一緒に命を絶った恋人が何故か生まれ変わった私のお父さまだった理由

五珠 izumi

文字の大きさ
1 / 39

1 望んだ出会い

しおりを挟む
 待ち望んでいた再会は
 出会った瞬間、絶望へと変わった。

 会いたくてたまらなかったお父さま——ローレンス・マクスウェル公爵。

(どうしてなの……)

 ようやく会えたお父さまは、前世、私と一緒に命を絶った恋人だった。

◇◇◇

「リディアお嬢様、八歳のお誕生日おめでとうございます!」

 それは八歳の誕生日。
 私は、とある事情により両親と離れ、乳母のノエル、メイドのジャスミン、使用人のジョンと、領地の最果てにある別邸で暮らしていた。

 今日は私の誕生日を祝う為、ノエルとジャスミンが豪華な料理を作ってくれた。美味しそうな料理が並べられたテーブルの中央には、これまで見たことのない大きさのケーキが置かれている。
「うわぁ……」
 大きくて丸いケーキには、色とりどりのクリームでデコレーションされていた。
「先に料理をいただきましょう。ケーキはその後です」
 私が、待ちきれないとばかりに急いで食事を終えると、ジャスミンは笑いながら「では、ロウソクに火を灯しますね」と円を縁取るように立てられた八本のロウソクに火を灯した。

 これから私は、歳の数のロウソクの火を吹き消すのだ。
 一息で吹き消すことができれば、心に念じた願いが叶う。これは、古くからある誕生日のおまじないに過ぎないのだけれど。
 私は、叶うと信じている。

 ジャスミンが、一つ一つロウソクに火を灯していくのを、少し緊張しながら待っていると、ノエルが私の肩に手を添えた。

「いいですかリディアお嬢様。願いごとを心に強く念じながらロウソクの火を一息に吹き消すのですよ」
「うん!」

 残念ながら昨年も、その前の年も吹き消すことはできていない。
 だから、私の願いはかなえられないのかな。
 ——私の願いは、毎年同じ。
 離れて暮らすお父さま、お母さまに会いたい。一緒に暮らしたい、ただそれだけ。
 本当に、願いはただそれだけ………。

「がんばる……」
 ぎゅっとこぶしを握り、気合を入れる。
 大丈夫、八歳になった私は去年よりも大きいから。
(ケーキも去年より大きい気がするけど、きっと吹き消すことができるはず!)
 すっと大きく息を吸い、頬をパンパンに膨らませた。
 すぐにロウソクの火をめがけ、ぶうっと息を吹きかけて——。

「リディアお嬢様~!」
 ジャスミンの声援に応えようと、がんばって吹いたけど、残念ながら一本だけ残ってしまった。

「ううっ……」
 がんばったのに……。
 今年もダメだった。

「ああ、ごめんなさいお嬢様。ケーキが大きすぎたのよ」
 ジャスミンが肩を落とす。

 誕生日のケーキは、両親と会うことができない私を気遣い、寂しい思いをしないようにとジャスミンがどこよりも大きなケーキを焼いてくれていた。

「ジャスミンのせいじゃないわ」
 ロウソクの火が消せなかったのは私の息が足りなかったせい。ジャスミンのせいじゃないのに、
「もう少しロウソクを寄せて立てればよかったのよ、私のバカ」
 ジャスミンは私が悪いと呟いた。

「大丈夫よ、私の誕生日はまた来年もあるもの。それに大きいケーキのほうが嬉しいから!」
 ジャスミンを悲しませたくなくて、私は明るく笑ってみせた。それから、もう一度息を吸って残った一本のロウソクの火を消した。

「八歳おめでとう、リディアお嬢様」
 パチパチと手を叩き、ジョンが花束をプレゼントしてくれた。
「来年はもっと大きなケーキを作ります。そして、ロウソクは端に寄せます」とジャスミンが声を弾ませる。
 和やかな笑い声に包まれる。
(みんながそばにいてくれる。私は幸せだわ)

 ノエルはケーキを切り分け、特別な日に使う薔薇の花模様の皿に盛ると、私の前に置いた。

「すごくキレイ、おいしそう!」
 ケーキの皿を並べ終え席に着くと、ノエルが真剣な顔をした。

「リディアお嬢様、ケーキを食べる前に私から大切なお話があります」
「…………はい」

 ノエルがこんな顔をするということは、きっと楽しい話じゃない。
 嫌な予感に、思わず身がすくんだ。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます! 読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。 シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます! ※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

処理中です...