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ほのかの結婚
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克也はそれから毎日『診察』に訪れ、二週間後彼女の妊娠が確認された。そして、妊娠した未来は早々に飯塚家に帰された。実際問題、過度のストレスによって悪阻が酷いというのもあるのだが、その実はほのかから守るために秀一郎がしたことだ。
妊娠を知ってほのかが荒れたのだ。ほのかはもちろん未来の子供が結城の血を引いてないことをよく知ってるが、それでも彼女は荒れた。男である秀一郎は未来が克也の子であっても妊娠することでほのかが苛立つとは思っていなかったので、そのことに対して驚きを隠せない。
「私も秀の子供が欲しいわ。大体、秀の子が結城の跡取りであるべきでしょ」
と憤慨するほのかに、
「そんなことを言ったって、さすがに未来さんにほのの子を育ててくれとは言えない」
と秀一郎が返すと、ほのかは、秀一郎の頬を打って、
「やっぱり、秀は私よりあのお飾りの方が大事なのよ。あんなのさっさと追い出してしまえばいいのに」
生まれてくる子供は血のつながりにかかわらず、届け出れば法律上、なんら問題なく結城家の嫡出子になる。秀一郎はそのつもりで克也を『種馬』にしたのだから。
秀一郎は自分の血を残す気など端からなかった。年相応に薄くなった髪と度のきつい眼鏡で印象は替えているが、自分は間違いなくあの男-諏訪健史の子だ。そして、ほのかは父の子。それが意味するものは……母が同時期に二人の男とそういう関係に陥っていたということ。あの女は父の妻でありながら、諏訪とも交わっていたのだ。しかも、あの女は父の死はそれを悔やんでだと思われるのに、その喪が明けた途端、さっさと諏訪の許に走った。そんな穢れきった血をどうして後世に遺せよう。 ただ、結城としての後継者は必要である。これはその苦肉の策なのだ。それくらいほのかも解っているだろうに。しかし、ほのかは、
「秀はそんな偽物の子供にだって、きっと優しくするわ」
そんなの我慢できないと、地団太を踏んだ。
「そりゃそうだろ。中身はどうあれ、表向きは自分の子供なんだから」
剥れるほのかに、秀一郎は当然とばかりにそう答えた。自分の血が一滴も入っていないと思えば、むしろすがすがしい気持ちで愛せるとまで思う。何より、生まれてきた子供には何の罪もないではないか。だが、そういってもほのかの苛立ちは収まることはなく、私も子供が欲しいと言い続ける。
このままではまた未来が、折角授かった結城の跡取りが危険にさらされるかもしれない。そう思った秀一郎は安定期が過ぎるまで未来を飯塚家に帰すことにし、その間にほのかを急遽嫁に出してしまうことにした。
と言えば、一見秀一郎が妹に嫌気がさして放り出したかのように見える。案の定、ほのかかからは、
「秀以外の男と結婚するなんて、ごめんよ!」
と憤慨されるが、それに対して秀一郎は薄く笑いながら、
「今のままじゃ、ほのに子供は産めといえない。だって、独身のほのが子供を産めば必ず父親が誰か詮索される。他に男っ気がないんだ。すぐにバレてしまう。
でも、結婚すれば子供ができるのは当たり前のことになるじゃないか」
とほのかに返した。
「秀?」
首を傾げるほのかに、秀一郎は、
「『木は森の中に隠せ』だよ。
僕の高校時代の同級生に、鳴澤憲幸っていうのがいるんだ。旧財閥の流れを汲む御曹司でね、月の半分以上世界中を飛び回っている。
結婚したからって、仕事が変わるわけじゃないから、ほのは月のほとんどを一人で過ごすことになる」
と続ける。
「それって……」
さらに秀一郎は、
「実はさ、鳴澤に軽く打診してみたんだ。ほののことも学園祭とかで知っててさ、大乗り気だし、
『留守にして一人にすることが多いから、嫌われないかなぁ』
なんて心配までするから、
『一人の時は実家に来させてもいいか』
と言ってやったら、
『それは安心だ。ぜひそうしてもらいたい』
って言ってたよ。
どう? この話乗らない?」
と言って怒りで距離をとっていたほのかの身体を引き寄せた。
ほのかは渋い顔をしたまましばらく黙っていたが、
「乗るわ、その話……」
と承諾しだ。
鳴澤憲幸とほのかが結婚したのは、そのたった2か月後のことだった。
妊娠を知ってほのかが荒れたのだ。ほのかはもちろん未来の子供が結城の血を引いてないことをよく知ってるが、それでも彼女は荒れた。男である秀一郎は未来が克也の子であっても妊娠することでほのかが苛立つとは思っていなかったので、そのことに対して驚きを隠せない。
「私も秀の子供が欲しいわ。大体、秀の子が結城の跡取りであるべきでしょ」
と憤慨するほのかに、
「そんなことを言ったって、さすがに未来さんにほのの子を育ててくれとは言えない」
と秀一郎が返すと、ほのかは、秀一郎の頬を打って、
「やっぱり、秀は私よりあのお飾りの方が大事なのよ。あんなのさっさと追い出してしまえばいいのに」
生まれてくる子供は血のつながりにかかわらず、届け出れば法律上、なんら問題なく結城家の嫡出子になる。秀一郎はそのつもりで克也を『種馬』にしたのだから。
秀一郎は自分の血を残す気など端からなかった。年相応に薄くなった髪と度のきつい眼鏡で印象は替えているが、自分は間違いなくあの男-諏訪健史の子だ。そして、ほのかは父の子。それが意味するものは……母が同時期に二人の男とそういう関係に陥っていたということ。あの女は父の妻でありながら、諏訪とも交わっていたのだ。しかも、あの女は父の死はそれを悔やんでだと思われるのに、その喪が明けた途端、さっさと諏訪の許に走った。そんな穢れきった血をどうして後世に遺せよう。 ただ、結城としての後継者は必要である。これはその苦肉の策なのだ。それくらいほのかも解っているだろうに。しかし、ほのかは、
「秀はそんな偽物の子供にだって、きっと優しくするわ」
そんなの我慢できないと、地団太を踏んだ。
「そりゃそうだろ。中身はどうあれ、表向きは自分の子供なんだから」
剥れるほのかに、秀一郎は当然とばかりにそう答えた。自分の血が一滴も入っていないと思えば、むしろすがすがしい気持ちで愛せるとまで思う。何より、生まれてきた子供には何の罪もないではないか。だが、そういってもほのかの苛立ちは収まることはなく、私も子供が欲しいと言い続ける。
このままではまた未来が、折角授かった結城の跡取りが危険にさらされるかもしれない。そう思った秀一郎は安定期が過ぎるまで未来を飯塚家に帰すことにし、その間にほのかを急遽嫁に出してしまうことにした。
と言えば、一見秀一郎が妹に嫌気がさして放り出したかのように見える。案の定、ほのかかからは、
「秀以外の男と結婚するなんて、ごめんよ!」
と憤慨されるが、それに対して秀一郎は薄く笑いながら、
「今のままじゃ、ほのに子供は産めといえない。だって、独身のほのが子供を産めば必ず父親が誰か詮索される。他に男っ気がないんだ。すぐにバレてしまう。
でも、結婚すれば子供ができるのは当たり前のことになるじゃないか」
とほのかに返した。
「秀?」
首を傾げるほのかに、秀一郎は、
「『木は森の中に隠せ』だよ。
僕の高校時代の同級生に、鳴澤憲幸っていうのがいるんだ。旧財閥の流れを汲む御曹司でね、月の半分以上世界中を飛び回っている。
結婚したからって、仕事が変わるわけじゃないから、ほのは月のほとんどを一人で過ごすことになる」
と続ける。
「それって……」
さらに秀一郎は、
「実はさ、鳴澤に軽く打診してみたんだ。ほののことも学園祭とかで知っててさ、大乗り気だし、
『留守にして一人にすることが多いから、嫌われないかなぁ』
なんて心配までするから、
『一人の時は実家に来させてもいいか』
と言ってやったら、
『それは安心だ。ぜひそうしてもらいたい』
って言ってたよ。
どう? この話乗らない?」
と言って怒りで距離をとっていたほのかの身体を引き寄せた。
ほのかは渋い顔をしたまましばらく黙っていたが、
「乗るわ、その話……」
と承諾しだ。
鳴澤憲幸とほのかが結婚したのは、そのたった2か月後のことだった。
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