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第一部
静寂の宮 17
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「とんでもございません。お気遣いありがとうございます」
フワッと笑い返した直後に昨日の仕置きじみた交わりを思い出し、レフラの身体に緊張が走った。だがたまたま機嫌が良かったのか。恐る恐る見上げた先にあったギガイのいつも通りの眼差しに、レフラはホッと力を抜いた。
「まぁ、そろそろ本題だ」
ギガイの言葉に部屋の中にピリッとした緊張が走る。
「書物をいくつか見繕ってこい」
その言葉に慌ててレフラは首を振った。
「1冊で!1冊で良いんです!!」
「もっと高価な物でも良いと言っているんだ。本ごとき何冊あっても構わないと言ってるだろう」
「そんな!本当に1冊でも十分なんです!」
本当なら隷属の立場で誰かを呼びつけて、しかも何かを強請るなんてとんでもない事なのだ。そんな事は出来そうにないと、ソッと鈴を布にくるんで仕舞い込もうとした所を昨夜ギガイへ見咎められ、この状態に成っているレフラはせめてもの交渉に必死だった。
「とりあえず本を持って来い」
レフラの様子に埒が明かないと判断したのか、ギガイがレフラの言葉を押し退ける。何かを言いたくても、そんなギガイの様子にレフラはもうこれ以上の反論は出来なかった。せめてもの抵抗として、ギガイの言葉へ頷いた3人の方へ目を向ける。だが主に逆らう事などみじんとも思わない様子の彼等に、少しだけでもレフラの意を酌んでもらう事は期待できそうにもなかった。
「本はどのような物が宜しいのでしょうか?物語や伝記などでしょうか?」
「…特に問いません。何か見繕って頂ければと思います」
諦めたように答えたレフラに、なぜかリュクトワスが小首をかしげた。それはハッキリと訝しんでいる表情だった。
「申し訳ございません、ギガイ様。レフラ様へ質問を宜しいでしょうか?」
「…かまわん」
「ありがとうございます。レフラ様、特定の書物を求めていらっしゃる様子ではないのですが、書庫内の本とはまた別な本を、という事で宜しいでしょうか?」
「……書庫?」
何の事を言っているのか分からずに、今度はレフラが小首をかしげた。その様子をギガイが見開いた目で見ていた。
「レフラ、ここに来て日頃は宮で何をしている?」
「こちらの部屋で過ごしております」
「何をして?」
「ギガイ様をお待ちしておりますが…?」
御饌とはそういう者なはずだ。何を言われているのか分からずに、レフラは傾げていた首を今度は反対側へとコテンと倒してみせた。
「あっ、ここの植物のお世話などもしておりますが……それが、何か…?」
「独りで、この部屋でか?」
「はい、もちろんそうですが…?ギガイ様をお待ちしている時ですから、他に誰かが居るはずはございません。あっ、でも今後は用聞きの方が時にはいらっしゃるかもしれないですね」
独りが当たり前だった時間に、誰かと過ごせるかもしれない、という事に少しだけ子どもの頃のように心が弾んでしまう。
(私に時間を割く必要は無いと告げたのに、成長できてないですね……)
そんな自分が少しみっともなくて、心の中で嘲笑した。
フワッと笑い返した直後に昨日の仕置きじみた交わりを思い出し、レフラの身体に緊張が走った。だがたまたま機嫌が良かったのか。恐る恐る見上げた先にあったギガイのいつも通りの眼差しに、レフラはホッと力を抜いた。
「まぁ、そろそろ本題だ」
ギガイの言葉に部屋の中にピリッとした緊張が走る。
「書物をいくつか見繕ってこい」
その言葉に慌ててレフラは首を振った。
「1冊で!1冊で良いんです!!」
「もっと高価な物でも良いと言っているんだ。本ごとき何冊あっても構わないと言ってるだろう」
「そんな!本当に1冊でも十分なんです!」
本当なら隷属の立場で誰かを呼びつけて、しかも何かを強請るなんてとんでもない事なのだ。そんな事は出来そうにないと、ソッと鈴を布にくるんで仕舞い込もうとした所を昨夜ギガイへ見咎められ、この状態に成っているレフラはせめてもの交渉に必死だった。
「とりあえず本を持って来い」
レフラの様子に埒が明かないと判断したのか、ギガイがレフラの言葉を押し退ける。何かを言いたくても、そんなギガイの様子にレフラはもうこれ以上の反論は出来なかった。せめてもの抵抗として、ギガイの言葉へ頷いた3人の方へ目を向ける。だが主に逆らう事などみじんとも思わない様子の彼等に、少しだけでもレフラの意を酌んでもらう事は期待できそうにもなかった。
「本はどのような物が宜しいのでしょうか?物語や伝記などでしょうか?」
「…特に問いません。何か見繕って頂ければと思います」
諦めたように答えたレフラに、なぜかリュクトワスが小首をかしげた。それはハッキリと訝しんでいる表情だった。
「申し訳ございません、ギガイ様。レフラ様へ質問を宜しいでしょうか?」
「…かまわん」
「ありがとうございます。レフラ様、特定の書物を求めていらっしゃる様子ではないのですが、書庫内の本とはまた別な本を、という事で宜しいでしょうか?」
「……書庫?」
何の事を言っているのか分からずに、今度はレフラが小首をかしげた。その様子をギガイが見開いた目で見ていた。
「レフラ、ここに来て日頃は宮で何をしている?」
「こちらの部屋で過ごしております」
「何をして?」
「ギガイ様をお待ちしておりますが…?」
御饌とはそういう者なはずだ。何を言われているのか分からずに、レフラは傾げていた首を今度は反対側へとコテンと倒してみせた。
「あっ、ここの植物のお世話などもしておりますが……それが、何か…?」
「独りで、この部屋でか?」
「はい、もちろんそうですが…?ギガイ様をお待ちしている時ですから、他に誰かが居るはずはございません。あっ、でも今後は用聞きの方が時にはいらっしゃるかもしれないですね」
独りが当たり前だった時間に、誰かと過ごせるかもしれない、という事に少しだけ子どもの頃のように心が弾んでしまう。
(私に時間を割く必要は無いと告げたのに、成長できてないですね……)
そんな自分が少しみっともなくて、心の中で嘲笑した。
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