ハムケ~オジッ ハムケ イッソ

神山 備

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それから……

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 そして、私は次の年の春、真理子さんのお兄さんのかつての婚約者、楓さんの助産院で女の子――杏樹を産んだ。
 諦めていた、でも本当に欲しくて仕方がなかった家族の誕生に大和くんはもうメロメロで、その時はまだ聞いてなかったんだけど、小久保くんが社長に言ったようにそのまま仕事を辞めさせられそうになった。
でも、それこそ高校卒業から勤めてる会社なんだもん、私にだって任されてる仕事もあるから、その引継ぎとかも必要だし、何より予定してなかった子供の誕生は、経済的なことを考えても私がしばらく仕事をしてるほうが良かったし……それで、私が説得しまくって、大和くんが渋々折れたって感じかな。で、結局、杏樹が生まれて私、復帰したしね。
 赤ちゃんの方も、ぜんぜん気付かないパパママに自分の存在を知らせるために、あんなトラブルを起こしたんじゃないかってくらい、それからは順調だった。
 私は、約束通りお母さんに電話した。お母さんとの久々の再会の時、男の人が送ってきてた。その人と再婚したって言ってた。
「私はちゃんと入籍前に報告したのに、事後報告?」
って、嫌味は言ったけど、お母さんの穏やかな笑顔に、今ちゃんと幸せだってことがすぐに分かって嬉しかった。
 もしかしたら、私の入籍の電話の時にホントは知らせたかったのかな。娘に恥ずかしがってどうするのよ、お母さん……私は、お母さんが幸せなほうが嬉しいよ。
 だって私、今とっても幸せだもん。

 杏樹が生まれた後はもう大変。私は大和くんに
「私が仕事するから、杏樹は大和くんが育てる?」
って聞いたくらいだ。大和くんはその提案に一瞬応じようかなって顔をした。

 それから、あの小久保くんが結婚した。結婚するって聞いたとき、会社の誰かだって思ったら、違ってた。相手は大学時代の同級生。
 と言うと、何か純愛っぽいでしょ? でも、この2人は……
小久保くんとその奥さん真奈美さんは、大学時代に1度籍を入れてる。なんと元鞘! しかも、一度目の入籍理由はデキ婚。渉くんっていう男の子がいるんだって言うから、もうビックリ!!
「あんときさぁ、俺お前の態度に結構ぐっと来たんだよな。それからのお前って、ほんと親バカ道まっしぐらだったし……そんなお前見てると、なんか無性に渉に会いたくなった。で、何かって言うと真奈美に電話しててさ、あいつ最初は今更ってウザがってたけど、その内……なんつーか自然にな」
 小久保くんは照れながら、そんな仕切り直しの結婚報告を大和くんにしたそうだ。


-*-*-*-*-*-


 そしてもっとビックリなのは、杏樹が生まれて2年半後、私はまた妊娠して、今度は男の子――風太を産んだのだ。ミニ大和くんの誕生に、今度は私がメロメロ。風太の妊娠を機に、私は仕事も辞めた。

「私だけが家族じゃ不満?」
そう言って始まった私たちの結婚生活。だけど、そこにこんな素敵なサプライズが待ってるなんて思いもしなかった。私たちはホントにただ、
「ずっと2人だけで良い、それでも一緒にいたいから」
ってそう思っていただけなのにね。

 赤ん坊の風太におっぱいをあげている姿を見ながら大和くんがしみじみと、
「これからは本気で考えなきゃな、明るい家族計画って奴」
って言った。私はそれを聞いて涙をこらえるのに必死にならなきゃならなかったり、ずっと住み続けたアパートが手狭になって、会社から少し離れた所に家を借りたから、大和くんはまた長い距離を通勤するようになったり。いろんな事が私たちにあった。

 そんな私たちも今年で、結婚してから15年。杏樹はもう中学生。
「ねぇママ、もういい加減年賀状に家族写真使うの止めようよぉ。ハズいじゃん」
いつの間にか杏樹はもうそんなことを言うようになっていた。
「ウチはそんな恥ずかしい家族なんかじゃないぞ。杏樹、お前が結婚するまでパパは家族写真の年賀状、止めるつもりないからな」
その意見に間髪入れず私じゃなくて大和くんがそう答えた。
「ウソ、マジ勘弁よ! ねぇ冗談は止めて」
杏樹がムンクの叫びのポーズでそう返した。
 やだ、杏樹、冗談だって思ってる訳? 悪いけど、パパ本気よ、たぶん。

 んでね……ママはパパのそんなところも大好きだから。
 ウチの娘に生まれた以上、それは諦めなさい。

                                   -THE END-
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