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善意の当事者
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ほのかとの蜜月を過ごし、彼女が未来に言っていたより一日早くヨーロッパに旅立った後、未来を迎えに言った秀一郎は、その惨状に我が目を疑った。男女の情事の残滓が鼻に突いて、思わず手で顔を覆う。未来はと見ると、ベッドに毛布をかぶって座っている。その眼は何も映さずうつろだ。
た。
ほのかの話では、未来と話の合いそうな大学生と卒業旅行のような旅をしてもらうということだったので心配はしていなかったのだが、これはどうしたことか。秀一郎は『話の合う大学生』という一言に、無意識にそれが女性だと思いこんでいたのだが、実際は男性で、しかもその男性が途中から豹変した、そんなころなのかもしれない。秀一郎が入ってきても全く反応を示さない未来に、秀一郎が、
「未来さん」
と肩に触れて呼びかけると、
「い、イヤぁ」
未来の顔は頭を振って怯えた。
「未来さん、秀一郎だよ」
「秀……一……郎さん?」
そして、やっと秀一郎を認識した未来は、巻き付けていた毛布を更に自分の身体に密着させ、
「イヤぁ、触らないで!」
とただ一つの拠り所とばかりに着ている毛布にしがみついて秀一郎の手をふりほどこうとする。
「僕は何もしないから」
それに対して秀一郎はそう返すが、未来の震えは一向に治まらない。とは言え、このままでは塩分を含んだ分泌物で肌や髪は荒れてしまうだろう。それに毛布一枚ではさすがに南国とはいえ、空調の完備しているホテルでは風邪を引いてしまう。
秀一郎は逡巡した末、未来を担ぎ上げて強引に風呂場へ連れて行った。当然未来は抵抗するが、
「ごめんね、とにかくまずきれいにしよう」
と言いながら風呂場の床に下ろすと、シャワーの温度を調節し、未来に渡す。秀一郎は、
「僕は外にいるから、終わったら呼んで」
と言ってバスルームから出た。本来なら助けを呼ぶところだろうが、この状況をどう説明すればいいのか解らないし、知らなかったとは言え明らかにこれは犯罪で、ほのかが関与しているのは間違いない。
やがて長い水音が止まると、バスルームからか細い声が聞こえた。秀一郎は持って入ってきたバスタオルで未来を包むと、そのままベッドの上まで連れて行ってそっと彼女を下ろす。そして、彼女のスーツケースもベッドの上に乗せ、
「着替えて。明日の朝まではこの部屋でも大丈夫だろうけどね、君もここには一刻も居たくないだろ。とにかく僕の部屋の方に行こう」
僕の部屋もあまりいい気はしないだろうがと言うと、未来は明らかに怯えている様子で秀一郎と荷物を交互に見た。それで秀一郎が、
「もうほのかはいないよ。今朝早く、ヨーロッパに旅立った」
と続けると、未来は黙ったままだがようやく首を縦に振った。まるで獣の上下関係のようだと秀一郎は思った。
そこで秀一郎は、一旦部屋を出てそこで彼女の着替えを待ち、よろよろと覚束ない足取りの未来を支えながら秀一郎が泊まっている方の部屋に向かった。
た。
ほのかの話では、未来と話の合いそうな大学生と卒業旅行のような旅をしてもらうということだったので心配はしていなかったのだが、これはどうしたことか。秀一郎は『話の合う大学生』という一言に、無意識にそれが女性だと思いこんでいたのだが、実際は男性で、しかもその男性が途中から豹変した、そんなころなのかもしれない。秀一郎が入ってきても全く反応を示さない未来に、秀一郎が、
「未来さん」
と肩に触れて呼びかけると、
「い、イヤぁ」
未来の顔は頭を振って怯えた。
「未来さん、秀一郎だよ」
「秀……一……郎さん?」
そして、やっと秀一郎を認識した未来は、巻き付けていた毛布を更に自分の身体に密着させ、
「イヤぁ、触らないで!」
とただ一つの拠り所とばかりに着ている毛布にしがみついて秀一郎の手をふりほどこうとする。
「僕は何もしないから」
それに対して秀一郎はそう返すが、未来の震えは一向に治まらない。とは言え、このままでは塩分を含んだ分泌物で肌や髪は荒れてしまうだろう。それに毛布一枚ではさすがに南国とはいえ、空調の完備しているホテルでは風邪を引いてしまう。
秀一郎は逡巡した末、未来を担ぎ上げて強引に風呂場へ連れて行った。当然未来は抵抗するが、
「ごめんね、とにかくまずきれいにしよう」
と言いながら風呂場の床に下ろすと、シャワーの温度を調節し、未来に渡す。秀一郎は、
「僕は外にいるから、終わったら呼んで」
と言ってバスルームから出た。本来なら助けを呼ぶところだろうが、この状況をどう説明すればいいのか解らないし、知らなかったとは言え明らかにこれは犯罪で、ほのかが関与しているのは間違いない。
やがて長い水音が止まると、バスルームからか細い声が聞こえた。秀一郎は持って入ってきたバスタオルで未来を包むと、そのままベッドの上まで連れて行ってそっと彼女を下ろす。そして、彼女のスーツケースもベッドの上に乗せ、
「着替えて。明日の朝まではこの部屋でも大丈夫だろうけどね、君もここには一刻も居たくないだろ。とにかく僕の部屋の方に行こう」
僕の部屋もあまりいい気はしないだろうがと言うと、未来は明らかに怯えている様子で秀一郎と荷物を交互に見た。それで秀一郎が、
「もうほのかはいないよ。今朝早く、ヨーロッパに旅立った」
と続けると、未来は黙ったままだがようやく首を縦に振った。まるで獣の上下関係のようだと秀一郎は思った。
そこで秀一郎は、一旦部屋を出てそこで彼女の着替えを待ち、よろよろと覚束ない足取りの未来を支えながら秀一郎が泊まっている方の部屋に向かった。
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