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第1話 浮気疑惑
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「眼を離せばすぐに浮気か?」
吐かれた言葉の意味が分からなかった。
栗色がかった髪をサラリと揺らしながら、山根亜樹は小首を傾げた。
言われた言葉を反芻してみる。
それでも何を言われているのか分からない。
ただ聞こえてきた声は初めて聞くような低さで、その音からすごく怒っている事だけは伝わってくる。
「えっ?」
思わず恋人である城田和真の顔を見詰めれば。
亜樹へ向けられた視線はとても冷たい上に、無言で掴まれた腕もかなり痛い。
抵抗する気は少しも無いのに、引きずられるような状態になっていくのは、こちらを少しも配慮してくれない和真の動きに付いていけないからだった。
「どうして、俺、浮気なんてしてない……!」
玄関口から靴を脱ぐ時間すらろくに与えられずに引きずられ、かろうじて脱げた靴は廊下に点々と落ちている。
「ねえ、和真!」
いつもならすぐに振り返ってくれるのに。
まるで亜樹の声が聞こえていないかのように、その背中がこちらを向いてくれる様子は全くなかった。
さっきまではこそばゆい幸せを感じていた心の奥が、キュッとした痛みを訴えている。
浮気なんてしたつもりはない。
他の誰かを気にする余裕もないぐらい、いつだって亜樹の心は和真でいっぱいで。そんな気なんて少しだって湧かないのに。
それなのに、何でこんな事になったのだろう。
分からなかった。
「和真がいるのに浮気なんて、ホントにしてないよ」
何度も躓きそうになりながら「ねぇ、聞いてよ」と叫んでみても、引きずるように歩く和真の動きは止まらない。
(なんで!? 俺はただお金が欲しかっただけなのに)
それなのに、何で和真が怒っているのか分からないまま引きずられる。
和真の誕生日が明後日だと知ったのは、たまたま見ていた雑誌の星占いからで。
その誕生日に何かプレゼントを買いたくて。
そのお金が欲しかった。
自分の力で和真を喜ばせたい、ただそれだけを思っていた。
(だから、今までみたいに街で稼いできただけなのに……)
お金が欲しければ自分の身体で稼ぐ。
それは幼い頃から亜樹にとって当たり前な事で、和真に出会うまでは生きる為に繰返された行為にすぎないから。
ただただ、その行為の代わりにプレゼント代として受け取るお金が目的だった。
大した物は買えなくても、サプライズの贈り物に和真が驚いてくれたら嬉しくて。
たまに見せてくれる「頑張ったな」って目を細めて笑う顔が見れたら、それだけで幸せなのにと思ってしまう。
そんな期待を少ししていただけだった。
吐かれた言葉の意味が分からなかった。
栗色がかった髪をサラリと揺らしながら、山根亜樹は小首を傾げた。
言われた言葉を反芻してみる。
それでも何を言われているのか分からない。
ただ聞こえてきた声は初めて聞くような低さで、その音からすごく怒っている事だけは伝わってくる。
「えっ?」
思わず恋人である城田和真の顔を見詰めれば。
亜樹へ向けられた視線はとても冷たい上に、無言で掴まれた腕もかなり痛い。
抵抗する気は少しも無いのに、引きずられるような状態になっていくのは、こちらを少しも配慮してくれない和真の動きに付いていけないからだった。
「どうして、俺、浮気なんてしてない……!」
玄関口から靴を脱ぐ時間すらろくに与えられずに引きずられ、かろうじて脱げた靴は廊下に点々と落ちている。
「ねえ、和真!」
いつもならすぐに振り返ってくれるのに。
まるで亜樹の声が聞こえていないかのように、その背中がこちらを向いてくれる様子は全くなかった。
さっきまではこそばゆい幸せを感じていた心の奥が、キュッとした痛みを訴えている。
浮気なんてしたつもりはない。
他の誰かを気にする余裕もないぐらい、いつだって亜樹の心は和真でいっぱいで。そんな気なんて少しだって湧かないのに。
それなのに、何でこんな事になったのだろう。
分からなかった。
「和真がいるのに浮気なんて、ホントにしてないよ」
何度も躓きそうになりながら「ねぇ、聞いてよ」と叫んでみても、引きずるように歩く和真の動きは止まらない。
(なんで!? 俺はただお金が欲しかっただけなのに)
それなのに、何で和真が怒っているのか分からないまま引きずられる。
和真の誕生日が明後日だと知ったのは、たまたま見ていた雑誌の星占いからで。
その誕生日に何かプレゼントを買いたくて。
そのお金が欲しかった。
自分の力で和真を喜ばせたい、ただそれだけを思っていた。
(だから、今までみたいに街で稼いできただけなのに……)
お金が欲しければ自分の身体で稼ぐ。
それは幼い頃から亜樹にとって当たり前な事で、和真に出会うまでは生きる為に繰返された行為にすぎないから。
ただただ、その行為の代わりにプレゼント代として受け取るお金が目的だった。
大した物は買えなくても、サプライズの贈り物に和真が驚いてくれたら嬉しくて。
たまに見せてくれる「頑張ったな」って目を細めて笑う顔が見れたら、それだけで幸せなのにと思ってしまう。
そんな期待を少ししていただけだった。
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