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第3章 カルセランド基地奪還作戦
第19話 コメディ・リリース
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ジェリドンだけが追いかけてきた時点で察しはついていたが、やはりオウカ軍曹は基地の中で死んでいた。
どこか満ち足りた顔で死んでいた事から、本人としては満足のいく死に様だったのだろうが、班長は俺がここで最も多く接点を持ち、そして世話になった人間なので、その死に対して少なくない悲哀を感じ、俺は無言で班長の死体を埋葬した。
これが意味のある死なのか、意味の無い死なのか、決めるのは俺では無かったのだから、班長の死を悲しんでも、同情する必要は無いと理解していたからだ。
──────────もし班長が生きていたならば、俺はそこで踏みとどまれたのかもしれない。
班長に護衛を頼む事で、魔族であっても安全に村に帰る道筋はあったのかもしれない。
だが班長が死んでいた事で俺の心は一層吹っ切れて、災厄の引き金を引く覚悟が決まった。
そして俺は基地の火薬庫に火を付け、そのまま松明を持って森にも火をつけた。
カタストロフが発動したと思わせる為だ。
大きな破壊と焼却、それがあれば人々は、得体の知れないカタストロフの災厄を恐れ、帝国に手出しを出来なくなるという目論見だ。
魔族になった俺の肉体は炎に焼かれる事もなく、そして、基地の壁を破壊出来るだけの膂力を得ていた。
故に俺はジェリドンの剣を持って基地を半日かけて破壊し尽くした。
この地で死んだ兵士たちの死体を埋めつくす為に、燃やし尽くす為に、全てを隠滅する為に。
この世が悲劇で溢れているのだとしても、それを全部嘘で覆い尽くしてしまえば、誰もそれに気付くことは無いのだから。
だから俺は笑った。
幸せなら笑え、不幸せなら嗤え、例えこの世が悲劇で出来ているのだとしても、俺が笑い続ける限り、それは全て喜劇なのだから。
それが俺の、人としての、勇者としての、存在の在り方だ。
勇者が世界の中心であるのならば、俺が主人公の物語とは徹頭徹尾喜劇で無くてはならない。
何もかもを救いたいくない俺にはこの〝道〟しか無いと、そこで結論を出した。
干渉しない、介入しない、同情もしない、だから他人事として全部笑ってやる。
例え覆い尽くせない悲劇に溢れていたとしても、俺は笑い続けよう。
狂っていても、破綻していても、救いが無かったとしても、その愚かな人の営みの全ては、俺が笑い続ける限り、それは喜劇に変わるのだから。
燃え盛る基地の中でただ一人、俺は、世界を嘲笑するかのように笑い続けた。
基地を木っ端微塵に破壊し、燃やし尽くした後、俺は今なら出来るのではと思い、ジェリドンの剣と持っていた宝具である十字架を使い、スザクがやっていたように聖剣を使用する。
「・・・確か、これは、世界を救う戦いである、《決議・開始》!!」
「──────────承認」
《聖剣再現》、希望を束ね勝利を約束するその一撃で、俺はこの山道に大きな溝を作る事を画策する。
基地のあるこの山道だけが陸路による唯一の王国と帝国を結ぶ道だ、故に、ここに断崖を作って橋が無ければ渡れないようにすれば、暫くは両者による大規模な戦闘行為は行われないと思ったからだ。
それが出来るかは賭けだったが、やるだけならノーリスクだ、それに【勇者】で、最強の魔族である竜人族で、ジェリドンの凄い剣を持ってる今の俺ならば、少しくらいの奇跡くらい起こしてもバチは当たらないだろう。
故に俺は、聖剣にこの世の全ての因縁を断ち切るような覚悟と、この地に宿る怨念の全てを込めて、剣を振るった。
聖剣とは、人々の希望を束ね、この星の未来を切り開く為の、遥かな古から伝わる人類の切り札だ。
それに星の海ほどの「悪意」と、深海の奈落ほどの「絶望」という、ありったけの闇の波動を込めて放てる人間など、世界に二人もいないだろう。
それがライアの勇者としての真価であり、彼だけに出来る奇跡の証明だった。
ライアの体に僅かに残っていた破壊神の加護により、聖剣はこの地に捧げられた生贄に見合うだけの奇跡を起こす。
それもまた、奇跡の女神の眷属、その象徴である【勇者】の真骨頂でもあった。
人間に愛想を尽かした【勇者】は、人間の世界との隔絶を望み、彼らの救済を放棄する事を望んだ。
聖剣もまた、勇者のその望みを叶えたのである。
「スウウウウウウウウウ───────
──────────ダークネス・エクス・・・カリバアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
どこか満ち足りた顔で死んでいた事から、本人としては満足のいく死に様だったのだろうが、班長は俺がここで最も多く接点を持ち、そして世話になった人間なので、その死に対して少なくない悲哀を感じ、俺は無言で班長の死体を埋葬した。
これが意味のある死なのか、意味の無い死なのか、決めるのは俺では無かったのだから、班長の死を悲しんでも、同情する必要は無いと理解していたからだ。
──────────もし班長が生きていたならば、俺はそこで踏みとどまれたのかもしれない。
班長に護衛を頼む事で、魔族であっても安全に村に帰る道筋はあったのかもしれない。
だが班長が死んでいた事で俺の心は一層吹っ切れて、災厄の引き金を引く覚悟が決まった。
そして俺は基地の火薬庫に火を付け、そのまま松明を持って森にも火をつけた。
カタストロフが発動したと思わせる為だ。
大きな破壊と焼却、それがあれば人々は、得体の知れないカタストロフの災厄を恐れ、帝国に手出しを出来なくなるという目論見だ。
魔族になった俺の肉体は炎に焼かれる事もなく、そして、基地の壁を破壊出来るだけの膂力を得ていた。
故に俺はジェリドンの剣を持って基地を半日かけて破壊し尽くした。
この地で死んだ兵士たちの死体を埋めつくす為に、燃やし尽くす為に、全てを隠滅する為に。
この世が悲劇で溢れているのだとしても、それを全部嘘で覆い尽くしてしまえば、誰もそれに気付くことは無いのだから。
だから俺は笑った。
幸せなら笑え、不幸せなら嗤え、例えこの世が悲劇で出来ているのだとしても、俺が笑い続ける限り、それは全て喜劇なのだから。
それが俺の、人としての、勇者としての、存在の在り方だ。
勇者が世界の中心であるのならば、俺が主人公の物語とは徹頭徹尾喜劇で無くてはならない。
何もかもを救いたいくない俺にはこの〝道〟しか無いと、そこで結論を出した。
干渉しない、介入しない、同情もしない、だから他人事として全部笑ってやる。
例え覆い尽くせない悲劇に溢れていたとしても、俺は笑い続けよう。
狂っていても、破綻していても、救いが無かったとしても、その愚かな人の営みの全ては、俺が笑い続ける限り、それは喜劇に変わるのだから。
燃え盛る基地の中でただ一人、俺は、世界を嘲笑するかのように笑い続けた。
基地を木っ端微塵に破壊し、燃やし尽くした後、俺は今なら出来るのではと思い、ジェリドンの剣と持っていた宝具である十字架を使い、スザクがやっていたように聖剣を使用する。
「・・・確か、これは、世界を救う戦いである、《決議・開始》!!」
「──────────承認」
《聖剣再現》、希望を束ね勝利を約束するその一撃で、俺はこの山道に大きな溝を作る事を画策する。
基地のあるこの山道だけが陸路による唯一の王国と帝国を結ぶ道だ、故に、ここに断崖を作って橋が無ければ渡れないようにすれば、暫くは両者による大規模な戦闘行為は行われないと思ったからだ。
それが出来るかは賭けだったが、やるだけならノーリスクだ、それに【勇者】で、最強の魔族である竜人族で、ジェリドンの凄い剣を持ってる今の俺ならば、少しくらいの奇跡くらい起こしてもバチは当たらないだろう。
故に俺は、聖剣にこの世の全ての因縁を断ち切るような覚悟と、この地に宿る怨念の全てを込めて、剣を振るった。
聖剣とは、人々の希望を束ね、この星の未来を切り開く為の、遥かな古から伝わる人類の切り札だ。
それに星の海ほどの「悪意」と、深海の奈落ほどの「絶望」という、ありったけの闇の波動を込めて放てる人間など、世界に二人もいないだろう。
それがライアの勇者としての真価であり、彼だけに出来る奇跡の証明だった。
ライアの体に僅かに残っていた破壊神の加護により、聖剣はこの地に捧げられた生贄に見合うだけの奇跡を起こす。
それもまた、奇跡の女神の眷属、その象徴である【勇者】の真骨頂でもあった。
人間に愛想を尽かした【勇者】は、人間の世界との隔絶を望み、彼らの救済を放棄する事を望んだ。
聖剣もまた、勇者のその望みを叶えたのである。
「スウウウウウウウウウ───────
──────────ダークネス・エクス・・・カリバアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
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