似ている

神山 備

文字の大きさ
7 / 31

我慢

しおりを挟む
 そして、懇親会がお開きになった今、光一は途方に暮れていた。
「ほら、起きろ生方。おまえの家はどこだ」
と、揺り起こしてみるも、志乃は相変わらず、眠り姫のままだ。

 とりあえず、志乃を強引に部下の高橋郁雄から
「高橋は生方の家の場所を知らんだろ」
ともぎ取ったものの、光一とて最寄り駅を知っているだけで、正確な場所なぞ知るはずもない。だが、高橋に任せたら最後、この田舎育ちの天然娘は間違いなく取って食われるだろう。それは光一にとってどうしても許しがたかった。 

 こいつはかつての想い人ではない。それどころか彼女の縁者でもない赤の他人だ。なのにどうしてこんな気持ちになるのだろう。だからと言ってこのままここにずっといる訳にもいかず、とりあえず抱き上げてタクシーに乗せ、志乃のアパートの最寄り駅を目指す。
「すいません、交差点をどっちですか?」
程なく駅周辺にたどり着き、運転手にそう聞かれて、
「生方、どこだ」
と揺すぶっても、
「う……ん?」
というだけでいっこうに起きない。光一は、
「申し訳ない、XXに目的地を変更してくれないか」
と、自分のマンションのある場所を告げた。会社の面々とは違い、見ず知らずのタクシーの運転手は素直に方向を変え、光一のマンションに向かって走り出す。

 マンションに着いた光一は自分のベッドに志乃を寝かせた。下ろす時、自分の胸が彼女の胸と密着する。それで、光一は彼女の胸が見た目ほど小さくないことを知る。(締め付けられているのは辛かろう)しかし、だからと言って脱がせてしまう訳にはいかない。光一は、背中に手を入れて少し抱き起こすと、後ろにある金具だけを外した。志乃から、
「ふぅ」
という吐息が漏れる。その表情を見て、光一はその唇に食らいつきたくなる衝動を覚えた。
(いかんいかん、これじゃぁ何のためにこの娘を高橋からもぎ取ったかわからん)光一は部屋着を取ると、慌ててバスルームに飛び込みシャワーで溜まった熱を収める。今日はリビングのソファーに横になろう。どうせ気ままな一人暮らし、テレビを見ていてそのままそこで寝る事も多い。
 
 シャワーを浴びた後、ラフな服に着替えた光一が再度寝室を覗くと、ちょうど志乃が起きたところだった。
「部長、私……」
戸惑う彼女に、
「私の部屋だ。おまえがてこでも起きんから仕方なくな」
光一がそう言って軽く笑うと、
「す、すいません。ご迷惑をおかけしました。私帰ります……あっ」
と言って慌ててベッドから落ちる。その拍子に彼女の片方の『実』が外してある下着から零れ出た。
「もう終電はとっくに終わっている。今日はこのベッドを使え」
「いえ、私は大丈夫です。ちゃんと帰れます」
すると、志乃は真っ赤な顔をしてもじもじしながらそう言った。
(そうか、さっきブラのホックを外したからな)楽になればと思ってしたことだが、却って誤解させてしまったようだ。そう思って光一が、
「何を勘違いしてるんだ。そんなつもりで連れてきたんじゃない。私はリビングのソファーで寝るつもりだ」
と言うと、志乃から、
「ソファーだなんて。風邪でも引かれたら大変です。部長がこちらで寝てください。私がソファーで寝ます」
という返事が返ってくる。
「普段からテレビを見ながらあっちで寝てしまうことも多いんだ。それに、こんな季節に風邪なんか引かんさ」
年寄り扱いするな、と言いながらリビングに向かいかける光一に、
「部長、ダメですよ。ここは部長の家なんですから」
志乃は尚も引き留めようとして、そう言いながら光一の二の腕を掴んだ。まさかそこまでされると思っていなかった光一は不覚にも引きずられ、志乃を巻き込んでベッドに倒れ込んだ。咄嗟に光一は志乃を庇ったため、ちょうど志乃が光一にに覆い被さる格好で。
「大丈夫か?」
「きゃぁ! 大丈夫、大丈夫です」
光一は飛び退こうとする志乃の腰を掴んだ。薄手のブラウスは金具を外しているブラからこぼれた片方の、『実』の存在をしっかりと光一に伝えている。光一はちょっとからかうつもりだったのだが、モジモジする志乃の振動や、件の実の先がきゅんと固くなっていくのを感じ取って、彼自身の熱を集めてしまった。光一は慌てて、
「煽るな、志乃」
と言ったが、
「煽ってなんかいません!」
と、志乃は頬を膨らませてそう返し、逃れようとさらに昂ぶりに刺激を与える。その仕草一つ一つが煽っているとは気づいていないのだ。光一は、
「それを煽ってると言わないでどうする」
と言うと、体を反転させて志乃に覆い被さると、彼女に口づける。そして光一は驚いて半開きになっている志乃の口内に易々と舌を滑り込ませた。
「あっ……ふ、ふん……」
さすがにここまですれば拒絶されるだろうと思っていたのだが、志乃はビックリしているものの光一のそんな行為を受け入れ、ぎこちないながら彼の舌に自分の舌を絡ませ始め、次第に陶酔した表情に変わっていく。さっきのシャワーで己の欲をすっかり吐き出しておくべきだった。だが、もう遅い。
(ああ、もうこいつを誰にも渡したくない)
志乃のその表情を見たその時、光一は自身の理性の糸が切れる音をはっきりと聞いたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...