泡沫のゆりかご 二部 ~獣王の溺愛~

丹砂 (あかさ)

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本編

第159 それぞれの想い 7

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ギガイが手を上げて、3人をいったん退室させる。泣きじゃくったままのレフラを、抱えたままソファーに腰掛けた。

「も、もう……2度と、あえない……かも、って……おもって……」

ギュッとしがみ付くレフラの身体は、ギガイの記憶にあるよりも、一回り以上細くなっているようだった。

「お前のいる場所以外に、私が帰る場所はない。これは何があってもだ。覚えておけ」

力を込めれば、すぐにでも壊れてしまいそうな身体を、慎重に抱き締めていく。

腕の中でコクコクと頷くレフラの顎を掬い上げて、ギガイは触れ合わせるようにキスをした。啄むように重ねては離して、唇を軽く食んでは解放する。舌で輪郭を柔らかく辿って、開いた唇の隙間から舌をソッと差し込んでいく。

辿々しくも、レフラも応えたい気持ちはあるのだろう。だけど、舌を絡めて応えようにも、ますます増えた涙に呼吸が上がって、今のレフラには難しいようだった。

「お前は、やっぱり泣き虫だな」

そんなレフラの眦を、ギガイが親指の腹で拭っていく。

「ちがい、ます……泣かな、かった、もの……1人なら……泣いた、り……しない、もの……」

「そうか……」

だから、泣き虫なんかじゃない、と訴えるレフラから、カウチの上で、見覚えのある本に寄り添い眠っていた姿を思い出す。

温もりもなく、語ることもできない物をよすがに独り丸まっていた。その姿は、思い出すだけでも、ギガイの胸を締め付けていく。

「それなら、泣き虫のままの、お前が良いな。私のそばなら泣けると言うなら、独りで耐えずに泣いていろ」

「は、い……」

「だが、ずっと泣きすぎて、さすがに目が溶けないかも心配になるがな」

「……溶けな、いで、すよ……」

泣きながらも、フフッとレフラがようやく笑顔を零した。
その顔にまたチュッとキスを落としたギガイが、「そうか」と口角を上げて微笑んだ。

「それにしても、お前はどれぐらい寝ていなかったんだ」

目の下に出来てしまったクマを、ギガイが指でなぞっていく。

「しかも、こんなに細くなって。これでは、壊してしまいそうで、抱くに抱けんぞ」

「ちゃんと、食べるように、して、いたんです……」

さっき寝台の上でポツリと呟いていた様子からも、本人なりに食べる努力はしていたのだろう。

(それでも、食事も睡眠も、ろくに取れなかったということか……)

シュンとした表情のレフラの頭を、ギガイがクシャリと一撫でした。

「ちょっと待っていろ」

そのまま抱えていたレフラをソファーに座らせる。
クローシュを持ち上げ、卓の上に並べられていた料理の中から、今のレフラでも食べられそうな物を吟味する。

スープとパンを一切れ、クリーム煮の魚を一欠片、キッシュを一ピース、それに複数のカットフルーツ。本当ならもっと色々食べさせたいが、今はせいぜいこの辺だ。

「取りあえず、これを飲んでみろ」

カップに注いだスープを手渡して、レフラの身体を抱え直せば、おずおずとレフラがスープに口を付けた。

「…………おいしい、です……」

「そうか」

また少しだけグスッと鼻をすする音がする。

「ほら、これも食べろ」

少し俯き加減のレフラの頬をつついて、ちぎったパンを差し出してやる。レフラがそのパンとギガイを、何も言わずに交互に見つめた。

「どうした?」

ギガイの問いかけに、レフラが黙って首を振る。そして、泣き出しそうな顔で笑いながら、おずおずとギガイへ向かって口を開けた。

「少しずつで良い、しっかり食べろ」

その中に、いつもよりも小さめのパンを含ませたギガイは、頷いたレフラの頭をまたクシャクシャと撫でた。

そうやって、ギガイが手ずから食事を与え続けていく。少しずつ少しずつ、時間をかけて胃を満たしていく。それに伴って、レフラの動きが、だんだんゆっくりとなっていた。

「レフラ?」

気が付けば、コテッとギガイの胸にもたれたまま、ついにはレフラが動かなくなっていた。小さく聞こえる吐息に、ギガイがレフラを覗き込む。

いつの間に眠りの世界へ旅立っていたのか、灰色がかった青い目は、すっかり閉じられてしまっていた。
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