似ている

神山 備

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暴かれた潜伏先

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 志伸を手放して時間を持て余すようになった美奈子はそれまでよりもずっと外に出る機会を増やした。
 5年という月日が中西を殺めた者への恐怖を薄めたのはもちろんのこと、守るべき者がいなくなった部屋に長い時間いるのは辛かったのだ。ならば河岸を変えても良さそうなものだが、志伸の思い出が全くない場所に行くだけの踏ん切りもまた付かなかった。

 そんな日々を送っていた年末のある日、美奈子はテレビのニュースに映し出された。と言っても、毎年恒例になっている日雇い労働者の越年の話題で、フレームの片隅に数秒映っただけだった。
 しかし、それを見逃さなかった男がいた。
(見つけた、見つけたぞ!)
 その男の名は小平保-小平は中西が大金を搾取した組の若頭で、中西の企みを見抜いた切れ者。そして、中西殺害の実行犯の一人でもあった。

 実は、中西が美奈子に鍵を渡したコインロッカーには、彼が掻き集めた金の約三分の一程度しか入っていなかった。と言うよりも、中西は美奈子が女の細腕で持てると判断した金額しか入れていなかったというのが正しい。正直、美奈子に鍵を渡すのは中西にとっても一つの賭けでもあった。
『ねぇ、間違っても僕から逃げられるなんて思わないでよ。地獄のそこまで追っかけるからね』
と薄く笑いながら再三再四美奈子に揺さぶりをかけてはいたが、その内心は穏やかではなかった。(またあの男のところに行ってしまわないだろうか。せっかく僕があの酷い男から救い出したのに)結果的にその中西の『洗脳』は効を奏して美奈子は警察に駆け込むことはなかった。
 だが、結局中西は残りの金をすべて持ち出そうとして手間取り、小平たちの毒牙にかかることになったのだ。
 

 一方、小平は中西を殺したとき、彼の所持していた金額が思っていたより少ないことに気付いた。
 そして、勘の良いこの男は、共犯者を先に出させ、本棚に並んでいる相当な数のビデオを己の車に積み込んだ。
 彼の予想通り、タイトルはなく数字のみ付されたそのビデオは、中西の美奈子への『調教』を記録した、所謂『ハメ撮り』だった。(中西の野郎、こいつに金をつぎ込んでやがったのか)
 だが、小平はそのビデオの存在を他の誰にも知らせなかった。最初は怯えるばかりのその女が、次第に屈服させられ淫らに『成長』していく様は、見ていて非常にソソられたからだ。(こんな上玉をみすみすポシャらす手はねぇな)組でこの映像を見せたら、あっと言う間に探し出せるだろうが、速攻殺られるだけだ。まぁ一回くらいはヤレるかもしれないが。それではあまりにももったいない。
 
 だが、探してもその女は見つからなかった。手に入れられなければ余計欲しくなるのが人情。だから、5年の月日を経ていたにも関わらず、そのビデオを繰り返し見ていた小平はたった一瞬のその映像を見逃さなかったのだ。
 小平はすぐさまその放送がされていた場所に行き、ついに美奈子の居所を突き止めてしまう。

 
 部屋に乗り込んだ小平に、美奈子は中西など知らないと白を切った。そこで小平は徐にあのビデオを取り出す。
「これが何だか解るよな。増やしてバラ撒いても良いんだぜ」
と言うと、美奈子の顔色が変わった。それでも尚強気だった彼女。しかし、小平が部屋の隅のある部分を見たとき、明らかにその目が泳いだ。彼はすかさずそこに目をやり、速やかに彼女の狼狽えた意味を理解する。そこにあったのは、志伸の写真だった。
「へぇ、ガキか。あのオタク野郎に似てるじゃねぇか。
そうか、ガキがどうなっても良いってんだな」
へらっと笑った小平に、
「お願い、志伸、志伸には手を出さないで。
お金ならここに。全額ではないけど、ほとんど手つかずで……」
美奈子は慌てて引き出しの中から通帳とキャッシュカードの束を取り出し、そう言いながら小平に押しつけるように渡した。小平はそれを一瞥すると、
「暗証番号は」
と聞く。
「全部XXXXです。だから、お願い、志伸にだけは!」
と懇願する美奈子に、
「分かった、これは元々はこっちのもんだ。ありがたくいただいてくぜ」
と、片手で少しそれらを掲げたあと、
「だがな、足んねぇんだよ」
と、空いた手で美奈子の顎を掴んでそう言った。
「ひっ!」
美奈子の顔が恐怖で引き攣る。
「返すときには全額耳を揃えて、これは常識だろ。
それとな、借りた金には利子ってもんがつくんだよ」
「でも、私にはもう返すモノなんて何も……」
震えながら首を振る美奈子に小平は、
「あるじゃねぇかよ、ここに。てめぇのその身体がよ。
あのオタク男にさんざ仕込まれたんだろうが。そのテクで俺を楽しませてくれりゃ良いんだ。セコハンのお前で我慢してやるってんだよ。な、破格の条件だろうが」
美奈子が渡した物を床に置くと、そう言って彼女を床に押し倒した。
 
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