まずいたランディは、見上げるようにして私に手を差し出した。
「カール・ル・フェンリネス王女殿下、どうか私、ランディ・ド・ムータスと結婚して下さい」
「ーーえっ?」
ズルいくらい好みの顔をしているランディは、確信的な顔をして私を見ている。
「……ごめんなさい。やっぱり結婚はできません」
「ーー! どうして!」
ランディの蕩ける様な視線は、一瞬にして凍りついた。
「プロポーズはすごく嬉しいけど、私まだ16歳なんだよ。成人もしてないし、王子から王女になったばっかりで、ランディが光輝とか、もう頭の中ぐちゃぐちゃでよくわからない!」
私の言葉にランディは項垂れた。
ズーンって、マンガだったら文字が背中の辺りに縦線と共に出るぐらい項垂れている。
私達の様子を二人の魔女はニタニタ笑って見ていた。
「ランディ様、カール様の言う通り結婚は早すぎます。まずは婚約なさったら? お互い成人していないことですし。ランディ様は精神がお爺さんですからね、焦ってしまう気持ちは分かりますけどねっ!」
魔女シシリアがランディに慰めの言葉をかけた。
「ああ、そうだった!」
その場を壊すように大魔女タバサが声を上げた。
「カール王女様、カール王子の『彼女』がなぜあんなにたくさんいたのか、気づいた?」
「ーー? なぜって……」
言われてみるとなぜだろう?
カール王子の『彼女』制度。入っていた彼女たちはそれぞれに事情を持っていたけれど。
「あれは私が意図的に、そうなるよう仕組んだのよ。『彼女』たちの名前を順に並べて頭文字を続けて読んでごらんなさい」
大魔女タバサは、お茶目なプレゼントだと言ってケラケラ笑った。
彼女の名前を並べる……?
1人目はスカーレット公爵令嬢。
2人目はキャメロン侯爵令嬢(令息)
3人目のナターシャ伯爵令嬢
4人目はノーラ聖女
5人目にハーモニー伯爵令嬢
6人目はカミーユ男爵令嬢
7人目のオードリー侯爵令嬢
8人目、リゼット伯爵令嬢
9人目はアイリーン伯爵令嬢
10人目にナディーン伯爵令嬢
11人目のタバサ子爵令嬢(大魔女)
12人目のダイアナ伯爵令嬢
13人目はケイトリン男爵令嬢
彼女たちの名前の最初の文字を並べて読むと……?
『スキナノハカオリアナタダケ』
「好きなのは香あなただけ……」
パッとランディの顔が真っ赤になった。
大魔女タバサは、ほほほっと高らかに笑う。
「その言葉は、光輝さんがあなたのお葬式の時に大号泣しながら言った言葉よ」
すると、ランディがぶんぶんと首を横に振った。
「違う! 『あなた』じゃない、『お前だけ』だよ!」
「どっちもおんなじじゃない」
ランディと大魔女タバサは、『あなた、お前』と言い方をめぐりしばらく言い争っていた。
あなたでも、お前でも私にはどっちでもよかった。
お葬式で大号泣してくれたんだとただ、うれしかった。
ーー光輝。
私もずっと光輝だけが好き。
◇◇◇
城に戻った私は、何事もなかった様に皆から王女として出迎えられた。
こうなるとは大魔女タバサから聞いていたけれど。
凄いな、魔法って。
そしてランディは、本当に隣国の王子様だったのだ。
乳兄弟というのは私が好きそうだから、転生設定に入れたんだとランディは話、笑った。
ーー隣国の王子様が乳兄弟ってアリなのかな?
◇◇◇
ーー帰城した私は、ランディと婚約を交わすこととなった。
城へ戻ると、ランディは隣国の王子として国王陛下に謁見を申し入れ、婚約を申し出たのだ。
ランディは、隣のムータス王国の第3王子様だといい、結婚を機に公爵位を受けると話した。
「俺の国、けっこー自由が効くんだぜ」と笑って。
どうやら光輝は、私よりもかなり細かく転生設定をしたらしい。
そんなランディの計らいで、スカーレット嬢はケイトリン嬢が成人を迎えた後、ムータス王国に移住する事が決まった。ムータス王国は同性の結婚が認められているのだ。
ハラン公爵閣下は、以前よりスカーレット嬢の気持ちを知っておられたという。王女である私の結婚相手の国ならばと、隣国へ渡ることを許可された。
ノーラ聖女は、コーディ神官と結婚することになった。
どうやら2人は相思相愛だったらしく、コーディが神官を辞めると決断したため、私が王女の特権を使い2人の結婚をとりもったのだ。
「ありがとうございます。好きです、カール王女様」とキラキラした笑顔でコーディ元神官に言われた。
「ありがとう、コーディ。ノーラ聖女と2人で幸せになってね」と伝えると、ランディがなぜか拗ねてしまった。
◇◇◇
それから、2年の月日は瞬く間に過ぎ。
私達は結婚した。
結婚式は大魔女タバサの演出で、空から花が降って来た。
「花火も上げてあげるわね!」
私達は二人寄り添って、この世界で初めての花火をみた。
キレイな花火に、前世のことが思い出された。
あれは、中三の夏休みだ……。
「カール、中学三年の時、一緒に花火見たこと覚えてるか?」
「うん」
「俺さ、あの日めちゃくちゃ緊張してたんだ」
「どうして?」
「だって、お前……キレイだったから」
いつか、話そうと思ってたと言って、ランディは耳を赤くした。
◇◇◇
その後、私はランディとの間に2人も子供を授かった。
初めて妊娠が分かった時は泣いちゃった。
ランディもありがとう、良かった、ありがとうって何度も言って泣いていた。
赤ちゃんが欲しくて仕方なかった時には思っていなかったけど、妊娠も出産も想像より大変だった。
転生先を魔法がある世界にしておいてよかったとつくづく思った。
魔女シシリアのおかげで妊娠中は乗り越えられた。
出産時には、大魔女タバサに痛みをなくす魔法をかけてもらい、ノーラ聖女の神聖力の助けを借りて痛みもなくスルリと産むことができたのだ。
こうして私は、前世では叶うことのなかった夢を叶えられた。
2人の子を持つ母となった今でも、ランディは変わらず私を大切にしてくれている。
前世で私が先に亡くなり、その後転生するために彼は40年もの間1人でいた。
その孤独な時は光輝(ランディ)を甘えん坊に変えていた。
私に甘える子供たちに牽制する様に「カールは俺のだ」と言うと、私を抱き寄せ頬にキスをする。
「あーっ、父上っ! 僕も母上にぎゅーってするーっ」
「僕もーっ! チューするーっ!」
「仕方ないな、ほら、お前たちも」
ランディは手を広げ、その腕の中に私と子供たちを抱き抱えて、満面の笑みを浮かべた。
「ランディ、大好き。ずっと一緒にいてね」
そう告げて、今度は私からキスをした。
私達を居間へと案内したタバサ嬢は、カッコよく指を鳴らしてメイドを呼び、すぐにお茶の用意をするよう命じた。
「では、カール王子様とシシリアさんはこちらにお座りになって下さい」
タバサ嬢は、私とシシリア嬢を席に着かせると、ランディの前に向かい合って立ち、両手を広げた。
「さあ! どうぞ!」
闘いでもはじめるかのかようにタバサ嬢の声には気合いが入る。
そんな彼女を、ランディは唇を噛み見つめていた。
「シシリア嬢、タバサ嬢とランディは何をしているんだろうね?」
声を潜ませ話しかけると、シシリア嬢は「さ、さぁ何でしょう~」と目を泳がせた。
ーーこの反応、何か知ってる……。
シシリア嬢は嘘がつけない人のようだ。
タバサ嬢は、しばらくランディからの動きを待っていたが「もうっ、強情ねっ」と痺れを切らしたように言うと、手にしていたステッキをクルクルと回しはじめた。
回るステッキの先から光が放たれる。
と同時に、いい匂いが漂ってきた。
「ふわぁ、いい匂い」
「本当ですね……ん?」
シシリア嬢は鼻で大きく息を吸うと、首を傾げた。
「カール王子様、この匂い、花の匂いですよね? なんていう名前の花だったかな~?」
「花?」
そう言われると、確かに花の匂いだ。
瞼を閉じて匂いに集中してみると、頭にパッとオレンジの小さな花が浮かんだ。
ーーそうだ、なぜすぐに気づかなかったんだろう。
この匂いは、前世、光輝と住んでいたアパートの自転車置き場の所に植えてあった、あの木の花の匂いだ。
「金木犀の……花の香り……」
そう自分で言って『はなのかおり』か、前世での私の名前だなぁ、なんて思い、ふふっと笑った。
「はなの……かおり……」
これまで黙っていたランディが、なぜか私の言葉を繰り返した。
それも、いつもとは違う今にも泣きそうな声で。
(ランディ?)
気になって顔を見ると、ランディはタバサ嬢と目を合わせたまま、ボロボロと涙を溢していた。
タバサ嬢はランディの泣き顔を見ながらニコニコと笑い、ステッキを回し続けている。
すると、ランディがおもむろに口を開いた。
「…………む」
その声はとても小さくて。
「たの……む」
ーー頼む?
ランディはその場に崩れるように膝をついた。
「たのむ、頼むからっ! 呪いを解いて、解いて下さい。俺は……香と……」
ランディは声を上げて泣きはじめた。
すると、タバサ嬢はステッキを天井へと放り投げ、クルリと一回転してそれを背面キャッチする。
「はあーい! 合格でーす! 約束を叶えるわよ!」
タバサ嬢は、ピースサインをしながら私にウインクをする。
号泣するランディと、対象的に楽しそうにポーズを決めるタバサ嬢。
ーーいったい、これは?
それにさっきランディは呪いとか、香とか言ってなかった?
聞き間違い?
タバサ嬢の言った『約束』はどういうことなんだろう。
などと考えていたその瞬間、私の体からピンク色の煙が出てきた。
「うわっ、何これ?」
なぞの煙に体が包み込まれる。
バタバタと手足を動かして煙を払おうと試みたが、結局、次から次に出てくる煙に巻かれてしまった。
「カール王子様、心配しないで。その煙は魔法です。ーー呪いかな?」
ピンクの煙の向こうからシシリア嬢の「害はないから大丈夫」と笑う声が聞こえる。
害はないのならいいのかな? と思っていたら煙が消えだした。
ーーって、あ、あれ?
煙が消えてしまうと、私の体に異変が起きていた。
「髪が……伸びた……?」
短かった髪が、腰のあたりまで伸びている。
ーーえっ?
ーーどういうこと?
心なしか、体が変わったような気もする。
「カール……」
私を見るランディが、涙を流しながらめちゃくちゃ嬉しそうに笑ってる。
(んん?)
戸惑っていると、シシリア嬢が何処からか姿見鏡を持ってきた。
「カール王子様、鏡を見て下さい!」
「鏡って、どうして……」
言われるがまま、鏡の前に立った私は言葉を失った。
(これって……)
鏡に映っていたのは、これまでの『カール王子様』ではなかった。
髪の色こそ変わっていないが、緑色だった瞳はルビーの様に赤く変わっている。透明感のある白い肌に可憐な小さな桃色の唇。
背も少し縮んでいるみたい。
程よい大きさの胸に、細い腰、どう見ても女の子だ。
それもかなりの美少女。
(あー、緑から赤に変わる瞳ってこのことだったんだ……って違うでしょ! これ、王子じゃなくない? 王女だよね?)
鏡を見て動揺していると、ランディが後ろから抱きついてきた。
「かおりっ!」
「へっ?」
「かおり、かおりっ!」
「ちょっとランディ『かおり』って、さっきから何言ってんの?」
「ごめん、ごめんな。もう離さない、離れないから」
ランディは、夢中になって私を抱きしめている。
ーーどういうこと?
私が混乱している間に、タバサ嬢と話し合っていたシシリア嬢が、片手を上げた。
「カール王女様、私からお話します」
「はい」
すでに呼び方が王子ではなくなってる……。
「まず私は、ランディの友人ではありません。私は魔女シシリアです」
「は、はい?」
(魔女? 魔女なの?)
シシリア嬢、もとい魔女シシリアはコクリと頷いた。
「かおり……かおり……」
私を抱きしめるランディは、ずっと『かおり』と言っている。
どうしてランディが『かおり』と私の前世の名を呼ぶのかわからない。
ーーまさか、ランディも……魔女?
「えーっと、カール王女様が今お考えのことは間違ってます」
「えっ?」
声に出していないのに、魔女シシリアは私の考えがわかったらしい。
「私は相手の顔を見ればすべてがわかってしまう『何でもお見通し』という素晴らしい魔法が使えます。だから、カール王女様の考えもお見通しです!」
ーーなるほど……。
コクリと頷くと、魔女シシリアはタバサ嬢に両手を差し出してパラパラと振った。
「ここにおられますお方、タバサ嬢は、16年前カール王女様に魔法をかけられた偉大なる大魔女様です!」
声を上げた魔女シシリアは、盛大に拍手をする。
「大魔女……」
シシリア嬢は魔女で、タバサ嬢は大魔女。
それも、私に魔法をかけた……?
「カール様は、お生まれになってすぐタバサ様の魔法で性別を変えられていたのです。凄いですね! とてもすごい魔法ですよ。私も一度かけてもらいたいぐらいです」
「……いや、いやいや、ちょっと待ってよ」
「何か?」
「私は、これまでずっと魔法をかけられていたの?」
「はい。しかし今、その魔法は解かれ、正しいお姿に戻ったのです」
「じゃあ、コレが本当の私?」
魔女シシリアと大魔女タバサは大きく頷いた。
それから魔女シシリアは、私が前世が香という名前だったこと。神様と会い、転生設定をしたことも知っていると話した。
「そんなことまで……?」
「もちろんです。そして、香さんが王子様として転生を望まれたことも知ってます」
魔女シシリアはニヤリと笑った。
「すべては、そこのランディ、前世の花野光輝さんの希望で変えられてしまったことなのです!」
ーーえっーー?
「前世って、ランディは光輝なの?」
魔女シシリアと大魔女タバサは同時に頷く。
「そうだよ、香」
ランディ(光輝)が、甘い低音ボイスで囁いた。
ーーちょっと待って?
光輝が転生したことは、自分もしているから理解できる。
けれど、同じ国に? 同じ歳に転生って……。
転生の仕組みは知らないけれど、それって、もしかして……。
「まさか私の後を追って死んじゃったの⁈」
「違うよ、俺は」
「そうだよね、そんな訳ない。光輝には付き合っている女の人いたもんね」
「違う!」
ランディは私の肩を持ち、クルリと自分の方へ体を向き直らせた。
それから、顔を寄せ目を合わせて。
「香、お前誤解してんだよ! 俺は浮気なんてしてない。もちろん後追いもしてない。ちゃんと寿命をまっとうしたんだ」
必死になって話すランディの姿が、前世の光輝の姿と重なっていき胸がキュッと痛くなった。
「……本当に? 浮気してなかったの?」
「してねーよ。はじめて好きになった女の子は香だ、付き合ったのも、結婚したのも、死ぬまで想っていたのは香だけだ!」
その言葉を聞いた瞬間、スッと胸の奥で燻っていた何かが消えたような感じがした。
「……光輝……」
ずっと、私を好きでいてくれたの?
私が死んでからも、ずっと……?
「香……俺と結婚しよう」
私の肩を抱いたまま、ランディが突然プロポーズの言葉を告げた。
急展開に驚いたけど、納得できた。
ーーああ、ランディは本当に光輝だ。
光輝って、思ったことをすぐ口にするから。
だから、あの時は浮気を疑ったんだけどーー。
「光輝、ううん、ランディ」
「カール……」
突然のプロポーズは驚いたけど嬉しかった。できるなら、私もまた光輝(ランディ)と結婚したい。
ーーけれど、私は王女だから。
「私はランディとは結婚できないよ」
「はっ? なんで?」
「私は王女だから。乳兄弟のランディとは結婚できない。許されないよ」
せめて、ランディの身分が高ければ、王女の私との結婚は許されるだろう。
でも、ランディは……。
悩ましいけれど、どうにもならない。
ーーと、大魔女タバサが口を挟んだ。
「カール王女様、ランディは乳兄弟じゃないわよ。彼、本当は隣の国の王子様なの。結婚できるわよ」
「えっ……えええっ!」
ランディは、目を見開き驚く私の髪を一房手に取り唇を落とした。
「お前が王女なら、俺は王子じゃないと結婚できないと思ってさ、転生先は王子様にしろって、じじい神様に頼んだんだ」
チュ、チュとランディは髪に何度も口付けた。
「香……いや、カール。俺と結婚しよう。そして二人の子供を持とう」
「子供……子供っ?」
「俺の子供、産んでくれるだろう? 今度は大丈夫。そこんとこも頼んでるから」
ランディはアイスブルーの瞳を蕩けさせ、優しく微笑んだ。
「カール」
スッと膝まずいたランディは、見上げるようにして私に手を差し出した。
「カール・ル・フェンリネス王女殿下、どうか私、ランディ・ド・ムータスと結婚して下さい」
「ーーえっ?」
ズルいくらい好みの顔をしているランディは、確信的な顔をして私を見ている。
「……ごめんなさい。やっぱり結婚はできません」
「ーー! どうして!」
ランディの蕩ける様な視線は、一瞬にして凍りついた。
「プロポーズはすごく嬉しいけど、私まだ16歳なんだよ。成人もしてないし、王子から王女になったばっかりで、ランディが光輝とか、もう頭の中ぐちゃぐちゃでよくわからない!」
私の言葉にランディは項垂れた。
ズーンって、マンガだったら文字が背中の辺りに縦線と共に出るぐらい項垂れている。
私達の様子を二人の魔女はニタニタ笑って見ていた。
「ランディ様、カール様の言う通り結婚は早すぎます。まずは婚約なさったら? お互い成人していないことですし。ランディ様は精神がお爺さんですからね、焦ってしまう気持ちは分かりますけどねっ!」
魔女シシリアがランディに慰めの言葉をかけた。
「ああ、そうだった!」
その場を壊すように大魔女タバサが声を上げた。
「カール王女様、カール王子の『彼女』がなぜあんなにたくさんいたのか、気づいた?」
「ーー? なぜって……」
言われてみるとなぜだろう?
カール王子の『彼女』制度。入っていた彼女たちはそれぞれに事情を持っていたけれど。
「あれは私が意図的に、そうなるよう仕組んだのよ。『彼女』たちの名前を順に並べて頭文字を続けて読んでごらんなさい」
大魔女タバサは、お茶目なプレゼントだと言ってケラケラ笑った。
彼女の名前を並べる……?
1人目はスカーレット公爵令嬢。
2人目はキャメロン侯爵令嬢(令息)
3人目のナターシャ伯爵令嬢
4人目はノーラ聖女
5人目にハーモニー伯爵令嬢
6人目はカミーユ男爵令嬢
7人目のオードリー侯爵令嬢
8人目、リゼット伯爵令嬢
9人目はアイリーン伯爵令嬢
10人目にナディーン伯爵令嬢
11人目のタバサ子爵令嬢(大魔女)
12人目のダイアナ伯爵令嬢
13人目はケイトリン男爵令嬢
彼女たちの名前の最初の文字を並べて読むと……?
『スキナノハカオリアナタダケ』
「好きなのは香あなただけ……」
パッとランディの顔が真っ赤になった。
大魔女タバサは、ほほほっと高らかに笑う。
「その言葉は、光輝さんがあなたのお葬式の時に大号泣しながら言った言葉よ」
すると、ランディがぶんぶんと首を横に振った。
「違う! 『あなた』じゃない、『お前だけ』だよ!」
「どっちもおんなじじゃない」
ランディと大魔女タバサは、『あなた、お前』と言い方をめぐりしばらく言い争っていた。
あなたでも、お前でも私にはどっちでもよかった。
お葬式で大号泣してくれたんだとただ、うれしかった。
ーー光輝。
私もずっと光輝だけが好き。
◇◇◇
城に戻った私は、何事もなかった様に皆から王女として出迎えられた。
こうなるとは大魔女タバサから聞いていたけれど。
凄いな、魔法って。
そしてランディは、本当に隣国の王子様だったのだ。
乳兄弟というのは私が好きそうだから、転生設定に入れたんだとランディは話、笑った。
ーー隣国の王子様が乳兄弟ってアリなのかな?
◇◇◇
ーー帰城した私は、ランディと婚約を交わすこととなった。
城へ戻ると、ランディは隣国の王子として国王陛下に謁見を申し入れ、婚約を申し出たのだ。
ランディは、隣のムータス王国の第3王子様だといい、結婚を機に公爵位を受けると話した。
「俺の国、けっこー自由が効くんだぜ」と笑って。
どうやら光輝は、私よりもかなり細かく転生設定をしたらしい。
そんなランディの計らいで、スカーレット嬢はケイトリン嬢が成人を迎えた後、ムータス王国に移住する事が決まった。ムータス王国は同性の結婚が認められているのだ。
ハラン公爵閣下は、以前よりスカーレット嬢の気持ちを知っておられたという。王女である私の結婚相手の国ならばと、隣国へ渡ることを許可された。
ノーラ聖女は、コーディ神官と結婚することになった。
どうやら2人は相思相愛だったらしく、コーディが神官を辞めると決断したため、私が王女の特権を使い2人の結婚をとりもったのだ。
「ありがとうございます。好きです、カール王女様」とキラキラした笑顔でコーディ元神官に言われた。
「ありがとう、コーディ。ノーラ聖女と2人で幸せになってね」と伝えると、ランディがなぜか拗ねてしまった。
◇◇◇
それから、2年の月日は瞬く間に過ぎ。
私達は結婚した。
結婚式は大魔女タバサの演出で、空から花が降って来た。
「花火も上げてあげるわね!」
私達は二人寄り添って、この世界で初めての花火をみた。
キレイな花火に、前世のことが思い出された。
あれは、中三の夏休みだ……。
「カール、中学三年の時、一緒に花火見たこと覚えてるか?」
「うん」
「俺さ、あの日めちゃくちゃ緊張してたんだ」
「どうして?」
「だって、お前……キレイだったから」
いつか、話そうと思ってたと言って、ランディは耳を赤くした。
◇◇◇
その後、私はランディとの間に2人も子供を授かった。
初めて妊娠が分かった時は泣いちゃった。
ランディもありがとう、良かった、ありがとうって何度も言って泣いていた。
赤ちゃんが欲しくて仕方なかった時には思っていなかったけど、妊娠も出産も想像より大変だった。
転生先を魔法がある世界にしておいてよかったとつくづく思った。
魔女シシリアのおかげで妊娠中は乗り越えられた。
出産時には、大魔女タバサに痛みをなくす魔法をかけてもらい、ノーラ聖女の神聖力の助けを借りて痛みもなくスルリと産むことができたのだ。
こうして私は、前世では叶うことのなかった夢を叶えられた。
2人の子を持つ母となった今でも、ランディは変わらず私を大切にしてくれている。
前世で私が先に亡くなり、その後転生するために彼は40年もの間1人でいた。
その孤独な時は光輝(ランディ)を甘えん坊に変えていた。
私に甘える子供たちに牽制する様に「カールは俺のだ」と言うと、私を抱き寄せ頬にキスをする。
「あーっ、父上っ! 僕も母上にぎゅーってするーっ」
「僕もーっ! チューするーっ!」
「仕方ないな、ほら、お前たちも」
ランディは手を広げ、その腕の中に私と子供たちを抱き抱えて、満面の笑みを浮かべた。
「ランディ、大好き。ずっと一緒にいてね」
そう告げて、今度は私からキスをした。
37
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます
藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。
彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。
直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。
だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。
責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。
「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」
これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢クリスティナは、ここが前世で遊んだ学園ゲームの世界だと気づいた。そして自分がヒロインのライバルで悪役となる立場だと。
のんびり暮らしたいクリスティナはゲームとは関わらないことに決めた。設定通りに王太子の婚約者にはなってしまったけれど、ゲームを回避して婚約も解消。平穏な生活を手に入れたと思っていた。
けれど何故か義弟から求婚され、元婚約者もアプローチしてきて、さらに……。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ヤンデレ王子に鉄槌を
ましろ
恋愛
私がサフィア王子と婚約したのは7歳のとき。彼は13歳だった。
……あれ、変態?
そう、ただいま走馬灯がかけ巡っておりました。だって人生最大のピンチだったから。
「愛しいアリアネル。君が他の男を見つめるなんて許せない」
そう。殿下がヤンデレ……いえ、病んでる発言をして部屋に鍵を掛け、私をベッドに押し倒したから!
「君は僕だけのものだ」
いやいやいやいや。私は私のものですよ!
何とか救いを求めて脳内がフル稼働したらどうやら現世だけでは足りずに前世まで漁くってしまったみたいです。
逃げられるか、私っ!
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
早速の返事をありがとうございます!香亡き後40年も独身で過ごすような愛を持ち続けていた光輝。
これでスッキリと読み返していくとこができます。愛読書の一つにさせて頂きます。これからも素敵な作品をよろしくお願いします。待ってます。
愛読書の一つにしていただけるなんて!
光栄です😊
応援もしていただき、すごく励みになります。ありがとうございます!
追伸です。
甘い香りはアロマでしたね。見落しました。ただ、赤い跡については、理由がなかったです。楽しい作品だっただけに、また気持ちよく読み返す為にも、理由を教えて下さい。
ともぽん様
読んでいただきありがとうございます。
光輝の首についていた赤い跡、
香の日記には赤い跡のことは書いてなかったため、光輝からの説明もなく(>人<;)
私もすっかり忘れてました。
理由は、彼は不妊の原因が自分の方にあると知り、あらゆる民間療法を試しています。
その一つにお灸や鍼があり、赤い跡はたまたま残っていたお灸の跡でした。香は浮気を疑っていたため、あやしいものに見えてしまったのです。
感想、とても嬉しかったです!ありがとうございました!
作者繋がりでこの作品を読みました。
テンポも良くて、サクサクと、ハピエンで楽しく読めました。
ただ、ちょっとだけ分からない点がひとつ。こうきの首とかに赤い跡があったことや、香水の匂いが残っていた点です。
浮気はしてないとの事ですが、これはどういうことでしょうか?
この点だけモヤモヤしてます。