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いと
香織
私は、改めて香織のブログを過去ログから一通り読んでみた。私は今まで年齢が12歳下ということもあって、かわいいというイメージを彼女に持っていたのだが、実際は芯のしっかりした女性だということがブログの記事からもうかがい知れた。自分から見て一回りも違うといっても、28歳の立派な大人の女性なのだから、至極当然なことだろう。
私はますます香織に惹かれていった。しかし、こんなに簡単に心変わりしてしまった自分を自分でも受け止めきれずにいたし、なにより彼女にしてしまったことを思うと尚更掌を返してたように親しげなコメントをすることはできなかった。だから、私は努めて平静を装って、以前どおりブログにコメントを残すことしかできなかった。
だが、あれから3ヶ月位たったある日、夕刻香織から着信があった。
「また、来ちゃいました。逢えませんか。仕事だと思ったんですけど、仕事場どこだかわからないんで、岐阜羽島駅にいます」
「もう帰る時間だし、今から迎えに行くよ。ちょっと待ってて」
それこそ、携帯番号はわかっているのだから、電話でも用は足りるはずだ。彼女がわざわざ訪ねてきた……私は何か胸騒ぎを押さえることができなくて、大急ぎで彼女を迎えに行った。
「で、今日は何?」
私は期待と不安でごちゃ混ぜの気持ちを押し殺して、そっけなくそう言った。
「あの……ご迷惑だと思うんですけど……」
それに対して、彼女の口は重い。
「言ってくれなきゃ迷惑かどうかわからないよ」
「はい……一緒に行ってほしい所があるんです。明日急にお仕事とか休めますか?」
独身で家族の行事に振り回されることもないから、仕事を1日くらなら何とでもできはするが、一体どこに行きたいと言うのだろう。
「一緒に行ってほしい所って?」
こちらの観光地か何かを想像していた私は、続くエルの
「び、病院です…やっぱりダメですよね」
と言う言葉にかたまった。
病院?病院って? まさか……私は突然の香織の言葉の意味を中々理解できなかった。
「検査キットでは陽性でした」
私はそう話す香織を、香織のお腹をまじまじと見た。確かに、あのとき避妊は一切してなかったが。本当に私の子供が彼女のお腹に私のこどもが?!
一瞬、私は彼女が私を担いでいるのではないかと思ったが、なら、電話で済ませるだろう。わざわざ来ているというのは、そういうことなのだ。私を受け継いだ命が今まさに育っている! それはものすごい感動の波となって私に押し寄せた。しかし、彼女にしたことを考えると、彼女がそれを望んでいたのかどうかわからない。怒りをぶつけにきた可能性も大いにある。
「エルちゃん?」
「はい?」
「まったく、君って人は! 無茶なことばかりするんだね。どうしてそんな大事な時に長時間電車に乗ろうなんて考えるの! どうして僕をそっちに呼ぼうと思わなかったの? そうか、産む気はないんだな」
「ネットで安定期を調べてそれまで待ってたんです……えっ?! 産む気って……」
彼女は最初怒られていると思ったようだが、私の『産む気がないのか』と言う言葉に、驚いた様子を見せた。
「僕に中絶の同意をしてもらいに来たんじゃないの?」
「いいえ、いいえ……私、やっぱり産んじゃいけないですか。良いです、私一人で……」
「じゃぁ、産んでくれるの?」
一人ででも産むと言いかけた彼女の言葉尻をひったくって、私は慌ててそう言った。
「産んでくれるって……」
「君にしたことを許してもらえるとは思わない。でも、お願いだ、僕に是非責任を取らせてくれないか」
そして、私がプロポーズめいた台詞を口にした次の瞬間、香織ははらはらと涙を流してその場に座り込んでしまった。私は慌てて彼女に手を貸して立たせた。
「冷やしちゃいけないよ、立って。さ、『うち』に帰るよ」
彼女はビックリしたように私を見た後、こくりと頷いた。
「電話で言ってくれれば、僕が行くのに。僕は聞いても行かないと思った?」
「好きでもない女から子供ができたなんて言ってきたら普通迷惑でしょ?私は一人ででも産むつもりだったんですけど、あの時子どものことも言ってらしたし、もしかしたら喜んでもらえるかもしれないって…賭けでした。」
……ああ、そうだろうな。香織はかりんのことをまだ好きだと思っている。
「もう彼女のことはなんとも思ってないよ。実はあれから……君の事が忘れられなくて……こんな優柔不断な男は嫌いだよね」
そこで、私は正直に自分の心変わりを話した。
しかしその後、その一言でさらに泣き出してしまった彼女に、私はただただうろたえるしかなかった。
私はますます香織に惹かれていった。しかし、こんなに簡単に心変わりしてしまった自分を自分でも受け止めきれずにいたし、なにより彼女にしてしまったことを思うと尚更掌を返してたように親しげなコメントをすることはできなかった。だから、私は努めて平静を装って、以前どおりブログにコメントを残すことしかできなかった。
だが、あれから3ヶ月位たったある日、夕刻香織から着信があった。
「また、来ちゃいました。逢えませんか。仕事だと思ったんですけど、仕事場どこだかわからないんで、岐阜羽島駅にいます」
「もう帰る時間だし、今から迎えに行くよ。ちょっと待ってて」
それこそ、携帯番号はわかっているのだから、電話でも用は足りるはずだ。彼女がわざわざ訪ねてきた……私は何か胸騒ぎを押さえることができなくて、大急ぎで彼女を迎えに行った。
「で、今日は何?」
私は期待と不安でごちゃ混ぜの気持ちを押し殺して、そっけなくそう言った。
「あの……ご迷惑だと思うんですけど……」
それに対して、彼女の口は重い。
「言ってくれなきゃ迷惑かどうかわからないよ」
「はい……一緒に行ってほしい所があるんです。明日急にお仕事とか休めますか?」
独身で家族の行事に振り回されることもないから、仕事を1日くらなら何とでもできはするが、一体どこに行きたいと言うのだろう。
「一緒に行ってほしい所って?」
こちらの観光地か何かを想像していた私は、続くエルの
「び、病院です…やっぱりダメですよね」
と言う言葉にかたまった。
病院?病院って? まさか……私は突然の香織の言葉の意味を中々理解できなかった。
「検査キットでは陽性でした」
私はそう話す香織を、香織のお腹をまじまじと見た。確かに、あのとき避妊は一切してなかったが。本当に私の子供が彼女のお腹に私のこどもが?!
一瞬、私は彼女が私を担いでいるのではないかと思ったが、なら、電話で済ませるだろう。わざわざ来ているというのは、そういうことなのだ。私を受け継いだ命が今まさに育っている! それはものすごい感動の波となって私に押し寄せた。しかし、彼女にしたことを考えると、彼女がそれを望んでいたのかどうかわからない。怒りをぶつけにきた可能性も大いにある。
「エルちゃん?」
「はい?」
「まったく、君って人は! 無茶なことばかりするんだね。どうしてそんな大事な時に長時間電車に乗ろうなんて考えるの! どうして僕をそっちに呼ぼうと思わなかったの? そうか、産む気はないんだな」
「ネットで安定期を調べてそれまで待ってたんです……えっ?! 産む気って……」
彼女は最初怒られていると思ったようだが、私の『産む気がないのか』と言う言葉に、驚いた様子を見せた。
「僕に中絶の同意をしてもらいに来たんじゃないの?」
「いいえ、いいえ……私、やっぱり産んじゃいけないですか。良いです、私一人で……」
「じゃぁ、産んでくれるの?」
一人ででも産むと言いかけた彼女の言葉尻をひったくって、私は慌ててそう言った。
「産んでくれるって……」
「君にしたことを許してもらえるとは思わない。でも、お願いだ、僕に是非責任を取らせてくれないか」
そして、私がプロポーズめいた台詞を口にした次の瞬間、香織ははらはらと涙を流してその場に座り込んでしまった。私は慌てて彼女に手を貸して立たせた。
「冷やしちゃいけないよ、立って。さ、『うち』に帰るよ」
彼女はビックリしたように私を見た後、こくりと頷いた。
「電話で言ってくれれば、僕が行くのに。僕は聞いても行かないと思った?」
「好きでもない女から子供ができたなんて言ってきたら普通迷惑でしょ?私は一人ででも産むつもりだったんですけど、あの時子どものことも言ってらしたし、もしかしたら喜んでもらえるかもしれないって…賭けでした。」
……ああ、そうだろうな。香織はかりんのことをまだ好きだと思っている。
「もう彼女のことはなんとも思ってないよ。実はあれから……君の事が忘れられなくて……こんな優柔不断な男は嫌いだよね」
そこで、私は正直に自分の心変わりを話した。
しかしその後、その一言でさらに泣き出してしまった彼女に、私はただただうろたえるしかなかった。
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