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家族になりたい 2
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翌日、私は婚姻届の用紙をもらいに行った。ついでに戸籍を取り寄せる手続きをする。私はもちろん、大和くんも最寄の役所に本籍がないから、どっちも郵送してもらうことにした。
「ねぇ、大和くん、お母さんに言わなくていいの?」
でも、もらってきた用紙に書き込みを入れる段になって、私はそんなことに気がついた。
「いいよ、お袋も事後報告だったし。今度の休みに行けばそんで良いから」
私の質問に大和くんはさらっとそう答えた。
「で、そういう樹里の方は?」
「一応、言っとく方が良いよねぇ……」
で、お返しみたいな大和くんの言葉に、私は歯切れ悪くそう答えた。実は私、ここ何年も母親には連絡取ってない。
でも、住んでるアパートは家を出てきたときのままだし、電話だって変えちゃいないから、向こうから連絡してくれればすぐ連絡はつく。つまり向こうも私に関わる気はないってことなのだ。あの方は自分の事で忙しく、不肖の娘が何をしようが知ったことじゃないんだろう。
それでも、苗字を山口から八木に変えてしまうんだから、まったく言わない訳にはいかないわよねぇ。そう思ったら、思わずため息が出てしまっていた。
「そうだよ、俺がちゃんともらいに行った方が良くねぇ?」
ため息をつく私を見て、慌てて大和くんがそう言う。
「それはないない! ウチは電話で充分だよ、ちゃんと連絡しとくから!」
私はいたたまれなくなってそう言ってその場を離れた。
で、次の日に行くはずだった社長への報告が、お互いの親への報告で休みを挟んで5日も延びた。戸籍を取り寄せるタイムラグがあったから、どうせすぐに入籍なんてできなかったんだけど。
土曜日、私はそれこそ何年かぶりで、自分の母親に電話した。
彼女はなんと奇跡的に1回でつかまった。
「元気だった?」
と聞く彼女に、
「うん、元気だよ」
と子供の頃の様に明るく笑って答えた。それから、
「んでさぁ、今度結婚することにしたから」
ってきわめて事務的に電話の用件を話すと、彼女は私の予想に反してビックリするぐらい食いついてきた。
「結婚するって、相手はどんな方?式は?私はあちらにご挨拶に行かなくて良いの?」
と矢継ぎ早に質問してくる。
「相手は会社の同僚、八木大和って言うの。実はもう6年ぐらい一緒に棲んでて。この前社長にね、いい加減けじめつけろって言われちゃってさぁ……私が大台に乗る前にってことになったの。だから、式なんて考えてないよ」
「一緒に棲んでるの?」
「うん、私のアパートで。彼、他に行くとこなかったから」
私は、私たちがずっと一緒に棲んでいることを強調して、ワザと大和くんには身寄りがいないようなフリをした。
「じゃぁ、そういう報告だけだから」
私が続けてそう言って電話を切ろうとすると、
「ねぇ、私が手伝えることはないの?」
と必死の声で聞いてきた。
「うん、今のとこはない」
たぶん、ずっと手伝ってもらうことなんてないだろうなと思いながらそう答える。
「じゃぁ、子供が出来たら言いなさい。手伝いに行くわ」
「うん……そうする……じゃぁ」
と急いで返すと、私は一方的に電話を切った。
電話を切った後、私は涙が溢れて止まらなかった。お母さんはずっと連絡したかったんだ。それが声で判ったから。
お父さんが女を作って家を出てから、お母さんは何人も男を替えて生きてきた。誰かに寄っかかっていないと生きていけない人だから。
でも、私は高校生の時、そんな彼女の男の1人に食われそうになった。たまたまちょうど彼女が帰ってきてくれたんで事なきを得て、彼女とその男は程なく別れたんだけど、なんとなく気まずくて、私は高校卒業を待ちかねるように生まれた町を後にして、今の会社に入った。
それ以来、彼女は私に自分からは連絡してこない。
子供が出来たら……か。
子供が出来たら、そういう今までのことはかっ飛ばして、お互い母として会話できたのかもしれない。でも、それもないんだよなって思ったら余計泣けてきて、私は「1人でかけたい!」と強引に追い出してしまった大和くんが帰ってきたとき、結婚を反対されたのかと思って心配するほど、バンバンに泣き腫らした目になっていた。
「ねぇ、大和くん、お母さんに言わなくていいの?」
でも、もらってきた用紙に書き込みを入れる段になって、私はそんなことに気がついた。
「いいよ、お袋も事後報告だったし。今度の休みに行けばそんで良いから」
私の質問に大和くんはさらっとそう答えた。
「で、そういう樹里の方は?」
「一応、言っとく方が良いよねぇ……」
で、お返しみたいな大和くんの言葉に、私は歯切れ悪くそう答えた。実は私、ここ何年も母親には連絡取ってない。
でも、住んでるアパートは家を出てきたときのままだし、電話だって変えちゃいないから、向こうから連絡してくれればすぐ連絡はつく。つまり向こうも私に関わる気はないってことなのだ。あの方は自分の事で忙しく、不肖の娘が何をしようが知ったことじゃないんだろう。
それでも、苗字を山口から八木に変えてしまうんだから、まったく言わない訳にはいかないわよねぇ。そう思ったら、思わずため息が出てしまっていた。
「そうだよ、俺がちゃんともらいに行った方が良くねぇ?」
ため息をつく私を見て、慌てて大和くんがそう言う。
「それはないない! ウチは電話で充分だよ、ちゃんと連絡しとくから!」
私はいたたまれなくなってそう言ってその場を離れた。
で、次の日に行くはずだった社長への報告が、お互いの親への報告で休みを挟んで5日も延びた。戸籍を取り寄せるタイムラグがあったから、どうせすぐに入籍なんてできなかったんだけど。
土曜日、私はそれこそ何年かぶりで、自分の母親に電話した。
彼女はなんと奇跡的に1回でつかまった。
「元気だった?」
と聞く彼女に、
「うん、元気だよ」
と子供の頃の様に明るく笑って答えた。それから、
「んでさぁ、今度結婚することにしたから」
ってきわめて事務的に電話の用件を話すと、彼女は私の予想に反してビックリするぐらい食いついてきた。
「結婚するって、相手はどんな方?式は?私はあちらにご挨拶に行かなくて良いの?」
と矢継ぎ早に質問してくる。
「相手は会社の同僚、八木大和って言うの。実はもう6年ぐらい一緒に棲んでて。この前社長にね、いい加減けじめつけろって言われちゃってさぁ……私が大台に乗る前にってことになったの。だから、式なんて考えてないよ」
「一緒に棲んでるの?」
「うん、私のアパートで。彼、他に行くとこなかったから」
私は、私たちがずっと一緒に棲んでいることを強調して、ワザと大和くんには身寄りがいないようなフリをした。
「じゃぁ、そういう報告だけだから」
私が続けてそう言って電話を切ろうとすると、
「ねぇ、私が手伝えることはないの?」
と必死の声で聞いてきた。
「うん、今のとこはない」
たぶん、ずっと手伝ってもらうことなんてないだろうなと思いながらそう答える。
「じゃぁ、子供が出来たら言いなさい。手伝いに行くわ」
「うん……そうする……じゃぁ」
と急いで返すと、私は一方的に電話を切った。
電話を切った後、私は涙が溢れて止まらなかった。お母さんはずっと連絡したかったんだ。それが声で判ったから。
お父さんが女を作って家を出てから、お母さんは何人も男を替えて生きてきた。誰かに寄っかかっていないと生きていけない人だから。
でも、私は高校生の時、そんな彼女の男の1人に食われそうになった。たまたまちょうど彼女が帰ってきてくれたんで事なきを得て、彼女とその男は程なく別れたんだけど、なんとなく気まずくて、私は高校卒業を待ちかねるように生まれた町を後にして、今の会社に入った。
それ以来、彼女は私に自分からは連絡してこない。
子供が出来たら……か。
子供が出来たら、そういう今までのことはかっ飛ばして、お互い母として会話できたのかもしれない。でも、それもないんだよなって思ったら余計泣けてきて、私は「1人でかけたい!」と強引に追い出してしまった大和くんが帰ってきたとき、結婚を反対されたのかと思って心配するほど、バンバンに泣き腫らした目になっていた。
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