92 / 179
本編
第91 艶やかな毒 4
しおりを挟む
「初めまして。白族長のナネッテと申します」
「お初にお目に掛かります。レフラと申します」
噂に違わない艶麗な容姿のナネッテが、レフラを前に艶やかに微笑んでいた。
膝を折る様子も、頭を下げる様子もないナネッテに、3人から漂う空気が殺気立つ。今にも斬り掛かりそうな雰囲気の中で、レフラが1つ咳き込んだ。
3人がチラッと視線を向けた所で、レフラが小さく首を振る。ギガイの治める武力で、打ち負かしたい訳じゃない。ただ、レフラが持つもので、彼女に負けたくないだけなのだ。
そんなレフラの気持ちを汲んで、射殺しそうな視線のまま、3人がナネッテを睨め付けていた。
「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あら、ただのご挨拶ですわ。あのギガイ様の寵妃となれば、誰でも1度はお会いしたい、と思いますもの」
「あぁ、なるほど。確かに、そうかもしれないですね」
ギガイの寵妃という言葉をサラッと受け流して、レフラがナネッテへ微笑み返す。そんなレフラの余裕が鼻についたのか、ナネッテの口元が一瞬歪んだ。
だけどすぐに表情を戻したナネッテは、レフラの全身をジロジロと見つめた後、朱の塗られた唇に、白い指を添えた。その下で小さく笑ったのだろう。
「クスッ」
嘲笑染みた音が聞こえてくる。
「貴様ーー!!」
すぐ側に立っていたリランが剣に掛けた手を、レフラが服を引っ張って押し止めた。
「申し訳ございません。悪気があった訳では、ないんですよ。ただ……ギガイ様も、ずいぶん毛色の変わったお人形を、お望みでしたのね」
「さぁ、どうでしょうか? ギガイ様のお好みは、存じませんので」
ナネッテの小馬鹿にするような、声音も笑みもなかったかのように、レフラが穏やかに小首を傾げた。それに合わせて、ベールが揺らいで、特別に許された金糸が微かに光を返す。
「その糸は……」
ナネッテが、唖然としたように言葉を切った。
黒色のベールを彩る金糸と銀糸に、気が付いたのだろう。繊細に縫われた刺繍を辿るように見つめたあと、不愉快そうに目を細める。
確かに、レフラの言動や、雰囲気はともかく、身に着けた物の1つ1つでさえ、ギガイにとって特別な存在だと主張しているのだ。ナネッテの神経を、逆なでしていてもおかしくない。それはレフラにも分かりはする。だけど、もしも逆の立場だとしたら。レフラが、ナネッテと同じ行動を取るか、と言えば別だった。
(ナネッテ様のこの態度は、白族自体の不利益になる可能性だって、あるはずなのに……)
レフラだってギガイの権力を笠に着て、自分へ頭を下げろ、と言っているわけじゃない。ただ、一族を守る御饌として、常に自分を律して生きてきたレフラには、ナネッテの振る舞いを理解できなかった。
「お初にお目に掛かります。レフラと申します」
噂に違わない艶麗な容姿のナネッテが、レフラを前に艶やかに微笑んでいた。
膝を折る様子も、頭を下げる様子もないナネッテに、3人から漂う空気が殺気立つ。今にも斬り掛かりそうな雰囲気の中で、レフラが1つ咳き込んだ。
3人がチラッと視線を向けた所で、レフラが小さく首を振る。ギガイの治める武力で、打ち負かしたい訳じゃない。ただ、レフラが持つもので、彼女に負けたくないだけなのだ。
そんなレフラの気持ちを汲んで、射殺しそうな視線のまま、3人がナネッテを睨め付けていた。
「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あら、ただのご挨拶ですわ。あのギガイ様の寵妃となれば、誰でも1度はお会いしたい、と思いますもの」
「あぁ、なるほど。確かに、そうかもしれないですね」
ギガイの寵妃という言葉をサラッと受け流して、レフラがナネッテへ微笑み返す。そんなレフラの余裕が鼻についたのか、ナネッテの口元が一瞬歪んだ。
だけどすぐに表情を戻したナネッテは、レフラの全身をジロジロと見つめた後、朱の塗られた唇に、白い指を添えた。その下で小さく笑ったのだろう。
「クスッ」
嘲笑染みた音が聞こえてくる。
「貴様ーー!!」
すぐ側に立っていたリランが剣に掛けた手を、レフラが服を引っ張って押し止めた。
「申し訳ございません。悪気があった訳では、ないんですよ。ただ……ギガイ様も、ずいぶん毛色の変わったお人形を、お望みでしたのね」
「さぁ、どうでしょうか? ギガイ様のお好みは、存じませんので」
ナネッテの小馬鹿にするような、声音も笑みもなかったかのように、レフラが穏やかに小首を傾げた。それに合わせて、ベールが揺らいで、特別に許された金糸が微かに光を返す。
「その糸は……」
ナネッテが、唖然としたように言葉を切った。
黒色のベールを彩る金糸と銀糸に、気が付いたのだろう。繊細に縫われた刺繍を辿るように見つめたあと、不愉快そうに目を細める。
確かに、レフラの言動や、雰囲気はともかく、身に着けた物の1つ1つでさえ、ギガイにとって特別な存在だと主張しているのだ。ナネッテの神経を、逆なでしていてもおかしくない。それはレフラにも分かりはする。だけど、もしも逆の立場だとしたら。レフラが、ナネッテと同じ行動を取るか、と言えば別だった。
(ナネッテ様のこの態度は、白族自体の不利益になる可能性だって、あるはずなのに……)
レフラだってギガイの権力を笠に着て、自分へ頭を下げろ、と言っているわけじゃない。ただ、一族を守る御饌として、常に自分を律して生きてきたレフラには、ナネッテの振る舞いを理解できなかった。
20
あなたにおすすめの小説
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる